第6話 お散歩と癒し
「~♪」
鼻歌を歌いながら、つないだ手を大きく振るシスねえはまるでピクニックにでも来たかのように楽しそうだ。
「いないかな~?」
「そうだね」
何人かとすれ違ったけど、盗賊はもちろん、被害にあった人もいなさそうだった。
「ひっこしちゃったのかな~?」
「今日は休みなのかもね」
「じゃあ、おさんぽだね」
今日は天気もいいので日差しが強い。シスねえは僕に帽子をかぶせると、自分も帽子をかぶった。
「あっ、あそこの丘で休もっか~」
「そうだね」
丘の上に一本大きな木が生えている。その下は日陰になっていて涼しそうだ。
「いこっ」
「そんなに急がなくていいから……」
ちゃんと踏み固められた道もあるのでそこまで疲れずに上ることができた。
木の下には家族連れだったり、休憩中の冒険者だったりと、結構の人数が涼んでいた。僕たちも空いているスペースに腰を下ろす。
「つかれたね」
「膝枕するね~」
ころん、と横に倒され、頭に柔らかい感触が伝わってくる。
「~♪」
目を閉じると、葉の揺れる音や鳥の鳴き声など、気にしていなかった音が聞こえてくる。そんな中、僕の意識はおちていった。
声が聞こえてきた。
「おにーちゃん、つかれてるの?」
「うん。しょたちゃんはちょっとおつかれなんだ~」
「そっか~」
何か小さなものが頭に触れた。目を開けると小さな女の子が僕の頭を撫でていた。
「おきちゃった……」
「おはよう、しょたちゃん」
「うん。こんにちは」
「あっ、こんにちは!」
小さな女の子の声が響いた。寝起きには少し辛いけど、そんなことは顔には出さない。
「にーなはにーなっていうの! おにーちゃんは?」
「僕はショタだよ」
「しょたちゃん?」
「おねえちゃんとおそろいだね~」
「おねーちゃんはなんていうの?」
「おねえちゃんはシスだよ~」
「しすちゃん!」
シスねえに抱き着くニーナちゃんを見ていると、一組の男女がこちらを見ているのに気づいた。視線を向けると微笑みながら会釈してくる。ニーナちゃんの両親だろう。
「こんにちはー」
「こんにちは、いい天気ですね」
「そうですねー、ニーナがどうしても行きたいって聞かなくって」
手を口に当てて笑うニーナちゃんの母親はかなり若く見える。
「よく来られるんですか?」
「そうですね、私たちの都合があったときはニーナが行きたがって」
父親の方もニーナちゃんの方を見て目元が緩んでいる。
「お二人はよく来られるんですか?」
「いえ、僕たちは最近この町に来まして」
「あら、冒険者の方でしたか」
「はい」
「おねーちゃんぼーけんしゃなの?」
「そうだよ~」
「すごーい!」
「最近物騒ですし、それで来てくださったんですか?」
「そうだったんですか?」
「はい……けっこう怪我した方もいらっしゃるそうで」
「たしか、ハチ型と言っていたよな」
「そうでしたか」
ハチ型の魔物か。近いうちに、はちみつが安くなるかな……
「ニーナ、そろそろかえりますよ」
「はーい、お母さん!」
母親に抱きつくニーナちゃんとほぼ同時に後ろから抱き着かれる。
「しょたちゃん」
「シスねえ、ニーナちゃんにあそんでもらった?」
「うん!」
「はは、仲のよろしい姉弟ですな」
「ばいばーい、しすちゃん!」
「ありがとうございました」
3人で並んで去っていった。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだね~」
おろしていた荷物を持ち、立ち上がった。
「おねえちゃん、しょたちゃんの『おねえちゃん』じゃないのにね~」
「大したことじゃないでしょ。ほら、帰るよ」
「も~」
頬を膨らますシスねえは、抗議のつもりか僕の腕に抱き着いて体重をかけてくる。
「つぶれちゃうよ」
「おねえちゃんにイジワルばっかりいって!」
シスねえは僕の血のつながった姉ではない。義理の姉というわけでもない。
シスねえは、僕の
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