5話:ゲーム開始してから早すぎてむしろ清々しい
初期武器には、共通点が存在する。
まずは木製の、という枕詞。
どんな初期武器だろうと木製の武器である。
今持っている双剣も、なんとも言えない長さの木剣が2つ、というものである。
「ほっ」
近づいて一撃。
しかしホーンラビットは俊敏に攻撃を躱す。
そして、木製武器の特徴として挙げられるのは、3つ。
攻撃力0。
すべてが打撃攻撃。
耐久力無限。
つまりはこれで攻撃するのと拳は同じ攻撃力。
壊れない練習用、というわけだ。
「やっ」
特に武術なんて習っていないので、小学生が傘を振り回すように左右の双剣で連撃を行う。
いやマジで、使ってみて分かるけど、かなり慣れない。
ホーンラビットはそれを侮るように、俺から距離を取る。
距離を取ればいいとでも思っているのか。
近づこ……
カンッ!
「っあぁ!」
動こうと足を動かすと、双剣同士をぶつけてしまったらしい。
木製の武器のいい音がなる。
この手の戦うVRゲームは始めてだからマジで慣れない。
思わず手からこぼれ落ちる双剣。
その瞬間を待っていたかのように、ホーンラビットは動き出した。
結構早い。
バッティングセンターの少し遅めくらいのスピードだ。
思わず、手に力が入る。
そのまま、顔を庇うように腕で守る。
キィン!
木製の武器では出ない音が出た。
まるで 金属同士のぶつかる音。
その音とともに、
「っとととと」
俺は後ろに吹っ飛んだ。
まるで体を後ろに引っ張られたかのような衝撃に驚きながらも、拙い足取りで着地する。
何が起こった?
理解する前に目の前の兎のことを思い出す。
腕を下げ、兎の姿を確認すると、すでに兎は、
「ぐへっ」
俺の腹に突き刺さっていた。
一気にHPが減る。
えっ、待ってマジで? 初心者のとこなのに?
勢いよく減っていくHP。
えほんとにここ初心者用?
ほんとに?
頭の中が疑問符にあふれる。
おかしくないか?
攻略のページ見たら一撃で死ぬ、なんてこと書いてなかったけど?
そのまま、俺の頭の中の疑問が晴れること無く、俺のHPは0になり、俺の体は死を迎えた。
『なんでよ』
HPが0、つまり死亡してしまうと、復活……リスポーンする。
一番最後にリスポーン地点として登録した場所か、一番近くのログイン場所に出現するのだが、それまでに少し時間がかかる。
その状態では、霊体として自分の体を少し上から見ることができる。
自分の体は足元から光の粒子となっている。
『リスポーンまで後50秒』
リスポーンまでは1分。
少し長めなのか?
その間、俺はログを取り出す。
ログは、行動の結果を記録してくれる項目だ。
例えば、俺が攻撃して外れると『ダンの攻撃。ミス』
今の兎の攻撃で言えば、『ホーンラビットの攻撃、50ダメージ』
……ん? 50ダメージ?
おかしくない?
初期のHP極振りでも最高55だよ?
それに俺は少しだけ防御に振っているし……
なんで?
なんか見落としてるとこありそうだな、後で調べよう。
後、さっきの金属音は『ホーンラビットの攻撃。ダンのパリィ。失敗』
ぱりぃ?
何だそれは。
それに失敗って、あれで失敗?
成功に見えたけど……
なんか色々と不明なところというか、意味わからんところがある。
『リスポーンまで5秒』
調べよう。
死んだ場合のペナルティ……デスペナルティもあるし、ゲーム始めてから1時間も経ってないけど、少し立て直そう。
幸いにも、初期の装備には、一定期間『死亡しても紛失しない』っていう状態がついているから、何も失ってはいない。
失ってはいないけど……
あの兎は絶対しばく。
ゆるさないからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます