4話:人の目って異様に気になる
ユグドラシル アインス……まぁ長いのでアインスと略すが、アインスの周囲は東西南北、4つの環境が存在している。
北……森
南……草原
西……山
東……荒野
現在わかっているのは、それぞれに適正レベルが存在し、出てくるモンスターがある程度決まっているということだ。
ちなみに、この世界でのプレイヤーの強さはレベル制。
現在確認されている中でトップレベルは20らしい。
「で、ここが適正な狩場……なんだけど……」
強さ順でいえば、
北の森<南の草原<西の山<東の荒野
という感じで、レベル10毎で次のステージ行ける強さになるらしい。
「人多いなぁ……」
流石はサービス開始直後(20時間後)、人が多いのなんの。
森はユグドラシルとまでは行かないが、とても大きい樹が幾つも生えている地帯。
木々同時はお互いに邪魔しないようにある程度の間隔を開けて生えている。
そのため、通れないほどに生い茂っているというわけでもなく、樹が大きいおかげで木々の間は人間からするとかなり広く感じる。
しかし、大樹であるがゆえに日差しは隠れていて、薄暗い雰囲気を出している。
それでも木漏れ日が差し込んではいるため、結構神秘的な風景だ。
ちなみにゲーム世界と現実世界では少し時間の流れが違う。
一応現実世界と同じ時間形式であるため、今はゲーム世界では朝の6時ということだ。
そのためか、現実世界では夜なはずなのに、こうして木漏れ日が差し込むほど太陽が照りつけている。
「とりあえず端の方に行っとくか」
そんな森が、人で埋め尽くされている。
どこ向いても必ずプレイヤーのいる森でモンスターを探すのは骨が折れそう。
それに、大勢に見られながら戦うのも気が引ける。
「ここらへんなら大丈夫?」
そのまま森を遠くに見定めながら、東の方に歩いていくと、プレイヤーの数は減少してきた。
もしかしたら東の荒野に突っ込むかもしれないと少し警戒はしていたが、この分だと結構遠い。
遠目で見る限り出てくるモンスターも別に変わっている様子もない。
森に入る決意を固め、仕舞っておいた武器を取り出す。
「おぉ、重い」
初期選択の武器は、双剣にした。
双剣、は武器としてのカテゴリである。
二刀流と違うのは、二刀流は2つの武器を使う者であり、双剣は二対一個の武器を指す。
メリットは手数の多さ。
どの初期武器よりも圧倒的に手数が多く、1度ハマれば隙を晒さない武器、と言われている(初期説明より引用)
しかし反対に、1回の攻撃が片手剣の1回の攻撃の半分ほど……つまりは双剣で2回当ててようやく片手剣1回分の攻撃力であるため、単純に玄人向け、スキル頼みな武器(最速攻略wikiより引用)
「最初は確か、ゴブリンと兎、スライムだよな」
攻略wikiに頼りきりだが仕方がない。
どうやらこのゲーム、最初の説明が乏しく、序盤はレベル上げ!と息巻いていた人達が、情報が少ないせいで死ぬほど死んでしまったらしい。
死ぬほど死ぬ、というのはまた面白い話だが、この結果、プレイヤー達はグループを作り、人海戦術で情報を集めたらしい。
その結果、このゲームにおけるアインスの街は情報の宝庫であり、NPCの技術が他のゲームと比べるとかなり違うらしい。
先程挙げた適正レベルの話だが、アインスの街にいるNPCはだいたい知っていた。
詳しい人はモンスターの分布まで教えてくれるらしいし、それ以上の情報をNPCはたんまりと持っているという。
しかし、NPCの出来が良すぎて、しっかりとコミュニケーションを取らないと情報を聞き出しづらいというコミュ障殺しな現象が起きているという。
「ま、俺は別にNPCとはあんまり触れ合わないかなぁ」
必要な事があれば行くが、特段意識的にNPCと触れ合おう、なんてことは考えない。
キキッ
ある程度まとめておいた情報を確認しながら準備体操をする。
敵の行動、攻撃力に弱点。
頭の中に叩き込んだら、森の中に入る。
すると聞こえる、小動物の鳴き声。
兎。
に角が生えている。
「ホーンラビット」
角つき兎の頭上に表示されるウィンドウを声出しして、双剣を構える。
「初モンスター戦」
これでワクワクしないのは男の子じゃないよ。
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