第12話 青木くんがあきらめたこと
◇◆◇
そういえば青木くんサッカーしてたといってたなぁと思い出して、日曜日にうちの弟のサッカーチームに呼んでみた。女子はお母さん世代しかいないから、可愛がられるかもしれないけれど、流石に既婚女性のためモーションはかけられないから、安心であろう。
部活やめちゃった記憶を思い出させてしまったら、どうしようと、道中考えたけど、その心配は杞憂に終わった。
青木くんは童心に返ったように、年下の男の子たちと楽しそうにサッカーをしている。運動神経は良いようで、身長も高く、大人びた印象の青木くんはイケメンコーチに見える。
私はというと、弟たちと戯れる青木くんをぼぉーっと眺めていた。楽しそうにボールを蹴る青木くんを見るのもまた良きかな。良きかな。
「なぁ、鈴木さんはサッカーしないの?」
「ああ、私はね。見る専なの」あいにく、今日は月に一度のものが来ており貧血気味でフラフラだ。青木くんの観戦じゃなければ、ベッドで横になっていたいくらい。
「弟くん、良い子だね」
「そう、もう何て言うか。バカだし。アホだけど。愛されキャラだよね」
青木くんは、昔を思い出したのか切なそうな顔で、仲良くつるむ弟たちを眺めている。やっぱり、サッカー部続けたかったんだろうな。
「青木くんは、サッカー辞めたくなかった?」
「うん。幼稚園の頃からやってたしね。好きだった。―――でも、サッカー辞めてなかったら、きっとモデルもやっていなかったと思うし、今みたいに美容師を志していなかったと思う」
「そっか」
物事が上手くいかなかったりすることもあるけど、それも運命なのかもしれない。自分の適性が他にあるのかもと気付けるのは悪いことではないはず。
次へのステップのための過程と考えるのは、前向きな発想といえよう。
「はーい集合。姉貴が写真撮ってくれるって」
そう。私は今日もカメラを構えて写真をとりますよー。サッカーチームの保護者さんにも現像してプレゼントする気だし、どさくさに紛れて青木くんの爽やかな勇姿も沢山撮影しました。
カシャカシャ。
サッカーチームに混ざり、ピースをする青木くんは、眩しくなるような顔で笑っていた。
◇◆◇
うちの高校の運動会は、球技大会も兼ねている。そのため、種目数も多い。
「運動会、青木くんサッカーやったら」というと「おう、そうしようかな」と普段目立ちたがらない青木くんが珍しくノリ気である。この間、サッカーチームと混ざってプレイしたのが、青木くんを前向きにしたのかもしれない。
「―――でたら、鈴木さん応援してくれるんでしょ」
「もちろん!何なら応援団員みたいな学ランきて本気で応援したいくらい」
ちなみに、件の鴨川先輩は思ったより接触してこない。
「拍子抜けした」そう青木くんもいっている通り、滞りなく運動会の計画は進んでいく。
こういう風にみんなでワイワイして、何かを計画するのは楽しいなぁ。まさに青春。
私は、3年生の先輩から、卒アル用の撮影を頼まれたので、種目は玉入れと綱引きのみ出場予定である。
本当は、足もわりと速いのだけどね。中学生の時はこれでも、陸上部だったから。
青木くんは、サッカー、バスケ、リレーに出るらしい。
どれも、すっごくカッコいいんだろうなぁ。
先日のサッカーでの様子を思い出し、なんとも言えない気持ちになる。うわぁ。青木くんのファン、つまりは恋のライバルが増えそうでちょっとなぁと思ったけど、やるからには頑張って欲しい。
私はその分、一生懸命、シャッター切りますからね!
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