恋って何?

ネオン

恋って何かな?

突然だけど私には悩みがある。

それは、“恋”がわからないことだ。

なんか、周りのみんなが恋話をしているからなんとなく合わせているだけで、ちっとも共感できやしない。

そこで、どうにか恋愛について理解するために、恋というのを辞書やネットで調べたり、恋愛漫画や恋愛小説を読んでみた。

結果わかったことは、恋というのはドキドキする、会いたくなる、みたいな感じということだ。


…会いたい人……ドキドキする人……


いないな〜。



ピンポーン


あっ、やばい学校行かなきゃ。

インターフォンが鳴ったということはアイツが迎えにきたのか。

急いで鞄を持って家を出る。

「お待たせー」

時計を確認したらまだ学校には間に合う時間だ。

「遅い」

「いいじゃん、別に学校に間に合うんだから」

「はあ、まあそうだけどさ、時間くらい見ろよ。俺が迎えに来なきゃどうするんだよ。」

「えぇ、どうせくるじゃん。だから大丈夫でしょ!」

いつも、必ず迎えに来てくれるからついつい安心しちゃうんだよね。

「…高校生なんだからちゃんとしろよ、ナツ」

「そんなこと言わずにさぁ、幼なじみなんだから面倒みてよね、ユタ。」

ユタはなんだかんだ言っていつも面倒みてくれるから、優しいんだよね。

友達にユタのこと好きなんじゃないの?とか言われるけど、なんか、友達というか兄弟みたいな感じだから違うと思うんだよね。だって、ドキドキしないし、会いたいとかは別に思わない、だってほぼ毎日会ってるし。

「ねえ、ユタは好きな人いるの?」

「はあ?何、急に。へんなものでも食ったか?ナツはそんなことに興味なさそうなのに」

「食べてないわ!確かに、興味はなかったけどさ、周りの人たちがさ、そんな話ばっかしてるんだよ。高校生って恋愛するんだなーって思ったからユタも恋してるのかなーと思って。」

「ふーん。まあ、いるっちゃいるけど。…聞かれても絶対言わないからな。描こうとしても無駄だぞ。その顔は絶対に聞く気満々だろうけどな。」

ちっ、ばれたか。ケチ。ちょっとくらい教えてくれてもいいのに。減るもんじゃないだろうに。

「えー、あっ、もう付き合ってるとか?」

「ちげーよ。だいたい、付き合ってる人がいたら毎日毎日ナツを迎えに行かないだろう。

帰りだって彼女いたら彼女と帰ってるわ。あーそうしたらナツはボッチになるな。」

「失礼な。一緒に帰る友達くらいいますから〜。ユタ以外に友達いないとか、そんなわけないじゃん。ていうか、ユタに彼女出来たら困るわ。だって、朝から時計見て動かなきゃいけなくなるじゃん。」

「いや、それ普通だから。普段から時計見ろ。アホなのか。ナツは好きなやついないのかよ。」

「いない、と思う。たぶん。わからないんだよ、恋というものが。」

恋ってなんですか??だれかに教えてほしいわ。

「へー」

興味なさそうな声に聞こえる。自分から聞いてきたくせに酷くないか。

「もっと興味持て!」

そうこうしているうちに学校に着いた。


「おはよー」

「おっ、おはよー。ナツちゃんは今日も彼氏と一緒に来たの?」

「だから、彼氏じゃないっていつも言ってるでしょ。ただの幼なじみだから」

「ほー」

なんだ、その疑わしそうな目は。

本当にただの幼なじみなのにな〜。

ハナはいつもこんな感じで疑ってくる、ニヤニヤしながら。

「ところで、ナツは見たところ運動着持ってきてないようだけど、1時間目体育だよ」

えっ…、まじですか…。

「その顔は忘れてきたようだね、どうするの?」

どうしようか。

よし、まだ時間はある。

「ちょっと行ってくる」

そう言って教室を出て隣の教室へ向かった。



「ユター、運動着貸してー」

「何言ってんの?また、忘れたのかよ。」

ユタは呆れているようだ。

「またって言っても、高校に入ってからは初めてでしょ。むしろ、半年以上忘れてないんだから褒めてほしいくらいだね」

「いや、普通忘れないから。ほら、終わったらすぐ返せよ。絶対返すの忘れるなよ」

「わかった、ありがと!」

なんだかんだ言っても貸してくれるから優しいよね。

教室を出る時、女子3人組から視線を感じたような気がした。たぶん、気のせいではないんだろうけど。


「お待たせー、アイツから運動着借りてきた」

「幼なじみくんに借りるのはいいけど、あのクラスあの3人いるけど大丈夫?」

「あー、たぶんね。流石にあそこでは何もしてこないよ。この前、女子トイレでたまたま鉢合わせちゃった時はあれだけど」

「うわっ、最悪だね。なんかされた?」

「流石に物理的には何もしてこなかったけど、『おい、お前、幼なじみだからっていい気になってんじゃねえぞ』って言われた」

なんなんだろうあの3人。どうせ、アイツのことが好きなんだろうけどさ、好きなら好きって本人に言えばいいのに。意気地なしだな。

まあ、どうせ振られると思うけどね。

「うわっ、嫌な奴らだね。今のところ実害はそれほど無いようだけど大丈夫?」

ハナは心配そうに聞いてくる。

「うん、大丈夫。今までもたまにそういうことあってさ、ほら、アイツってなんかよくわからないけどモテるっぽいじゃん。アイツのこと好きなやつらがたまになんかしてくるんだよね。だからそういう時の対処法もわかってるから大丈夫。」

「なに?対処法って」

「とにかく1人にならないことだよ。行き帰りはいつもアイツいるから大丈夫だし、学校にいるあいだは、ハナがいてくれるから大丈夫!」

「そっか、わかった、極力一緒にいてあげるね」

「ありがとう!!」

ハナは優しいな。やっぱり、信頼できる友達がいるといいね。


帰り道

「そういえば、あの3人のうち1人が俺に告ってきた」

ユタには私がされたことはもう話してある。

「ふーん、で、どうしたの」

「そいつ、俺が断ったら

『なんで?あの女が好きなの?いつも迷惑ばっかかけられてるように見えるんだけど。幼なじみだからってそんなに面倒見なくていいのに。ねえ、私にしてよ。私なら迷惑かけないし、あんな女よりもずっといいって思わせるから』

みたいな感じでいわれたんだわ。だから、俺は、あんたみたいな性格悪そうに見えるやつ嫌いなんだ、だから金輪際俺とアイツには必要以上に関わるな、ってつい言っちゃったんだよな。」

「いいんじゃないかな、それくらいいわないとわかんないでしょ。」

「まあ、そうだな。…なあ、ナツ」

「ん?」

「俺、お前のこと好きだと思う。」

………。

……何この状況、告られたんだよね?

「急にどうしたの、えっと…いつから?」

「ちょっと前からかな。この前クラスのやつが、お前の幼なじみ可愛いよな的なことを言ってさ。それで、その時はなんとも思わなかったんだけど、帰ってから何かその言葉を思い出しちゃって。ナツに恋人出来たらヤダなとか思ったんだよ。もしかしからこれが恋なのかな、みたいな」

最後は少し照れたようだ。

おぉまじですか。

そんなこと言われても私には恋なんてわかんないし。

「ナツ」

「…なに」

「好きだ」

一瞬胸がドキッとした。

ユタのこんなに真剣な顔見たことがない。つい、かっこいいって思ってしまった。ユタもこんな顔するのか。私以外にも見せるのかと思うとなんか、胸がもやっとした。

「あっ…えっと、明日の朝まで待ってもらっても」

「いいよ。それじゃ明日の朝な」

「…うん」


初めて幼なじみをかっこいいと思った。

初めてドキッとした。

初めてアイツのことでもやっとした。

もしかして、これが恋なのかな……


なんだろう、変な感じがする。いつもと同じなのにいつもと違う。アイツと会うのが普通なのに会うことに緊張する。早く会いたいけど会いたくないような。

自分の気持ちを伝えるのってドキドキする。

だって初めてなんだもん、こんな気持ち。


なんとなく時計を見た。

そういえば前アイツは8:00に迎えにくるって言ってたっけ。


現在、時計は7:55を示している。


ユタが来るまで後5分

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