10話:自分だけのコンボを見つけるって最高

 2日が経った。


 現在は日曜日。

 朝である。


「お久しぶりですねぇ……」


 目の前には憎き……もうそんなに憎いわけじゃないけど、ホーンラビットが目の前にいる。


「練習の成果見せてあげましょう」


 金曜、土曜。

 俺はこの2日を使用して、パリィの練習をしまくった。

 VRゲームでは、時間加速と身体への影響からか、連続でゲームをプレイできる時間が限られている。

 そのため、やりすぎて朝まで、ということは無いのだが、できる時間ギリギリまで俺はゲームをプレイしまくった。


 ある程度の休みを取らないとゲームを再プレイできないのだが、その間は調べ物と残した仕事と家の事をやっていた。

 ……健康的だが、それでもこんなに必死に何かを練習したのは久しぶりだ。


 なんとなしに友達に誘われて入った高校の部活でもこれくらい熱は入れてなかったし、他のゲームでもこんなに熱中した記憶はない。


「お元気いかがですか……」


 目の前のホーンラビットを目の前に、未だに変えていない初期装備双剣を両手に距離をジリジリと詰める。

 ホーンラビットは、以前倒した俺とは違うということを察したのか、こちらの出方を伺っている。

 ……まぁ、流石に2日も倒されずにいる、なんてのはないから俺の勝手な思い込みだが。


 ホーンラビットは俺の出方を伺っている。

 場所は以前倒された場所と同じ東寄りの北の森。


 周りに邪魔をする人はいない。

 まだ真北には参入したプレイヤーはいるし、ここらへんに来れるプレイヤーもいるのだが、ここには一人もいない。

 みんな適正レベルをすぎると素直に南の草原レベルを上げ始めるらしい。


 しかも、このゲーム10レベルまでは結構すんなり上がるけど、そこからが長いらしい。

 20レベル以降はかなり時間がかかり、まだ最高レベルは24が最高だという。


「本日はお日柄もよく……」


 ホーンラビットの突進の間合いに入る。

 この距離だとホーンラビットはその脚力で一発でここまで来れる。


 現在のレベルは9。


 結構低い。

 ホーンラビットの適正レベルは15だ。

 結構絶望的なレベル差である。


 だが、練習したパリィの成果があれば、


「来いよ」


 勝てる。


 ホーンラビットは、俺の言葉に反応したのか、飛び出した。

 バッティングセンターで少し早め、くらいの速度。


 ホーンラビットの攻撃方法は、その角を使った攻撃だ。

 白い体毛の塊から突き出して見える角に目を凝らす。


 やっぱりか。


 俺の目には、ホーンラビットの角の先端に、淡い光を見る。


「パリィ!」


『ホーンラビットの攻撃、パリィ、パリィスキル発動、成功』


 俺が思うに、パリィスキルの駄目なところは大きく分けると3つだ。


 1つ目。

 パリィが成功しない。

 パリィが起きたとしても、成功率はあまりない。

 ……しかし、パリィスキルが有ればほぼパリィは成功する。


 パリィスキルがまさか使用を念じないと行けないとかどういうことだよ、とは思うが、現在それに関しては誰も気づいていない。

 攻略サイトでもオワコンのレッテルを貼り付けられ、まだその効力に気づいているものはいない。


「っしゃ」


 短く歓喜の声をあげ、吹っ飛んだホーンラビットに距離を詰める。


 2つ目。

 別にパリィがそんなに強くない。

 パリィするより盾で受け止めたほうが良い。

 パリィするより躱したほうが良い。

 パリィするよりノックバック狙ったほうが良い。


 ……これに関しては否定ができない。

 まだ俺が北の森でしか練習をしていないからあれだが、北の森でパリィの有用性に気づくのは至難の業だ。

 だが、その中で俺は可能性を見つけた。


 ……まぁ申し訳ないんだけどその可能性はホーンラビット戦では見られないが。


「オラァ!」


 いかつい声を出しながら、連撃。

 ひたすら振っていた双剣は、最初に比べると幾文かはマシな斬撃をホーンラビットに与えていく。


『ダンの攻撃、2のダメージ』

『ダンの攻撃、1のダメージ』

『ダンの攻撃、2のダメージ』

『ダンの攻撃、2のダメージ』


 これは初期武器だからであって俺のせいではない。

 ちなみにステータスもまだポイントをケチって振っていない。


 あ、3つ目だ。


 3つ目のパリィスキルの問題は、


キィイィィィィ!


 ふっとばされながら連撃を受けていたホーンラビットが、体制を立て直し、俺を踏み台にして後ろに飛んだ。

 ダメージは無いが、少し感じる衝撃。

 ゆっくりと地面に降りるホーンラビット。


 そのまま地面に着地する瞬間に、こちらに向かって突進してきた。


 速さは先程より早い。


 しかし、


「わかりやすくて助かる」


 俺の目には見えている。


【強きの瞳(ストロングポイント)】

効果……ストロングポイントが見える。


 短い説明文で理解不明な文章。

 しかしこれは思った以上に強い。


 ストロングポイントっていうのは、攻撃における一番強い場所だ。

 これに当たると普通に当たるよりダメージを貰う。

 それが見えるようになるスキル。


 今目の前に見えているホーンラビットの角の先端。

 これが一番当たると痛い場所。

 それが淡く光って見えるというスキル。


 自分にも存在していて、これを相手にあえて当てると行ったことも可能になる。


 地味に見えて結構使い所があるスキルだ。

 防御に使うことも、回避に使うことも、一撃の威力を上げるのにも使えるだろう。


 しかし、俺はそれより有用な、俺だけに使える使い方を知った。


 それは、


「パリィ!」


『ホーンラビットの攻撃、パリィ、パリィスキル発動、成功』


 パリィだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る