19話:時として煽りはやる気を生み出すがそれはそれとして煽るやつはしばき倒されてほしい。
「で、詳しく教えてよ」
「ん、あぁ、ジジイの話?」
「うん」
朝の出勤時間にのんびりと話す時間はない。
なので必然的に話すのは昼休みの時間であり、ここは某有名なハンバーガーチェーン店である。
平日昼。
ショッピングモールの中にあるチェーン店で混み合うなんてことはないため、すんなりと席に座り、二人で食べ始めた。
百瀬はハンバーガーチェーン店だというのに、ハンバーガーではなくポテトのLサイズを2つ買っている。
食い過ぎでは?
「ジジイ……トーガ、っていう魔法使いで、……なんか世界観的には『魔術』を使う『魔術師』が正確な呼び名なんだけど、まぁ違いはわからない」
そこから話していくのは、半ば愚痴混じりの説明。
トーガ。
高齢の少し気難しそうなじじい。
ツルピカ頭にヒゲをこさえたまさに世に言うジジイというやつだ。
そいつから出されたのは、『一撃を加えること』
「ジジイが忙しいとのことで1日の挑戦回数には制限があって、1日三回だけ俺はあのジジイに戦いを挑むことができる」
場所はジジイが所有しているという謎の闘技場的な場所。
瞬間移動の魔術を使用されているから場所は分からない。
基本的に冒険者ギルドの足を運ぶとトーガがいるので、困ってはいないが。
トーガと戦う場所……個人的に『ボコリ場』と呼んでいるが、修練場の道場の4倍くらい大きな場所で、障害物もない広い土地だ。
そこで行われる、本気の戦闘。
「俺は一撃与えるだけ。
あいつは俺を殺すまで。
デスペナはなぜかない」
イベント戦なのかそういう仕様になっている。
まぁそこまでは普通に俺も納得できる内容だったが、戦闘の内容が地獄だった。
「あいつは魔術使いの中でもかなり高レベルだったんだよ」
今まで戦闘したことのある魔術師がゴブリンメイジだったので、最初は人が魔術を使うとそういうもんなのかと納得していたが、違った。
魔術に関しては現在でもかなり検証がなっていない分類である。
スキルと言う類型には存在するが、その体型は通常のスキルとは全く違い、レベルというものが存在している。
しかもレベルを上げるのは経験値などと違い、習熟を求められる。
それだけ時間がかかるというわけで、
「でも、その中でも共通の常識的な内容は浮き彫りにはなっていた」
魔術の常識。
強い魔術を使うにはMPが大量に必要、だのMPがないと魔術が発動できない、だの。
そんなありきたりな内容はわかっていたので、流し見していたのだが、トーガは一部その常識を打ち破る魔法を使っていた。
詠唱速度と、複数使用、魔術そのもの。
「トーガは基本的に俺に対しては一つの魔術しか使わない。
けど、その詠唱速度は似たような魔法より4分の1の速さで詠唱を終わらせていた。
それに、できないと確定された複数の魔術使用をしていた。
あと、魔術が曲がったし速さもおかしい」
使っている魔術は多分『ファイアーボール』……だと思う。
いや、曲がるし速さ変わるとかできないから、推測になるんだけど。
ファイアーボール、それは一番この世界で使われている魔術。
検証もこれに関しては結構終わっているようで、スキルでは『ファイアーボールLv~』と表記される。
ゴブリンメイジも使用していたが、炎の球が直線に飛ぶ魔法だ。
1レベルで野球ボールくらい。
最大レベルで直径1メートルの火の玉になる。
レベルによって変化するのは大きさと威力。
使用MPが変わることないので育て得な魔法で安価に使えると人気である。
「調べても速度も軌道も変わるなんて情報はない。
生得でもそういうスキルはまだ発見されてない」
まだ魔術系のスキルでも『魔力増』とか『魔力操作効率』などしか見つかっていない。
報告されていないにしても、それを持っているのは珍しい。
だからこそ、俺は虐められた。
「あいつの魔法は避けても曲がるからしっかり避けないといけない。
あえて遅い球を放ったりかなり速いけど威力のない球でフェイントしたり、その後ろに起動の少し違う球を追わせて来たり……」
こちとら先見の瞳、っていう強力スキル使ってる。
このスキルにもここ5日で弱点が見えてきた。
視覚しかわからないので、視野外の攻撃に弱い。
本物とあんまり見分け付きづらいので見間違える。
物量で押されると途端にオワタ式……ミスったら即死になる。
「まぁ、今日でそれにも決着をつけるよ」
「まって僕の知ってるドラドラと違いすぎるんだけどそれ何してるの本当に」
百瀬……。
「そんなことはどうでもいい」
俺は基本的にゲームにムキにならないタイプだし、このゲームもハマっているからと行ってこんなに現実世界でまで必死に考えることも基本ない。
でも、今はこうして現実世界までゲームのことを引っ張り出して考えている。
もちろん、それにはしっかりと理由はある。
「あのジジイをしばきたいんだ」
あのクソジジイめちゃくちゃ煽ってくるのである。
大事なことだからもう一回言う。
あのジジイすごいこちらがやる気出す感じに煽ってくるのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます