第14話 雨と悪影響

「買います!」

「……シスねえ?」

「だって、テントについてるんだよ~? 便利でしょ?」

「まだ詳しい説明してもらってないでしょ」

「焦るなって、嬢ちゃん。碌な説明もせずに売ったとなっちゃ、こっちも商売人として失格だからな。それを聞き終わってから改めて考えてくれ」

「はい!」




「いい買い物だったね~」

「そうだね」


 出来る限りの確認はした。

 確認した範囲では、かなり破格の値段だったように思える。

 水浴び用の水は、パイプのようなものを川などに入れることで、あとは自動で吸い上げてくれるらしい。

 やはり、こことは技術の差があるのだろうか。


「シスねえ、ちょっとハグしてくれる?」

「りょうかーい」


 身長差があるので、体が浮く。

 ハグをすれば、必然的に顔が隣にくる。

 そのまま耳に触れるくらいに口を近づける。


「(昨日の兵士さん、近くにいる?)」

「……」


 一瞬の間をおいて。


「(いないよ?)」

「(じゃあ、今日は別の宿に泊まろうか)」

「(そうなの?)」

「(シスねえはしばらく近くにいないか確認し続けて)」

「(りょうかーい)」

「(じゃあ、下ろして)」

「……」


 シスねえは一度軽く力を込めた後、すぐに下ろしてくれた。


「いこー!」

「うん」




「わ、前よりちょっといいところだね!」

「そうだね」


 見た感じはベッドが高そう、といった感想しかないけど。

 食事もついてるだけあって、前回より値段は高いけど、念には念を入れて。


「しょたちゃん、明日はどうするの~?」

「明日は、そろそろ依頼を受けようか。あればだけど。なければ、休み」

「は~い」




「あってよかったね~」

「あいにくの雨だけどね……」


 もちろん、雨なら雨なりの準備をしてあるので問題はないし、音が聞こえずらいので、探す側が圧倒的に有利という利点もある。


「見つけられそう?」

「……ううん、今のところわかんない」

「もしかしたらもう逃げたかな」


 情報を得て、拠点や活動場所を移した可能性がある。

 聖騎士団が来ることなんて滅多にないので、ここまでの影響があるとは思っていなかった。

 一切いないなんてことになったら、僕達も移動しなくてはならない。


「ちっちゃい魔物倒してこよっか~?」

「帰り道にあったらね」

「もう帰るの?」

「そうなるかも。しばらく探して、本当にいなそうだったらしかたない」

「そっか~」





 結局、盗賊を見つけることはできなかった。


「見つからなかったね~」

「拠点だったみたいなところは見つけられたけど……そのまま放置されてたから、もう放棄されたんだろうね。あんな適当にしてあるなら、もう戻っても来なさそうだし……」

「明日来るみたいだよ~」

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