3話:初ログインは心弾む
『人の魂に良く似たものよ。
あなたに器と、種を与えましょう。
器はあなたがここで生きるために。
種はこの世界でその力を芽吹かせるために。
私の願いは、大樹を一つにすること。
この世界を救世すること。
世界は少しずつ、少しずつずれてきている。
その中で大樹はまた一つになることを求められている。
願う。
希う。
ユグドラシルの探求を。
Yggdrasilの物語を』
ゲームを起動すると、作成したアバターを選択して、スタートする。
初回起動だと、軽く世界の説明をされ、光り輝くナニカから、この言葉が流れる。
その間目に映るのは、初めに降り立つ街である『ユグドラシル アインス』。
上空から見たこの街の景色は、きれいだった。
大樹、と言ってもその大きさはリアルにある大樹とは比にならないほどの大きさ。
うちの会社のマンションが何棟も入る程の大きさの大樹。
その大樹の周辺にあるのは、家々。
目を凝らすと見えるのは、様々な人達。
オープニングムービーだから流石にプレイヤーは写っていないと思うが、それでも上から見るのは楽しい。
街の形は大樹を中心に、クモの巣状に広がっている。
木造、木造、レンガ造り。
2:1=木造:レンガ造り、かな。
店や、住む家や、ギルドのようなものが見える。
大きい建物もちらほら見える。
一応、流れてくるセリフはしっかりと読んでいるし、聞いている。
『それでは、良き旅を』
最後に光るナニカはそう告げ、俺の視界は一気に白くなり……
「んぉ」
間抜けな声を出しながらも、目を開く。
広がっていたのは、
「おおおおおぉおぉぉぉぉ!!」
眼下に映っていた町並みだった。
大声を出して周りの人に見られてしまった。
咳払いをして、気を取り直す。
今いるのは、街の広場だろうか。
地面が整備されていて、真ん中によくわからない銅像。
初ログインは絶対ここになるのだろうか。
と思っていると、背後でいきなり人が現れた。
その人も俺と同じ服装をしていて、おぉ、と声を漏らしていた。
初ログインだろう。
服装に関して言えば、最初は決まっている。
麻の服だ。
少しゴワゴワしている感触だが、インナーは着用されているため、特に不便は感じない。
「そ、れ、で」
ウィンドウを開く。
持ち物と、現在の状況を確認。
ある程度の金と、初期で選択できる装備。
ステータスは割り振ったとおり。
「……別にミッションとかはない感じね」
このゲーム、クエスト中でなければ基本的には放任スタイルらしい。
行動指針を最初から提示しないってのはどうかと思うけど、個人的に嫌いじゃない。
今の時代、ある程度調べれば分かることは多い。
だからこそのこういった自由なゲームなのだろう。
「まずは……」
自由。
それは目的もなく、目標もない、暗闇の道。
だけど同時に、何でもしてもいいという光の道でもある。
「モンスター倒しに行こう!」
街のマップは楽しみすぎてさっきで暗記した。
それに最初の狩場はすでにリサーチ済み。
足取り軽く、俺は街を歩んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます