第3話 新しい街と宿
「ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。またのご利用をお待ちしております」
御者の人に礼を言って、その場を後にする。宿を探さないと。
「しょたちゃん」
「なに」
「おなかすいたよ~……」
「……そうだね。お腹満たしてから宿を探そう」
「うん! あ~いいにおい~」
「シスねえ待って」
屋台から漂ってくる焼けた肉の匂いにふらふらと近づいて行ってしまうシスねえをとめる。
「え~、食べないの~?」
「シスねえ、周り見ろっていっつも言ってるでしょ? あの屋台並んでる人いるんだよ?」
「あ、ほんとだ~」
「あの屋台でいいならちゃんと並ばないと」
「そうだね! はやくいこ?」
手を引かれつつ、列に並んだ。売っているものが串焼きということもあって、すぐに順番が回ってきた。
「いらっしゃい! 決まってるかい?」
「オークのももにくで!」
「姉ちゃん、味は?」
「えー、一種類ずつちょうだい!」
「はいよ! 兄ちゃんはどうする?」
「僕はハーブと塩一つずつで」
「はいよ!」
代金を渡し、串焼きを受け取る。
「うちの新しい味を一つずつサービスしておいたから、気に入ったらまた来てくれよな!」
「ありがとうございます」
「いらっしゃい、奥さん、決まってるかい?」
少し離れ、歩きながら串焼きを手に取った。
「サービスしてもらっちゃったね」
「そうだね。せっかくだしそれから食べようか」
「なにあじだろー?」
二人で一口かじる。
「……何味か分からないけど美味しいね」
「う~ん、あっ! しょたちゃんしょたちゃん、これちーずじゃない?」
「ちーず?」
「ほら、前に旅の人から買ったの!」
「あー、たしかに言われてみれば」
前に行商人から珍しい食材といわれてシスねえが興味を持ったので買ったことがあった。家畜の乳を使ってつくると言っていた。
「えー、おいしいねー! もっと買えばよかったー」
「ここに依頼がたくさんあるといいね」
「その分この町にいられるもんね」
掲示板で宿屋やギルドの位置を確認して、その方向に向かう。その道に何があるかなど確認しながら歩くと、ここは武具屋が多く存在していることが分かった。
「結構この町にいられるかもね」
「ほんと? やったー!」
抱き着いてくるシスねえを引き剥がしつつ、歩き続けていると、宿屋につく。近くの宿屋と比べて、結局一つ目に着いた宿屋に泊まることに決めた。
そのあとは借りた部屋に荷物を置き、ギルドの依頼板に盗賊討伐依頼があることを確認し、今日は休むことにした。
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