無意識の「一緒に居たい」




「せーので見せよう!」

「わかった」

「「せーの」」


 今年は、青葉くんと新年を迎えた。一緒に初詣へ来たんだけど、人が多い!

 うちの近くで良かったわ。きっと、青葉くんの家の近くだと誰か高校の人に見つかっていたもの。


 新年が明けて挨拶を交わした私たちは、境内にあるおみくじを引いていた。

 ボックス型に手を入れて取るやつもいいけど、やっぱり「御神籤箱」を振って番号出す方が本格的って感じで良いよね。私が27番、青葉くんが36番を引いたんだ。


 で、端に寄って見せ合いっこ!


「あー! いいなあ!」

「……都市伝説じゃないんだ」


 せーのでお互いのおみくじを見せると、なんと青葉くんは大吉! 私はというと……。


「え? ……うわ」

「大凶って、こういう神社にないと思ってた」

「縁起悪すぎ」

「でも、書いてあることは結構良いかも」

「えー」


 大凶って、そうそうないよね!?

 良いこと書いてあったって、どうせ……。なんて思いながら、私は手元のおみくじに視線を落とす。すると、


「待ち人来る、探し物すぐ見つかる、病の心配なし、学問安心して勉学せよ……って! 大吉でいいじゃんー!」

「引っ越しはしない方がいいって書いてあるね」

「する予定ないもん」

「まあ、学生だし」

「あー、青葉くんが羨ましい! 吉がつく結果がほしいー!」


 ホント、大吉でいいじゃん! 作った人誰よ!?


 でもまあ、引いたの私だもんね。これはこれで受け入れないと。

 どれどれ、青葉くんのは……。


「……待ち人来ず、探し物すぐ見つかるが無くなる、病に気をつけよ、学問安心して勉学せよ」

「こっちが大凶で良いかも」

「これが大吉って、どういうこと?」


 内容が大凶レベルだよ!

 それを見た青葉くんは、笑いながら「勉強はちゃんとしよう」なんて言ってる。彼、こういうところが前向きで良いよね。私なら、文句言っちゃう。


「鈴木さんと真逆だね」

「ホント! どうなって…………あ」

「どうしたの?」


 私は、青葉くんのおみくじにあった「恋愛」の内容に口を閉ざす。

 だって、そこには「相手の望むことを淡々とこなせばいつか実る」って書いてあったから。


 青葉くんに、これはないよ。

 今まで辛い思いしてきたんだから、いくら神様の言葉だってダメ。


「青葉くん、私のおみくじと交換しよう」

「……いいけど、どうしたの?」

「だって、その……」


 私の恋愛のところは「運命的な出会いの後結ばれる」って書いてあるし、青葉くんにはこういう恋愛をしてほしい。

 でも、なんて言えばいいんだろう。本人が気にしてないのに、私がでしゃばるのってちょっと違う気もしてきたわ。それに、交換したって効力って言うのかな、神力? が、ないかもしれないし……。


「……やっぱり、なんでもない」


 悶々と考え事をしていた私に、青葉くんは持っているおみくじを畳みながら、


「そしたら、一緒におみくじ掛けに結んでいこうか」


 と、提案してきた。


「え?」

「本当は、おみくじを半分にして鈴木さんと交換できればいいんだけど。さすがに紙を破くのはね」

「……どういうこと?」


 言っている意味がわからない。


 だって、青葉くんのは大吉でしょう?

 私が掛けに結ぶならわかるけど、なんで青葉くんまで?


「一緒に結べば、鈴木さんの大凶と俺の大吉が混ざって2人とも小吉あたりになりそうでしょ?」


 私が考えていると、青葉くんはそう言って笑ってきた。


 こういうやつも、平均値とかって有効なのかな?

 というか、青葉くんは私が「大凶」を気にしてると思ったんだ。……気にしてるけど、今はそっちじゃない。


「……私は別にいいのに」

「鈴木さんだって、俺のことはいいんだよ」

「だって……」

「結びに行こっか」


 お互いにお互いのこと気遣ってたってことだよね。何だか、嬉しいな。

 私は、隣で笑う青葉くんを見ながらおみくじを半分に折り畳む。


 うーん。ただ結ぶのも、なんか嫌だな。せっかく引いたのに。

 ……そうだ!


「……青葉くん」

「どうしたの?」


 歩き出した彼の背中に声をかけると、すぐに振り返ってくれた。

 一緒に結ぶより、私はね……。


「おみくじ、結ばないで持っていたいな」

「……いいの? 大凶嫌なんじゃ」

「ううん。大吉のおみくじ持った青葉くんと一緒にいた方が、効力? 神力? 強そうだなって」


 だって、そうでしょ?

 神社に置いていくより、ずっと効き目ありそうじゃない?


 だから、青葉くんは好きに恋愛していいからね。


「……そうだね。じゃあ、今年も一緒に居ないと」

「一緒に居てくれる?」

「もちろん。一緒だよ」

「うん!」


 おみくじを財布へしまった私は、青葉くんの手を取り参拝の列に並ぶ。

 今年はどんな願い事をしようかな。家内安全と、健康第一と。


 そうそう。

 今年も青葉くんの笑顔がたくさん見れますように、って言うのも忘れないようにしないとね!


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