第7話 成果と葛藤

「シスねえ!」

「りょーかい!」


 逃げようとした盗賊の一人をシスねえが追っていく。すぐに木々に阻まれて、こちらからは見えなくなってしまう。

 シスねえが持ってくるまでの間に少しでも回収を進めておこう。

 昔は盗賊の手首を切り取ってギルドに持って行かなくてはならなかったらしい。

 今は倒してしまえばギルドカードが自動で記録してくれるんだから楽だ。

 この人全然金持ってない……





「しょたちゃーん」

「おかえりシスねえ」

「はい、持ってきたよー」


 シスねえからお金と、武器などを受け取った。


「なんか、ネックレスもあったの!」

「へぇ」


 緑色の石がついている。


「売れるといいねー!」

「そうだね」


 さあ、今日は帰ろう。





「おつかれさま、しょたちゃん!」

「シスねえもね」


 ギルドに寄った後、宿屋に戻ってきた。


「今日はどうだったのー?」

「全然だね……はずれ」

「そっかぁ。またがんばろ!」

「そうだね」

「ん~! しょたちゃ~ん!」


 シスねえは僕を持ち上げると、自分の膝の上にのせた。そのまま頭に頬ずりをしてくる。シスねえの真っ白の髪が垂れてきてくすぐったい。


「シスねえ、ちょっとくるしい」

「あ、ごめんねしょたちゃん」

「いいけど」


 手の力が緩まる。シスねえは力が強いのでたまにそういうことがある。


「今日は予想より早く終わっちゃったけど、どうしようか?」

「このまま、寝ちゃお? だめ?」

「そうだね。体を休めるのもいいかも」


 シスねえは僕を回転させると向かい合う形にする。

 そのまま座っていたベッドに倒れこんだ。


「おやすみ、しょたちゃん」

「おやすみ、シスねえ」


 二人で抱き合ったまま、眠りにつく。

 シスねえは柔らかくて、いつも通りすぐに意識は落ちていった。






「盗賊討伐の依頼、ですか……」

「はい、お願いします」

「……」


 ああ、この目は何度も見たことがある。

 きっと、この子は新人なんだろう。

 普通の、ある程度経験を積んだ人ならば、心の中でどう思おうが表情には出さずに淡々と処理してくれるはずだ。


「あの、失礼ですけど」


 こういう人の言う言葉は簡単に想像できる。


「盗賊討伐よりも、魔物討伐の方がよろしいのではないでしょうか? まだ、そこまで……」

「私がいるから大丈夫~」

「……盗賊討伐に二人というのは……」

「冒険者は自己責任、そうですよね?」

「……はい」

「今までも何度も受けているので大丈夫です」

「……わかりました」


 この人が引き留めるせいで、周りの人からの視線も集まってしまっている。

 盗賊討伐依頼という、避ける人の多い依頼を受けている人間はどんな奴なのかと、観察するような目つきだ。


「いこ? ショタちゃん」

「そうだね、シスねえ」


 視線から逃げるように、僕たちはギルドを出た。

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