11話 神器ありの戦い

 そんなんであっても、琥珀さんは余裕を絶やさない。 

 ああまあ、俺のために戦ってくれるって、言ってたし。

 また、荒ぶる猫神見た時からか、妙にオーラが異なる。

 ……何だか、ね。

 燃え上がる、……炎のような。 

 同じ猫耳同士、何かあるのかな(焦り)。

 けど情けない、俺(涙)、男なのに。

 でも、猫神とこうして、対峙できるなんて、羨ましいや。 

 ああ、俺だけ置いてきぼり、辛いや。 

 「ぬぐぐぐぅぅぅ!!」 

 「……。」

 一方で、猫神は仕掛けてこない。

 地団太を踏むばかり。

 琥珀さんが相手が、まずいのか。

 それとも、一向に隙が見えないからか。

 ちらりと見れば、やっぱり何か琥珀さんにあるみたいだ。

 それが何か?

 それは、……見てのお楽しみ、って奴かな。 

 琥珀さんを見れば、余裕のまま。 

 さて、どうしようか思案しているかのよう。

 「じゃあ、こうしようかしら。」

 「!」

 閃いたみたい。 

 琥珀さんは何を思い付いたか、にぃっと悪そうに笑う。

 ……一体、何を?!

 「それっ!」

 「!」

 にっこりと、ウィンク一つ放っては。

 指を鳴らす。

 その瞬間!

 何と、世界が止まった?!

 俺と琥珀さん以外は、動かない。 

 琥珀の中にいるような、時の止まった世界……。

 夕暮れの、一瞬を思わせる、美しさだ。

 突然のそれに、俺は感嘆の息をつい吐いた。

 これは?

 疑問はようやくと、次に来る。 

 琥珀さんを見るが、……やはり、にっこりと笑い。  

 秘密だと、指をそばだてるだけで。

 で、猫神は?

 「ぬわぁぁぁ?!身体が、身体がぁぁ!!!う、動かん!!!なぜじゃぁぁ?!」

 「!」

 この状況に、しかし動けるか。

 口だけで、この場に、地団駄のまま、固定されて。

 これじゃ、次に琥珀さんがすることに、対応できない。

 猫神にとっては、絶体絶命。

 簡単に、やられそう。 

 「じゃあ、これで!」

 「!」

 何をするやら。

 その、〝次にすること〟とは。

 琥珀さんは、そっと、親指でデコピンするような構えをして。

 かつ、その手の部分に、コインのような物をあてがってもいた。

 うん!どっかで見たようなポーズ!

 こう、電磁投射砲?

 「?!」

 が、感心して、見入りそうになった時に、見ちゃいけない物を見てしまう。

 そう、その〝コインのような物〟、……お金でした。

 500円玉です、ええ。

 その、500円玉ということに驚愕が次に続いて。

 嫌な予感さらに続くなら、俺は財布を紐解く。

 ……悲しいことに。 

 ただでさえ寒い財布が、寒い。

 なぜに?!それは唯一残っていた500円玉さえ、なく。

 まさか?!……と思って、琥珀さんを見れば、その500円玉って?!

 余計に、嫌な予感がしてならない。止めようと手を伸ばすが。

 反対に伸びてくる、電磁投射前兆の、強大な放電が阻んできて。

 「いってぇ?!」

 感電して、俺は手を引っ込めてしまった。

 そうこうしているなら、最大限に電気が溜まり。 

 空気が咆哮するように震えては、俺の500円玉と思しき物を、投射した。 

 放たれる500円玉、それは、周辺の空気を震わせて。

 また、空気の膨張圧縮に、衝撃波表すように輪を作って。

 一瞬、だけ、それだけながら、もう、相手に直撃か。 

 「?!」

 しかし、直撃の衝撃は、猫神からではない。 

 俺と琥珀さんの横を抜け。

 なんと、俺の後方から。

 何事と思ったが。

 一瞬のことであるために、分からずではあったが。

 遅れて通じてきた音に、分かることも。 

 どうやら、猫神に当たる前に、弾き返されて。

 俺と琥珀さんの後方へと向かったのだろう。

 ……ん?

 どうやって? 

 不審に思い、俺は猫神を見た。

 「!!」

 何を持っているか?

 猫神は、どうやって琥珀さんの拘束(?)を解いたか知らないが。

 動けているようで、また、その手には見慣れぬ物を手に、琥珀さんに向けて。

 威嚇するように突き付けている。

 その物、……何だか、剣?……というか独特な?

 光の棒?……ちょっと違う。ああそうだ。

 何だか、SFとかで見る、光の剣だ!それを、威圧するように構えて。

 だけど、どこか猫神は息を荒げていて、きつそうだ。

 「……へぇ。あなた、まがいなりにも、〝神器〟を使うの。」

 「そうじゃ!!!その通りじゃ!!我がこれを抜いたら、貴様の命はないと思え、この女狐!!!」

 「……心外だけど、猫よ、私は。まあ、いいけど。」 

 「!」 

 方や。

 琥珀さんは、知っている風であり。

 かつ、からこそ、大して驚いてもいない。

 「……まあ、〝神器〟を抜いたんだから、普通にやっても効果はないわね。小手先じゃ、ね。あと、抜いたんなら、失礼だから私も使おうかしらね。」

 「!……?」

 驚かないし、また、相手が使ったからと自分もと言わんばかり。

 琥珀さんはぶつぶつ言い続けていて。

 ……ああ俺は、話について行けず、置いてきぼりだ。

 もう、だね。 

 何だろう、女の闘い?けど、俺が入り込む余地がない……。

 「あ、そうだわ!あなたに返すわね?」

 「!」

 そこは、琥珀さん。

 俺に忘れずに言ってくれて、また、向けた顔は、笑顔の華やかさになり。 

 それを聞き、……一体何をするのか?返すとな?

 そっと、琥珀さんは手をかざすと。

 「?!」

 金属音が響くや、何かが飛翔してくる音が。

 そうだな~、コインが飛翔するような?

 後ろから来ているために、つい見ると。

 金属の硬貨らしきものが、琥珀さんの手目掛けてきていて。

 いや、まあ、らしき、というよりは、まんまだろうけど。

 ……けど、だ。その硬貨は、衝撃にひしゃげた、無残な形であって。

 「?!」

 ……けど、だ。なぜか、その硬貨は琥珀さんの手に戻るにつれて。

 元の平べったい、硬貨の形へと戻っていく。 

 巻き戻し?そんな感じがする。

 上手く手に収まると。

 「はいっ!ごめんね、勝手に使って。きちんと返したから。」

 「……あ、……はい。いえ、その、どうも……?」

 琥珀さんは、それをそっと、俺に手渡してくれて。

 言葉には、謝罪もある。聞けば、悪気はなさそう。

 また、琥珀さんから感じる気品といい、何といい。 

 普通なら許してしまいそうになるが、俺は上の空でしかない。

 俺としては、一体何が起こったの分からずにいて、それが上の空を。

 ただただ、口をパクパクさせるだけだ。

 「じゃ、私はあの猫神を倒すわ!ねっ!」

 「……あ、はい……頑張って~……。」 

 琥珀さんは構わず、進めて。

 にっこりと、やはり惚れそうな笑みを浮かべては、誓ってきて。

 俺は、上の空のまま、ただただ手を振るだけ。

 「!」

 そうして、見送られるなら琥珀さんは、らしくなくきりっとした顔に。 

 今から、闘いを始めよう、そんな際の。  

 何をするか?

 俺はただ見守るしかない、その折に。 

 琥珀さんは、何をするか?琥珀さんは、徐にポケットに手を入れるなら。

 その服装には似つかわしくない、古ぼけた懐中時計を取り出した。 

 「……来なさい、〝クロノス・ギア〟!」

 「!」

 出したなら、放り投げては、何か言う。 

 するとその古ぼけた懐中時計は、宙にて形象を変えていくか。

 元の懐中時計から、ドロドロとした、そう、カオスのような形態となり。 

 変化させて、巨大となって。

 何だかやがて、巨大な剣のような形状となるなら、定まったか。

 形象がはっきりとして、象られていく。 

 それは、大剣。

 大きさは、琥珀さんの身長ほどありそうな。

 しかも、ただの大剣じゃない、刀身に歯車を持ち。

 規則正しく蠢く、そうだな、時計のような。

 それが現れるや、けど、似つかわしくないようなほど、軽々と手にして。

 切っ先を猫神へと向ける。 

 笑みだって浮かべれば、そこには自信だって感じよう。

 絶対たる、自信。かの、猫神にさえ、打ち勝てると。

 「ぬ……。」 

 見ていた、いや、見せられた猫神は。

 歯痒さに牙を剥き出しに、歯軋りだってして。

 「ぬぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅううううがぁぁぁ!!!!それが何じゃぁぁぁ!!!我のだってぇぇぇ!!この〝にゃいとセイバー〟だってぇぇ!!負けぬわぁぁ!!」

 「……うわぁ。」  

 拭い捨てるように、吐き捨てるように。 

 自分だって、立派な神器だと言い、吠えて。

 なお、俺としては、この時点で勝敗が決まっているような気がしてならない。 

 だって、〝にゃいとセイバー〟って。もうこの時点で……。

 悲しいかな、ダサい。

 そして、多分一方的に……。

 「じゃあ、やってみなさいな。」 

 「!」 

 他方。

 琥珀さんは、煽る煽る。

 自分は、負けないという絶対な自信を持っているから、とでも。 

 切っ先を向けた、そのままに。  

 そうなると、実質単細胞で。

 思慮深くもない猫神は……。

 「ぬぬぬぬがぁあああああああああ!!!ムカつくぅぅぅううううう!!!えええええええええい!!!もう二度と、そんな余裕見せられないようにしてやるのじゃぁああああああああああ!!!今日この日を、お主の命日としれぇぇ!!!!」

 「……うわぁ……。」 

 簡単に吠える。

 吠えるったら、吠える。

 このまま、二度と立ち上がれなくなるまで、斬り付けそうな。

 ……だが、あくまで強ければ。 

 ……正直、琥珀さんから感じることに、何だか、猫神弱そう。

 だから俺は、これじゃ、やっぱり一方的にやられるぞとしか。

 「うがぁぁぁ!!!!」

 間髪入れず、吠えたなら猫神は、地面を蹴って、跳躍。 

 そのまま、落下の力加えて、相手を押し倒す気なのだ。

 「……はぁ。どっちが、二度と……なのかしらね。」

 「!」

 琥珀さんは、余裕。 

 落下の勢いにかまけるそれにさえ、臆することはない。

 大剣を翻して、それこそ、自分を覆い隠す様に刀身を構えたら。

 丁度盾になる。

 ……ために、勢いは分散、衝撃波も、枝分かれ。

 ダメージなんて、ほとんどないよう。だって、衝撃は分散されちゃうし。 

 まして、相手の光の剣と、琥珀さんの大剣じゃ、あまりにも大きさ違う。

 そうであっても、周辺の建物まで揺るがす衝撃だ。

 ことから、凄まじさを感じるが。

 枝分かれ、衝撃波。 

 「?!のわぁぁ?!」

 ……俺を襲う。

 情けなく、俺は悲鳴を上げて、飛ばされて。

 ぽよんっ!

 「にゃん?!」

 「?!」

 だとすると、こちらにも凄まじい衝撃がありそうなものだが。

 ……なぜだか感じたのは、柔らかい感触のみ。 

 ……何で?まあ無事だしいっか。 

 それよりもと、俺はかの勝負、見逃すまいとまた、琥珀さんを見る。

 勝負は互角……のように見えるだけ。

 猫神は、必死な様子で食らいついているようだが。

 大剣に阻まれて、思うようにいかない。 

 当の琥珀さんは、余裕。 

 もう、この時点で……(以下略)。

 さらに、琥珀さんは、一瞬きらりと目を光らせたなら。

 「!!」

 不可解な音を発して、世界を見事な琥珀色へと染め上げる。 

 「?!にゃにゃ?!そ、そんな、身体が?!」

 それは、猫神の身体をも留めて。

 「……それじゃ、とどめねっ!」

 「!」

 そこにすかさず。

 琥珀さんは、攻撃を与えるか。 

 大剣を両手に持ち。ただただ、振り抜く。

 振り抜くその一撃のみ。

 それだけ、それだけで。

 「?!のじゃぁぁぁぁあ?!」

 ……空の彼方にまで、吹っ飛んでしまった。

 残る言葉は、情けない、そんな感じで。

 何だか、呆気ない。

 何だか、ホームランだ。

 これじゃ、……猫神なんて目じゃないや。

 後、格が違う……。 

 見ていて、俺は何とも言えない様子であったが。

 「……っ。」 

 終わったのかな?思うに、安堵が次に続く。  

 その通りかな、琥珀さんは大剣をゆっくりと降ろして。

 安堵に息を吐いたなら、合図に俺もまた。

 「……ん?」

 そうしたなら、安堵から別のことも気になる。 

 さっき、そう。

 ちょっと前、俺に当たった、〝ぽよんっ!〟っていう、柔らかい感触って。

 気になって俺は、そっと、後ろを向く。

 「?!」

 「うみゃっ!文彦君っ!これって奇遇だねっ!!!えへへっ!」

 では、その柔らかい正体はと。

 ……同じ猫耳の、マリである。

 柔らかい……って、その豊満な胸に当たったのだろう。 

 にもかかわらず、嫌な顔一つせず、マリはにっこりと俺に笑みを向けた。 

 可愛らしく笑むそれは、マリらしい。

 こっちまで、元気になるかもしれない、そんな。

 「……って、俺まさか……?!」

 じゃない。

 そもそも、女子の柔らかい物に当たったのだからと、俺は気付くや。

 慌てふためく。 

 「?どーしたの?」

 「い、いや……お、女の子にぶつかって、んで、このままだから、つい。」

 「?んーんっ!文彦君ならいいよっ!もっと、奥深くの、進んだやつでもあたしはけっこーだからっ!えへへぇ~!」

 「……。」 

 マリは不思議そうにしながら、俺を見つめて。

 俺は、弁解を探そうと言葉を紡ぐが、しどろもどろであって、どうにも。

 なお、耳にしたマリは、気にしていない様子。

 どころか、より先までしたく思って。

 笑顔の向こうに、デレデレした様子を垣間見せた。

 ああそうだな、元々気にする性格じゃありませんでしたね、この娘。 

 呆れて、もうどうでもよくなりそう。

 あはは、乾いた笑いが浮かぶ。 

 「……ああそうそう、そう言えば、もう一人、お邪魔虫がいたわね?」

 「?!ぞっ?!」

 そうしていたら、悪寒を覚えさせるほど、冷徹な声が響き渡って。

 俺は身震いしてしまう。 

 その声の主、探す様に顔をまた、琥珀さんに向ければ。

 やはりそうかな。

 そう言えば、と口にした時から、威圧するようなオーラを放ちつつ。 

 ギリギリと、それこそ、恐怖を覚えさせるほどゆっくりとこちらに向き。 

 向いたなら、鬼の形相……ってほどじゃないが、冷たさを感じ。 

 かつ、その瞳が怪しく輝けば、俺は余計に身を震えさせた。

 「?あれあれ?その人、だぁれ?」

 「?!……えぇ……。」

 そんな様子に呑気なマリ、不思議そうに首を傾げて聞いてきた。

 見た俺は、こんな時に平然としているなんてと、俺は驚愕する。

 この人、空気読めない?明らかに相手は、殺気だっているのに? 

 「ふふっ……。久し振りに、燃え上がるわぁ!」

 「!!ひぇぇ……っ!」

 他方。 

 琥珀さんは、こう、〝昂ぶる〟っていうのかしら?そんな様子で。

 ただでさえ、恐怖に身が震え上がっているのに、余計に……。

 挙句の果ては、手にした大剣を振り上げれば、なおさら。

 「?!うにゃぁ?!い、いやぁ~な予感っ?!」

 ……今更、事の重大さに気付いたか。

 マリは琥珀さんの殺気に、飛び上がって。

 軽く、身構えて、それこそ、逃げるために。 

 「そ、その文彦君!!さ、さよならぁ~!!な、何だか今日は、とっても悪い日みたいだねぇ~!えへへっ!!……うわぁぁぁぁ!!」 

 「……あ、……はい、その、気を付けて……。」 

 そうであっても、俺への挨拶は忘れない。

 悪い予感を覚えつつ、ばつが悪そうな顔をしながらも。

 精一杯、引きつった笑顔であっても、精一杯に俺に手を振って。

 俺の返答見ることなく、素早くダッシュしてこの場から去ろうとするのだ。

 「……待ちなさい?大丈夫!痛くしないから?痛くしないで……。」


 「……〝楽〟にしてあげるわっ!」

 

 「?!ぞぞぞぞぞぞ……。」

 その後ろ姿を追うように。

 琥珀さんもまた、駆け出す。

 同じように笑みを浮かべているが、それは不敵な笑みであり。 

 先の眼光と相まって、俺はさらにさらにさらに震え上がってしまった。

 俺を置いてきぼりに、琥珀さんは駆けて。

 

 「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」

 どっごーんっ!!!

 ……遠くの方にて、凄まじい爆音を轟かせるのだ。

 遅れて、マリの悲鳴も上がったが、どんな状況なのか掴めないまま。 

 俺は一人、ポツンとしてしまう。

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ねこみみラブちゃーむっ!猫神の呪い(まじない)は7代まで続くっ! にゃんもるベンゼン @nyanmu00

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