第17話 見張りと勧誘

「しょたちゃん?」

「シスねえ、そのまま走って」

「了解!」

「なっ!」


 フィリアが門の外に立っていた。

 追いかけようとして、走ってこようとして、別の聖騎士に止められていた。

 正直、同情もする。

 フィリアが悪いわけではなく、むしろ……


「しょたちゃん、こっちでいいの?」

「うん、そのまま」


 シスねえはとっくにフィリアがいたことは気が付いていたはず。

 それでも声をかけず、走ってくれているのは、僕のためで。

 に声をかけさせることなく、去らせてしまった。





 早速、買ったテントに役に立ってもらうことになる。

 川の近くにテントを張る。

 後で水浴びできるように、川に入れてと。


「しょたちゃん、持ってきたよ~!」

「ありがとう」


 木の枝などを探してきてもらっていた。

 適当に並べて、魔道具で火をつけて、肉などを焼いておく。


「しょたちゃん、とれたよ!」

「結構大きいね」


 川で魚を取っていたシスねえが、顔より大きな魚を持って戻ってくる。

 僕はシスねえみたいに泳いでる魚を掴んで捕まえることはできないので、火を見ながら、さっき取った小さなエビなどに味をつけていた。


「はい、しょたちゃん」

「ありがと。やっとく」

「お姉ちゃんはもうちょっとお魚取ってくる!」


 そういって、シスねえは川の中へ戻っていった。

 捌いておかないと。





「シスねえ、そろそろ寝て」

「りょうかーい」


 ご飯を食べ終え、シスねえはテントの中へ入っていく。

 最初の見張りは僕なので、シスねえにはその間眠って体力を回復してもらう。


 夜の森、近くにシスねえはいるけれど、一人きりのような錯覚に陥る。

 パチパチと木の枝が燃える音を聞きながら、周りを警戒する。

 虫や魔物の鳴き声は聞こえてくるは、人がいるような気配はない。

 再び火に目を落としていると、少し昔のことを思い出してしまう。

 僕と、シスねえが旅を始めたころ、そして、その理由。

 あの時……


「っ」


 足音。

 まだ離れているけれど、こちらに近づいてきている気がする。

 僕は近くに落ちていた枝を持ち、木の幹に3回たたきつける。

 それでも、歩みは止まらない。

 それどころか、速度が上がったようだ。


「ごめん、シスねえ。起きて!」

「りょうかーい」


 すぐにテントから出てくる。


「……一人だけ?」

「そうだね」


 なら、あの兵士だろう。


「とびかかってこないなら、すこし待って」

「りょうかい」


 構えながら、しばらく待つと、案の定やってきた。


「ようやく見つけた」

「何の用だ」

「勧誘に決まっているだろう?」


 ……


「断る」

「おいおい、少しくらい話を」

「誘拐犯の言葉を信じるとでも」

「誘拐犯とは失礼だな。俺たちは、そんなんじゃねえ」

「……」

「俺たちは、正式な許可を得た奴隷商だ。もちろん、あの国じゃねえがな」

「その正式な許可を得た奴隷商が、誘拐をするのか」

「商品不足だからな。これも上手な商売の仕方ってやつだよ」

「……何を言われても、手を取る気はない」

「そうかい」


 ポケットから、魔道具を取り出す。

 小さく光が灯っている。


「見ての通り録音してます」

「だろうな。まあ、ここで終わりだ」


 兵士が武器を構えた。

 

 

 

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