9話:まだまだ始めたばかりなので

 レイが去った後。

 しばらく落ち込んだ。


 いや結構落ち込んだ。


 とりあえず無心にモンスターにパリィを仕掛けては失敗し、仕掛けては失敗し……


 確率的には5回に1回パリィが起きる。

 だいたい成功する。

 しかし現在戦っているのは格下ばかりなので、そんな参考にはならない。

 その間も、全財産をこの様な確率ワンチャンスキルに使ってしまったのかと後悔している。


「はぁ」


 ため息を付く。

 ログを眺め、ステータスを開き、パリィスキルを見る。


【パリイ】

 効果……相手の攻撃を弾き飛ばすスキル。


『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、成功』

『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、成功』

『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、成功』

『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、成功』

『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、成功』


 ログの、パリィの成功した項目を読んでいる。

 すべて同じなので、恐らく読む必要はない。


 けど、なんとなく、思いついたことがあって、


「やるか」


 とりあえず物は試しだった。


 ゴブリンが現れる。


 いつものように考えなしの突進。

 今度は振り下ろし初めのタイミングで、


「ほっ」


 叩く。


 そして今回は、少し考え方を変える。


「パリィ!」


 周りに人がいるため、そんな大声ではないが、宣言してみる。


 木製の武器が衝突したはずなのに、金属音。


 そして、パリィは成功。


 ゴブリンの体制が崩れる。

 その隙に、連撃。


『ダンの攻撃、5ポイントのダメージ』

『ダンの攻撃、5ポイントのダメージ』

『ダンの攻撃、4ポイントのダメージ』

『ゴブリンを倒した』


 倒したら速攻ログを見返す。

 攻撃の部分とかはどうでもいい。


 ……双剣だとログ多くて見づらいなオイ。


『ゴブリンの攻撃、ダンのパリィ、パリィスキル発動、成功』


 おっっっっっっっっっっとぉ?


 思わずにやけた。


 このゲームに置いて、スキルの使い方は明記されていない。

 おそらくはこれもどこかでしっかりと話しを聞けば分かることだろう。


 だけど、それよりも、


 自分で見つけたのが嬉しかった。

 いやさ、答えを見るのとたどり着くのはぜんぜん違うわけで。

 それが俺が大枚はたいて買ったものだとなお良くて。


「これでようやく成果が見える……」


 モチベーションは当然上がるわけで。


「パリィスキル、極めてや……」


 そこで、ログの後ろにウィンドウが隠れていたのを見つける。


 どうやらレベルアップのウィンドウをログで隠していたのか。


「レベル5……」


 モクモクと1時間近くモンスターにパリィ仕掛けては倒していたから、いつの間にか上がったのだろう。


 HP(体力)…34

 MP(魔力)…26

 STR(筋力)…38

 VIT(耐久力)…34

 INT(知力)…26

 SPD(速力)…45

 CON(スタミナ)…39

 LUCK(運命力)…28

 MC(魔力操作)…26


 ステータスは基本的にレベル上昇ごとに、すべてのステータスが平均5ポイント上がる。

 それに練習とかをしているからか、少し多めにステータスが増えている部分もある。

 俺の場合は筋力と速力が多めだ。


 多分武器振りまくってたのが原因かな?


 ちなみにレベル上昇ごとに5ポイントのフリーポイントが貰える。

 まだ振り分けてはいない。


 まぁ、それは置いておいて、


『スキル【強きの瞳(ストロングポイント)】を身に着けた』


 初スキルだ。


 テンションが上がるのが分かる。


 そうか、大枚はたいたところで遊び始めだ。

 まだまだ時間も先もある。


「ふふふふふ」


 強くなってやろう。


 パリィスキルがすごいところを見せてやろう……。


 木々の間を俺の不審な笑いが駆け抜けていった。

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