第21話 誘拐と難易度

「お姉ちゃん、湖入ってもいいかな?」

「今回は盗賊探しを優先しようか」

「そっかー。じゃあ、また遊びにこようね!」


 教えてくれたのはありがたかった。

 次の機会には、試してみよう。




「なんか、騒がしいね」

「しょたちゃん、盗賊出たって!」

「そうなの?」


 受付嬢に確認に行くと、確かに盗賊による被害が報告されて、討伐依頼が出たらしい。


「それが……盗賊が襲ったのがある貴族の馬車なのですが、そこに乗られていた一人が行方不明とのことで……」

「誘拐ですか」

「その可能性が高いと」

「そうですか……」




「どうしようか」

「あんまりよくないんだっけ~?」

「良くないというか、面倒だよね。人質にとられるとか。報酬はいいけど、誘拐された人が死んでたら依頼人と、もめるし……」

「そっかー……」

「誘拐されてる人がもう死んでるってなれば受けたいけど、今回は――」

「なんだと!!」


 シスねえが動いた。

 僕の後ろに座っていた騎士の手を掴んでいる。


「やめて」

「こちらの台詞だ! そのガキがお嬢様のことをっ!」

「やめて」


 シスねえの力に勝てないと悟ったのか、騎士の人は手を下ろす。


「くそっ!」

「申し訳ありません……」


 騎士の人と同じテーブルを囲んでいた別の騎士の人が謝罪してくる。

 止めようとしなかった時点でもう何も感じませんけど。


「実は、盗賊に我らがお仕えするお嬢様が誘拐された可能性があるのです」

「……」

「もしよろしければ……」

「お断りします」

「なっ!」


 さっきの騎士の人は顔に出やすいみたいだ。


「いくよ、シスねえ」

「りょーかい!」

「お、お待ちください……報酬なら」


 シスねえの手を引いて、宿へ戻る。

 暫くは追ってきたけれど、あの人たちは僕達を追うのが目的なのではなく、依頼を受けてくれる人間を探すことが重要だからか、すぐに追ってこなくなった。


「いいの~?」

「うん。報酬は良くなるけど、その分面倒になるから」


 仮に、僕たちが探していた盗賊と、あの人たちが同じだとすると、依頼の更新がされる可能性がある。

 ただの盗賊討伐から、人質を守りながら、という条件が追加されれば、依頼の難易度が跳ね上がる。

 盗賊が大きな集団ならなおさら。

 それなら、更新される前の、人質を考慮せず盗賊を殺すという以来の方がいい。

 報酬が多くなるからと言って、自分たちの身の危険が増していいわけではない。

 運よく守れたらそれはそれでいいし、守れなくても仕方ない。


「明日も探しに行くから、休んでね」

「しょたちゃんも~!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

腹黒ショタとあたまゆるゆるおねえさん 皮以祝 @oue475869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ