タイトル『時の魔術師カルアエラの人生録』

あらすじ:

魔術―――――それは世の理を〝再現〟する神秘の技法。そして、〝再現した〟世の理を〝改造〟する者を、人は【魔術師】と呼んだ。

時は繁栄歴2997年―――――それは、人が国家を築いてから、長きに渡り繁栄する事が出来た、歴史の証明であり、魑魅魍魎の跋扈するイスパニア大陸で人類が生き残れた年数でもある。

人という存在は、須らく弱者であった。純然たる事実として、種として最弱の存在は等しく人類であり、その上に立つ存在は何時だって【魔物】と呼ばれる怪物であった。

その生命、その種、その起源――――――全てが【魔術】に起因する生物として、その怪物は【魔物】と呼ばれている。生まれた時から種族固有の異能とも呼べる【魔術】を有しており、能力として魔術を用いる怪物である彼らは、イスパニア大陸にて最上位の種であった。その力は強大でありながら、同時に個体としては人類より弱者である【魔物】もいる。だが、【魔物】はより上位の存在になるほど、神に近しい能力を有する。歴史の中で語られる、数多の神、神獣と呼ばれる生命は、幻想の存在などではなく、歴とした【魔物】という生物であったとも言われ、そのテーマは学者間では長年の研究対象となっているのだ。

そも、人類は元々このイスパニア大陸の原住民ではない。彼ら人類は、大洪水で海底に沈んだ大陸から移住してきた、外界からの来訪者なのである。

時を遡れば、約5000年前から、人類はイスパニア大陸への定住を目指して来た。しかし、【魔物】という種として強者の存在が立ちはだかり、人類の祖先は何度も挑戦してきた。その果てに、彼らは【魔物】の血肉を喰らう事で、その身に魔力を宿し、人にも使える異能を――――即ち【魔術】を開発した。

人にとって最大の敵にして最大の脅威とは、即ち〝世界〟。自然という存在だ。世の理たる自然は【魔物】にとっても脅威だ。だからこそ、人類の祖先は世の理を〝再現〟する異能を……人類の唯一の爪であり牙〝知恵〟を活かして、【術式】という異能を制御する武器を編み出した。

繁栄歴初期の以前、前歴1095年………人類は【魔術】という新たな爪と牙を手に入れた。

それから長年の改良、開発を進めていく事で、現在の【魔術】の基盤である【元素式系統魔術】が編み出されたのである。

自然現象である【火】【水】【風】【土】……などの現象的魔術と、【燃焼】【寒冷】【空気】【枯渇】……などの概念的魔術の二つの系統が一般的な【魔術】とされる。

しかし、珍しいものでは発動する【魔術】の現象または概念によって変わる、魔力の色に着目した【赤】【青】【黄】【緑】………などの色彩的魔術などの基本系統から外れた魔術も存在する。

現代では物質を生成し、加工する錬成的魔術……通称【錬金術】の研究が進められ、【魔術】を兵器的な認識から生活に密接に関わる技術へと変えていく運動も行われている。

イスパニア大陸は、一つの大陸に四つの島、一つの諸島で構成されている。その中でも、人類圏は大陸の南西に築かれている。

人類圏は、主に三つの都市国家により運営されている。

一つ目は山脈の国【技術都市ドルフ】、手先が器用で鍛冶が得意な【ドワーフ民族】が人口の多数を占めていて、その名の通り人類圏では最高の技術力を有している。

二つ目は草原の国【産業都市ライカン】、農業と放牧に長け、獣化という特殊な異能を持つ【アニムス民族】が多数を占めていて、人類圏では最多の生産力を誇る。

三つ目は大海の国【武装都市アトラス】、独自の魔力運用技法を持ち、人類の退路を確保している【ドラコ民族】が半数を占めていて、人類圏では最大の兵力を持つ。

この三つの都市が各径路の【魔物】進入地を守護しており、この三つの国は都市国家であると同時に、人類を庇護する要塞なのだ。

その三つの都市の中心にあるのが、人類の祖先【ノア民族】が作り上げた巨大移動都市【アトランティス】の上に存在する、次世代の魔術師を育て上げる、神秘の学び舎。

【学術都市ノーチラス】である。


これは、中立にして中庸、混沌なる英雄と呼ばれた一人の魔術師。【時の星者】の異名も持つ時の魔術師カルアエラの人生を記した物語である。



〈主人公〉

名前:ユーリィ・ディン・カルアエラ

種族:人間【ハルパー民族】

性別:男性 年齢:12歳(一章〝入学編〟時)


魔術因子:【時】 魔術回路:【鉄(星)】


所属:【学術都市ノーチラス】第一学年:基礎魔術科


特徴:白銀の髪に赤紫の瞳の、幼くも美しさを宿した少年。12歳という若さで既に理知的な顔立ちをしている。だが、年相応の可愛らしい一面も持っている。

白を基調に青で彩られたローブに似た学生服を着ており、胸元に第一学年を示す、銀色の雛のブローチを付けている。


概要:世界の全てを見通すと謳われた【時の賢者】魔術師クロスノードの末裔たる【ハルパー民族】の少年。【ハルパー民族】に見られる銀色の髪と紫の混じった瞳を持って生まれた少年で、将来を期待された魔術師の卵である。

カルアエラの家名は12歳の頃に送られた魔術師としての〝名〟で、【学術都市ノーチラス】に入学する事の証明でもある。

【武装都市アトラス】の出身で、中央に近い戦いとは最も離れた地域で育てられた。

【ハルパー民族】によく見られる【時】の魔術因子を有しており、通常の【元素式系統魔術】を扱うには不向きとされている。だが、それは独自の解釈により克服していて、【時】の現象であり概念〝加速〟〝遅延〟を用いて、疑似的に【火】などの現象系魔術を行使できる。

12歳というには破格の魔術回路を有しており、これにより行使には大量の魔力が必要とされる【時】の魔術の弱点を失くしている。

魔術を学ぶ事に貪欲で、常に高みを目指して努力している。しかし、自身の尺度で判断した相手には手加減をしてしまう悪癖がある。これは幼さ故の慢心ではなく、過去の経験からの悪癖。

将来の夢は【英雄】。本気で魔術師として、人間としての到達点を目指している。

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