第10話 報酬と噂話
「最近、新たな国王が即位されたのはご存じですか?」
「いえ、知りませんでした。そうなのですか?」
「はい。先王が亡くなり、その王子が即位しました。その男は、税の引き上げを行う、と通達が撒かれたため、私達商人は別の国に移そうとしているのです」
「税が引き上げられるとはいえ、それほど急いで出ていくのですか?」
「それがですな……」
目の前の男は、本当に困ったといったような顔をした。
「なんでも、国内の保護政策と銘打って、商人を逃がさぬようにしようとするつもりなそうです」
「保護政策?」
「はい。税は引き上げるが、別の国に行くことなく、かの国で商いを続けよと。なんとも勝手なことです」
そんなことになっているのか。
「ある程度助成金も出すといっておりましたが、たかが知れております。施行前に逃げ出してきたのです」
「それは、すばやい判断ですね」
「こんななりでも商人ですから」
タブケヤ国は候補から外した方がいいかもしれない。
まだこの国を離れる気はないが、いざというときのために情報は集めておこう。
「謝礼ですが、今持ち合わせがあまりありませんので……これを」
「ありがとうございます」
一箱いっぱいに詰まった果物を置いた。
「それから、冒険者でしたね。これを」
渡されたのは、皮だ。
でも、あまり見たことがない。
「遠国に生息している魔物の皮らしいのですが、すみません。種類までは存じ上げず……」
「いえ、ありがとうございます」
種類も知らないということは、特に購入したというわけでもなさそうだし、どのように手に入れたのかはわからない。
でも、どこかで役に立つかもしれないので、受け取っておく。
「盗賊はこちらで処理しても?」
「ええ。私は何もしておりませんから」
「ありがとうございます」
気のいいひとでよかった。
もし、もめるようなら……
「しょたちゃん、これ食べていい~?」
「シスねえ……さっきも食べたでしょ?」
「動いたらお腹減ったもん」
「はぁ……夕飯もあるんだから、一つだけだよ」
「わーい」
ダノフルも笑っている。
シスねえはこういうところで警戒心が薄い。
そのぶん、人に好かれる。
僕にはまねできない。
「この道ということは、目的地は同じでしょうし、護衛を務めましょうか」
「……すみません、お言葉に甘えさせていただいても?」
「はい。そこまでの距離でもありませんので」
「ありがとうございます」
そのあとは何事もなく門をくぐり、町へと戻ってきた。
ダノフルと別れた後、僕たちはギルドへ向かった。
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