タイトル『re:start』
━━平凡な人生は、非凡な人生に変わる━━
━━それは正に、彼にとっての人生の再出発だった━━
〝始まりは、一冊の本だった〟
単なる都市伝説と語られた【神の本】の話。
夢の中で、十字の影のある時計塔の下に一冊の本が落ちている。
その本を拾い、中の内容を読むと異能の力が手に入るという、なんとも馬鹿げた都市伝説だ。
柊谷幹也(ヒイラギ・ミキヤ)は、その都市伝説を知ってはいたが信じていない大多数の一人でしかなかった。
ある時、彼はその夢を見た。しかし、異能の力を手に入れた訳ではなかった。
所詮、なんの根拠も無い都市伝説。彼は【神の本】という都市伝説が嘘であったと、勝手に納得した。
それは嘘ではなかったと、彼はその日の夜に思い知る事となる。
同じように夢を見て【神の本】により異能の力を手に入れた男に殺されかける事で。
生きたいという願いと、この男を撃退したいという願いが重なって、彼は異能の力を手に入れた。
これは、異能の力を手に入れてしまった事により、異能者同士の争いに巻き込まれてしまった、不幸な少年が送る非日常の物語である。
※※※
【神の本】によって異能者となった者達の目的、それは【栞】を手に入れる事だ。
【栞】─────それは【神の本】よりも重要視されるものであり、異能者が異能者となって以降、最も渇望するものだ。
異能者は異能の力を手に入れた事で、夢を叶えられるという確信と自信を同時に手に入れた。
しかし、例え異能であっても叶えられない事はある。
【栞】は異能者が異能を手に入れた事以外に見た夢を叶えられる可能性を秘めている。
【栞】によって叶えられない『何か』を叶えた者は、実際にいる。
その異能者がどうやって【栞】を手に入れたのか。
それは───────異能者を異能によって打倒し、異能者が持つ【神の本】の欠片を収集する事。
それが【栞】を手に入れた異能者が明かした、【栞】を手に入れる方法だった。
それまで利益か喧嘩か、腕試しの試合以外で異能者が争う事は無かった。しかし【栞】を手に入れる方法が明かされた事で、現在の異能者同士の抗争は生まれた。
全ては【栞】を手に入れる為。
この方法の達の悪い所は、打倒と言っても別に異能者を殺す必要が無い事だ。
必要なのは異能者がお互いに【神の本】を賭けると宣言する事にある。
要は【神の本】を賭けた戦いに勝利すればいいのだから。
だが、殺した場合と殺さない場合、得られる欠片の大きさは殺した方が割合が高いのは、変えられようのない事実でもある。
現在、異能者の間で交わされるブラックリストのような危険人物の情報を記したファイルに載っている異能者の一人は、相手の異能者を数千人殺す事で【栞】を手に入れた男だ。
ただ、その男が【栞】を手に入れたかったからではなく、その方が面白いからという理由だが。
(その男は【栞】を手に入れた後に【椎名怪物園】という異能者の勢力のボスであり【怪物園長】を名乗っている。)
何であれ、数千人単位で異能者を殺さなくても、数万人か数十万人規模で異能者同士の抗争で勝てば【栞】が手に入るのは明白なのだ。
故に、二度とその男のような事を起こさない為に、先人の異能者は【栞】を手に入れる為の異能者の勢力争いにルールを設けた。
一つ、【神の本】を賭けた戦いは、異能者の勢力同士の会合により、予め決められた人数で行う事。
一つ、【神の本】を賭けた戦いを行う場合、異能者独自のネットワークに布告する事。
一つ、【神の本】を賭けた戦いに死者が出た場合、殺人を犯してしまった異能者の同勢力が別途賠償する事。
一つ、【神の本】を賭けた戦いで、故意に異能者の殺人を行った場合、行った異能者の殺人が事故でない場合はその異能者のみ殺される事を許可する事。
一つ、【神の本】を賭けた戦いが終了した時、異能者独自のネットワークに必ず報告する事。
一つ、【神の本】を賭けた戦いには、第三者の勢力による監視者を用意する事。
このルールを破る者がいた場合、その異能者は異能者独自のネットワークにより指名手配の扱いをされ、発見もしくは情報が上げられ次第、即座に処刑する事が、最後のルールとして決められた。
以来、このルールを基本とした秩序のある【栞】を手に入れる為の戦いは、異能者達の新たな日常として加わったのである。
〈登場人物〉
名前:柊谷幹也(ヒイラギ・ミキヤ)
性別:男性 年齢:18歳
特徴:癖毛の目立つ茶髪の少年。整った顔立ちをしているが、アイドルほどでは無い。友人曰く、顔立ちは中の上か上の下。
概要:本作の主人公。
高校三年の少年。平凡な暮らしを望んでいるが、非日常に憧れを抱いている。
やるべき時にはやれる、度胸のある性格だが、少しばかり他力本願な面が目立つ。
初の争いで異能者を殺した経験から嘔吐するくらいには常識的な感性の持ち主。
【神の本】により手に入れた異能は【異界者召喚】。
無機物か生物問わず、知性と理性を持った存在を召喚して、何らかの対価を元に使役する異能。
基本的に呼び出した異界の存在は送還されるが、中には幹也に使役されたまま、その場に残る者もいる。
あまりにも強大な存在は召喚するだけでも大きく体力と精神力を消耗し、対価も重い場合が多い。
無理矢理、自分の生命力を消費して召喚すれば対価も必要とせずに使役できるが、寿命を削る行為である為、文字通りの禁じ手である。
暫くの間、異能者という事を隠していたが、夜の異能者の奇襲に応戦した時に、偶然その場に居合わせたクラスメイトの凍堂三月(トウドウ・ミツキ)に正体がバれて、異能者である事を隠蔽する事を条件に彼女の勢力【八咫烏】に加入する事を半ば脅迫されて【八咫烏】の一員となった。
名前:葛原灯夜(カズハラ・トウヤ)
性別:男性 年齢:18歳
特徴:白髪赤目のアルビノの少年。中性的な整った顔立ちをしている。160cmと小柄な身長と常に無表情な所から兎のような印象を抱かせる。
概要:主人公の友人。
高校三年の少年。変わらない日々に居心地の好さを感じており、逆に非日常の日々を楽しんでもいる。
どんな状況でも冷静に対処できる能力を持っている。また平時であろうと急激な状況だろうと全く問題なく行動できる。生きる為に異能者同士の争いに参加しており、人殺しも当然経験済み。
敵対者には容赦しない、拷問も平然と行える精神的な強さがずば抜けている。
【神の本】により手に入れた異能は【黒獅子】。
重力を操作する黒獅子を召喚し使役する異能。【異界者召喚】と同系統だが全く違い、灯夜自身を強化する事に特化している。黒獅子と同調する事で超人的な身体能力を得る事ができ、同調率を上げれば重力操作も可能となる。また、同調率を上げると肉体が黒獅子に近づくという特徴がある。
五年前から異能者であり、用心棒として異能者の勢力同士の争いに参加する雇われとして働いていた。
全身を覆う羽毛つき黒コート、猫を模した仮面をした【黒猫】という異名で雇われをしている。
幹也には隠していたが、影では幹也の事を助力していた。幹也が異能者の勢力の一つ【八咫烏】に入って初めての異能者の勢力争いに参加した時、【八咫烏】に雇われた時に初めて正体を明かした。
幹也の能力を初めて知った時、幹也の能力が異能者の中でも異質であり、【栞】を手に入れた異能者と同等の脅威であると感じた。
名前:凍堂三月(トウドウ・ミツキ)
性別:女性 年齢:18歳
特徴:青みがかった長い黒髪の少女。学年でも一、二を争う美形の顔立ちをしている。胸は平均より少し大きい程度。
概要:主人公の上司?または友人。
高校三年の少女。容姿端麗、器量良しの幹也の通う学校でも有名な学校のアイドル的存在。
見た目も相まって清楚な印象を抱かせる少女だったが、その正体は異能者を束ねる一勢力のボス。とある目的の為に他勢力の異能者と、【栞】をかけて争っている。
目的の為ならば手段は選ばず、どんな犯罪行為だろうと合法として躊躇わずに行動する。
他人に対して完全に心は開かないが、仲間に対しては信頼している仲間想いの優しい女の子。
しかし図太い。かなり図太い。
【神の本】により手に入れた異能は【凍鬼姫】。
物体を操る異能に属する、水分の状態変化や念動により操作する異能。体内の血液の流れを速くする事で肉体能力の向上、無から水や氷を生み出す超常的な力も持ってる万能の異能だが、長時間使用すると精神が鬼に近付いて凶暴になるリスクも孕んでいる。
異能者の勢力の一つ【八咫烏】を率いるリーダーとして五年前から異能者として活動していた。
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