18話:不謹慎だけど言わせてほしい
クソゲーとか、ゴミゲーとか、なるべく言わないようにしている。
例えばそれをネタとして話すのならばまだ分かる。
あれだ、所謂友達同士で話す「俺寝てないよー」的なやつだ。
話を戻すが、自分のやっているゲームを貶したところで何か起きるわけでもないし、貶すだけというのは本当に不毛なことだ。
それを踏まえた上で、俺のこれからの発言はただの僻みとして捉えてほしい。
「クソゲーすぎるだろ……」
場所は会社。
出社してから適当に残っている仕事をこなしつつ、5日間連続で攻略している『トーガ攻略戦』を思い返していた。
あぁ、5日間だ。
今日は金曜日。
トーガと出会ったのは日曜日。
日曜日から俺は毎日仕事終わりにあいつにボコされに行っている。
ドラドラではクエストと言うものが存在する。
冒険者ギルドでクエストを受けても、個人からの頼みごとでもゲームがクエスト足り得ると判断したときは、それが発生する。
まぁ、もちろんだが俺がトーガに会いに行った時にクエストは出現した。
【トーガの試練】
魔道士トーガに見いだされた男よ。
掴むのだ。
己の超える術を。
クエスト内容:トーガから出された試練を達成すること
クエスト報酬:スキル継承
スキル継承、というのはスキルを他人に付与することができることだ。
条件としては習熟の概念があるスキル(魔法スキルなどはレベルが存在する)を一定以上極める。
または自身のスキルを失う。
この2つのどちらかの方法で、スキルを他人に与える。
これがスキル継承である。
だから魔法スキルを一生懸命レベル上げしてスキル継承で大金を稼ぐという方法は現在でも主流である。
一週間フルで使って一個作れるかどうからしいので結構な大金で取引されているとのことだ。
これをクエストの報酬としてもらえるのだ。
食いつかないことはない。
「金曜なのにため息ついてんの?」
そこで後ろからかかる声。
声がわかりやすいため、振り向くこと無く後ろの人物のことを呼ぶ。
「百瀬」
「おはよう」
百瀬。
同期で別のチームの男。
中性的な顔と体系なので、恐らくしっかりと女装すれば騙せる。
マジで騙せる。
別のチームとは言え、少ない同期の一人であるため、仲良くしている。
「今日は?」
「先方から急に連絡がほしいって」
「連絡がほしいって連絡ってなんか面白いね」
「それな」
トーガの試練を思い出しながら生返事。
頭の中にあるのはトーガから出された非常に簡潔な試練。
『儂に一撃を入れてみせろ』
別に難しくないじゃん。
だって魔法つかいでしょ?
ゴブリンメイジの時って控えめに言って超優勢だったじゃん?
しかも一人相手。
多人数戦でない限り先見スキルもHPが1になるまで使うこともないだろう。
ははは、相手を間違ったなじいさん。
そう、思っていました。
「……実はドラドラ僕も買ったんだよね」
「へぇ……え?」
「あ、やっとこっち向いた」
そこにいたのは小さい身長の男とも女とも取れない人物。
その大きな瞳に、男らしくない体つき。
声も太いわけではなく、女と言われても疑問はない。
「ドラドラ買ったんだ」
「うん、結構連日遊んでるみたいだったし、なんか評価も高そうだったから」
この百瀬という男、俺と同じでゲームを趣味としている。
得意なのはもっぱらFPS。
軽く実況もしているらしく、知られたくないからなのか教えてはくれないが、それなりに反響のあるチャンネルであるらしい(口ぶりから)
そんな彼がVRMMOに挑戦するという。
「なんでよ」
「銃あるらしいね」
「え」
「え」
「知らないの?」
「うん」
「SNSで少し話題になってたよ。魔法使えるVRMMOに銃あるんか、大丈夫か無双では? って」
「そうか……」
ここ最近攻略サイトは見ていない。
トーガ戦のことばかりを考えている。
「……え、ほんとにドラドラやってるの?」
「うん、多分非常に人とは違う楽しみ方をしている」
「どういうこと?」
「ジジイをしばく」
「会社でそういうことは言うのはやめようね、マジで」
しばく?
いや、正確にはしばきたい、だな。
なんたって俺は5日間一度のトーガに一撃を与えることができていないのだから。
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