キミが2人?!

「さようなら。」

帰りの挨拶が終わるや否や、僕は教室を飛び出し、ダッシュで階段を降りて下駄箱にたどり着いた。ここまで来ればもう大丈夫だ。

「…の、あの。」

靴を履いていた僕の後ろから、声がした。振り返る。

「…っ!」

そこには並木さんが立っていた。

「いや…その…今日、用事があったの忘れてて…」

必死に弁解していると、キミは首をかしげた。

「……?ハンカチ、落としました。さっき階段で。」

そう言うと、ハンカチをスッと前に差し出した。確かに僕のだ。

「…ありがとう。」

それを僕が受け取ると、キミは呆気なく帰って行った。

「……。」

察してくれたのかもしれない。見学に行きたくないという僕の本音を。それにしても、さっきのキミは素っ気なかった。鬱陶しいくて、距離感分かってないんじゃないかと思うくらいガンガンつめてくるキミとは、別人のようだった。きっと、何か嫌な事でもあったんだろう。まぁ、関係ないけど。

トントン。

誰かが肩を叩いた。今度は誰だ?振り返る。

「…ぇえっ!!」

そこには満面の笑みの裏に少しの恐怖を覗かせた…並木さんがいた。

「約束!しーたーよーねー?行くよっ!」

キミはそう言って、ポンッと背中を叩いて歩き出した。疑いようのないほど、キミだ。じゃあさっきの人は…。口が開いたままの僕は、キミを見ながら考えていた。

「何?私の顔何かついてる?…それとも可愛いさに気付いちゃった??ハハハ!」

1人で言って、1人で笑っている。この人だ。教室で僕に話しかけてきたのは。気がついたら、弓道場の前に着いていた。

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