第12話 買い物と聖騎士団
「協力に感謝する」
助けられて、詰所に連れてこられて第一声がそれだった。
「はぁ」
別に協力したわけでもないし、むしろ助けられた側なんですが。
「報酬は……ギルドを通すのだったな」
「報酬」
「む、もしや依頼を受けていたのではないのか」
「依頼……もしかして、連続女児誘拐の?」
「ああ。もしかして私の勘違いだろうか」
「そうですね。その依頼は受けていないので」
「なら、この場で報酬を渡しておこう。依頼は取り消せばいいしな」
「しょたちゃん、ラッキーだったね」
「うん」
まさか、あんなのがそうだったとは。
軽く依頼を見ただけだったけれど、十人近くは……
ん?
「どうしたの?」
「何か配ってる」
「号外! 号外だぞー!!」
胸に公認バッジと、値段がかかれた板を付けている男が叫んでいる。
「一つください」
「お、まいどありー!」
……
「どうしたの~?」
「協会から聖騎士団が派遣されるって」
「聖騎士団?」
「ほら、タブケヤ国の。でも、いくらなんでも速すぎる……」
事前に情報を手に入れていたのだろうか。
「何か問題なの~?」
「……いや、なんにも。ここにとどまっている間はちょっとは治安が良くなるくらい?」
「そっか~」
最も力を持っているといっても過言ではないフィアリ教。
とどまっている間、犯罪者や盗賊の取り締まりを行うだろうが、別に盗賊依頼を禁止していたりもしない。
が、なんであれ宗教に関わるとろくなことがない。
そのことを僕たちは身をもって知っている。
「今日は兵士さん多いね~」
「気合入ってるんじゃない? ほら、昨日号外で聖騎士団が来るって言うから。私達はしっかり働いてましたよ、って見栄をはろうとしてるのかも」
「お仕事増えて大変だね~」
「食料品とか値上がりするかもしれないから、今のうちに買いだめておこう」
「りょうかーい!」
そういえば、昨日、おんなじ風に……
肩に感触。
振り返ると、昨日の兵士。
「よお、少年。昨日ぶりだな」
「こんにちは」
「騒がしいよなぁ」
「やっぱり聖騎士団が来るからですか?」
「だろうな。ほら、聖騎士様が来るっつうと、はぐれもん達も移動するからな。その前の買いだめを捕まえちまおうってな。少年は?」
「僕達も買いだめですよ。聖騎士向けに物価が上がるかもしれないので」
「ちげえねぇな。俺も終わったら買っちまうかな」
「それがよさそうですね」
「……なぁ」
「はい?」
「もしかして、盗賊狩りってお前たちのことか?」
「はい?」
「若い男女が盗賊討伐を専門にしてるって俺たちの間で噂になってんだよ」
「なら、そうかもしれません。そればっかりなので」
「はぁ……見かけによらんもんだなぁ」
そんなにじろじろ見られても。
「僕たちが何か問題ですか?」
「ん? いや、それならいい話があるぞ」
「いい話ですか?」
「いや、ここで渡しても困るな。ギルドに討伐依頼が増えるはずだ」
「そうなんですか?」
「ああ。兵士団が依頼を出して盗賊を減らしたっていうのも評価されるからな」
「なるほど。ありがとうございます、わざわざ」
「いや、見回り中にたまたま見かけただけだ。そのうちギルドにいる連中ならすぐ知る情報だしな」
「……そうですか」
「ああ。っと、戻ってきたみたいだぞ」
「しょたちゃんに、昨日の兵士さん」
「ああ。じゃあ、俺はそろそろ行く。気をつけてな」
「ありがとうございました」
肩越しに手を振りながら、大通りに歩いていった。
「話してたの?」
壁から背を離す。
「……帰るよ、シスねえ」
「うん!」
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