第7話 大森林の回想
フィレイアの回想による、幾日か前の話だ。
セーレン大森林、別名、真樹の大森林という。その合間。両端を森に挟まれた街道を走る馬車あった。
馬車に乗るのは、ジードラス帝国の皇太子アイグレード・フィアライト・ラ・グロリスブルク=シャーディング、そして、第二皇女エリューティア。
ジーマ・イナス帝国は、世界に7人いる神の光の加護をもつ七彩光が一人、女帝ヘスペーリス・ブライト・ラ・グロリスブルク=シャーディングを頂点とする列強国が一つである。
フィレイア・テリア・ド・ブラターリアはその日、護衛の任に就いていた。護衛といっても、兼任である。彼女自身もまた、要人の一人、ブラターリア辺境伯令嬢である。
ブラターリア県は、帝国とさらに魔王バール領と隣接し、アレス聖光国にとって主権と境界の維持のための重要な地域である。
そのためのブラターリア辺境伯であり、その隣国の帝国との親睦は需要なものだ、そういったその他諸々の理由もあって、護衛にフィレイアが選任された。
皇太子一行の馬車は、聖光庁、聖王との政治的公務を終え、帰還する途中であった。
ブラターリアからの護衛は、フィレイアの他は、部下のノイエ・フェンシアが就いた。
当然、帝国からも二十人近い護衛が就いているので、二人はそこに加わる形となる。
王都から、辺境伯領都までは、大きな問題もなく順調だった。
「ねぇ、フィレイア様、ここは良いところですわね」
向かいで座るエリューティアが話しかける、旅の間ずっと黙っている訳にもいかないし、気を利かせてのこともあるだろう。ずっと旅に同行するのも、交流を深める目的もある話をしたほうがよい。
現在地は、私の家の自領である。
「有難うございます。農村と森と兵舎しかないですけど」
「そうですか?私の国は、大体、雲でおおわれている日が多く、冬が長くては、雪ばかりでとても寒くて凍えてしまいますのよ」
「それは、言い過ぎでは?帝国でも、暖かい所は、あると聞いていますし、雪の積もった景色は、でまるで、銀の世界ようで美しいと聞いています」
「銀ですか。ふふふ、とてもうれしいですわ。ですが、貴方の髪以上に美しいものは無いと思いますのよ?」
「エリューティア殿下は、私を口説きとしたいのですか?」
「ふふふ、そのつもりですのよ。私といいパートナーになることだとおもいませんこと?」
え?ちょっと何をおっしゃるんですか、この皇女殿下は。
「冗談ですよ?でもそっちの席、貴方の隣へ移ってもいいかしら?」
何故なのですか!
「もっと近くで見てみたいのですわ」
エリューティアは、問答無用で私の隣へ移動してくると、私の髪に触れる。
エリューティアの美しい金髪が鼻を撫でると、いい匂いがしてくすぐったい。
「近くで触ってみれば、やっぱり美しいですわね」
「ちょっと、やめてください」
エリューティアは、髪を撫で続け、フィレイアは、それに抵抗できずにいた。
相手は、帝国の皇女であり邪険に扱うこともできず、口では何とか振り絞って、やめてください、という事はできたが、なすがままとなった。
エリューティアが身体を寄せてきて、髪を撫でてくるので、その立派な双丘が腕に当たり、その重量を無理やり感じさせてくる。フィレイアも大きな方だが、それよりも断然に大きい。
さらにどんどんと身体を、密着させながら髪を撫でようとしてくるので、さらにその立派な胸の高峰が押し付けられる。
「髪もすばらしいのですが、こっちも素晴らしいのですわね」
髪に添えられた手は、下へ降りてくると、私の胸元へ行き、そして、遂には、私の胸をまさぐり始めた。
「え?ちょっと、やめ…くだ…さい」
「オホン、おい、エリューティア、俺の前でそういうことは止めろ」
助け舟が入った。皇太子アイグレードだ。
「俺の妹が失礼した。フィレイア殿下のことを気に入ったのは解ったが、あまり、弄ってやるな」
「えーだってー」
エリューティアが口を膨らませている。
なんでしょうかこの皇女殿下は、遠慮が無さすぎる!もしかして、私の初めてが奪われそうになっていたかもしれません。
少し乱れかけた服を正して、座りなおしてエリューティアを見ると、視線は、まだ、私の胸ではなく、その向こうにあって、フィレイアの横にある棒状の物だった。
「貴方は、変わった武器を使うのですわね?」
フィレイアの横に立てかけられたそれは、ロッド、魔術師が使うものとは違う金属製のロッドである。先端は三日月型の装飾と宝石がついている。
「私は、魔法による近接戦闘が主体ですから」
「魔法って、それで近接戦闘をするイメージが解らないですわ」
エリューティアのお触り攻撃を受けながら、馬車にゆられながら街道を進んでいたが、ある時、森の真っただ中で停車する。
「いったいどうされたのでしょうか?」
フィレイアは、不思議に思う、森の真っただ中で止まるなど、普通ではない。
その後ほどなくして、馬車のカーテンが開け放たれ、騎士が顔を覗かせる。
フィレイアの疑問に答えたのは、並走する騎士であった。
「申し訳ございません。突然、森の木が倒れ、馬車の行く手を阻まれ、さらに前方の兵団と分断されました」
「なんですって?」
「おかしいですわね。この森はよく木が倒れるのですか?フィレイア様?」
こんなにタイミングよく木が倒れるものなの?魔物の襲撃か何かであっても、そこまで考えて動くものでしょうか。
もしかして、誰かが倒した?
ということは、これはまさか。
「賊による襲撃です!私も出ます!」
この馬車は、要人を運んでいる。その周辺も帝国軍が同行し、警護に当たっているのである。それを襲撃して、どうにか出来るような相手じゃないはずである、余程、恨みがあるのか、それともタダの馬鹿のどっちかである。
勢いよく飛び出したフィレイアは、襲撃者を確認すると、風魔法による俊足で、肉薄し、ロッドを振り下ろす。
ロッドのどこにそのような切断能力があるのか分からないが、襲撃者は綺麗に両断され、びちゃりと音を立てて倒れ、二つに割れた物体が横たわる。
すでに、あちらこちらで戦闘が始まっており、怒声と怒号があがる中、金属がぶつかり合う音が響き、そしてさらに死体がいくつも転がっている。
続けて、横から向かってきた男を斬り倒す。
「やはり賊の襲撃なの?」
それにしても、おかしい、帝国軍人が押されている。
「ただの賊じゃ無い!ノイエどこ!?」
フィレイナは敵を切り倒しながらノイエを探す。
民間人を襲うような、少人数の敵を襲うようなそいう類の敵じゃない。大多数の敵を倒すために訓練された集団の動きだ。でも、綺麗な統制は無い、軍隊といった類のものでもない、一体何!?
「お?ここにももう一人、上物がいるじゃねえか」
何?こいつは。ここにも?ってどういう意味?
「野郎ばっかだからよ、へきへきしてたところだ、こんなクソまずい仕事無いわ、マジで」
正しくは
この人、ノイエを知ってるの?
「おい、
こいつは、やっぱり物取りのような賊ではなかった、皇太子を暗殺しにきた何者かであることは確定である。
「駄目!」
「いかせねーよお!」
風魔法で加速し、俊足で馬車にもどろうとするが、一瞬にして前方に先回りされてしまう。
「速っ!?」
そのスピードに、驚く、が、こちらも、対応できないほど弱くはない、瞬時に、ロッドを横なぎに払う、だが、男も、それを、跳んで躱してみせる。
「あぶねえな、その武器はよお、剣で受けるとざっくり逝くやつだ」
「なに?」
「お前が、さっき殺った奴、あいつ、そのロッドを、剣で受けてたろ?受けたはずなのに首ちょんぱだ、フハハ、おっかねえわ」
私のロッドは、そこから、さらに魔法を飛ばす、振った先から、魔力の刃がさらに襲う二段構え、ただ剣で受けたのでは防ぎきることはできない。
この男は、それを観察によって、見切っていた。だが、それを知ってスピードで躱そうと、私の攻撃をいつもまでも躱しつづけられないはず、それに、私の魔法はこれだけじゃない。
「それが分かったところで!」
跳んで避けたところを追撃する。が、男は、ひょいっと避ける。
そしてさらに追撃するも、ロッドはさらに空を切った。
「当たらなければ意味ないだろ?早くしないとよお、馬車が終わるぜ?」
「なめないで、貴方も、いつまでもそうしていられないでしょ、体力が消耗しきったときが終わりよ」
その後も、幾度と繰り返し放つ攻撃の全てが躱されてしまい、その斬撃があたることがなかった。
この男の回避能力は高い。私の魔法を乗せた移動と攻撃に着いてくるのだ。
「ちっ」
「すっげえ遅えわ、そんなもんじゃ、当たんねーよお」
当たらないことに、舌打ちし、苛立ちを見せてしまうが、と同時に放つ攻撃も、嘲りとともに躱された。
「これでいいのです、これで」
続けて振りきられるロッドを、男は再び跳んで避け、その着地の瞬間、爆ぜた。
「エクス=フィアマ」
ドオオオオンという破裂音とともに炎を吹き上げ、熱を帯びた風が銀色の髪をたなびかせる。衝撃が地面を伝わって、その威力を伝える。
着地の瞬間を狙ったのだ、避けることはできない。
単調に何度も斬り付け、その度に相手の回避行動を取らせる、それを幾度と繰り返し、パターン化させていく、あとは、タイミングを合わせ火系爆発魔法エクス=フィアマを浴びせた。
「あいつを止めないと!」
魔力を練り、高速移動で馬車の方へ走りだそうとする。
が、その瞬間、背後に嫌なものを感じた。その瞬間、体が前に出なくなった。
首が後ろに引かれ前に出ない。男に首を捕まれ後ろに引かれたのだ。
「遅い、といっただろおよお?」
同時、首が締め付けられる。
しっかりと首を掴まれている、苦しい、息が出来ない。
「あ、がっ、あ」
喉を押さえられて声も出ない。
「安心しろ、喉はつぶさない、お楽しみが減るだろ?このまま、昏倒させてやるだけだからよお」
護るため向かって行こうとした馬車、その馬車から皇女が引きずりだ出されるのを霞む目で見ながら、フィレイアは意識を手放した。
両腕を後ろ手に拘束され動くことができない。脚にもまた、土魔法による足枷が付けられている。
周囲は、分厚い布張りの冒険者などが使うような簡易天幕、どうやら、意識がなくなった後、その中に押し込められていたらしい。
同じように昏倒させられたのだろう倒れる少女が傍にあった。
向こうを向いている状態のため、薄い青み掛かった髪だけが見える。
「ノイエ、ノイエ起きて」
声を掛けても反応がない、意識が飛んでいる。もう少し待つ必要がありそうである。いまは、ここがどこであるのか?どうやって逃げるか探る必要がありそうだ。
外の様子を伺おうと、耳を済ませば、外からの声が漏れ聞こえてくる。
身体を尺取り虫のように移動して天幕の入り口に近づくと、その入口の隙間から外の様子を伺いながら聞き耳を立てた。
「いや、流石にきつかったわ」
「あれは死にそうになったぞ、帝国軍があんだけいるとは聞いてねえぞ」
「くそ、何人死んだと思ってんだ」
「結構な人数が死んだ。報酬が見合わないだろ。これは」
「おいリーダー答えろ」
「たしかに、報酬の問題はデカい、だが、クライアント様からはよお、数か月は遊んで暮らせるだけのよお、金をくれるんだ、それを生き残った人数で分けるんだぜ?死んだ数だけ報酬が増えるってもんだ。結果は悪くはないだろおよお?」
「あん?」
「俺は、リーダーのいう事はわかる。それとな、どうせ寄せ集めのメンバーで、今この時だけのパーティーだ、報酬受けとったら、サヨナラだ。自分の命を気にすればいいそれが傭兵だ。人の生死なんざ知らん」
「おぅ、わかってんじゃねぇか、だが、俺も、この仕事は報酬と内容をだけを見ればよぉ不味いと思った、だからこそよ、クライアントの報酬以外のご褒美があるんだよ」
「まあしかし、今回の戦利品は特上品だ。まさか、第二皇女がいるとは。思わぬ戦利品だぜ」
「ああ、確かに、あれは楽しみだ、王族様の乳を揉めるなんざ、そうそう味わえるものじゃないからな。最高の褒美といえる」
「クソみたいな仕事だったが、あんな上物を抱けるなら…、くそ、今回だけだ今回だけだぞ。しっかりと、たっぷり楽しんでやる」
「あとは、金銀、宝石類の装飾品ことだわ、どれを取るかよお、くじで決めるからよお。いいな」
とても、ゲスい話をしている。聞くに耐えない。だが、自分達がとても、まずい状況にあることは分かった。
すぐにでも何とかして脱出しないと私達の身が危ない。
その後も、息を殺しつつ様子を伺い、何か無いか必死で脱出の糸口を探す。
話の内容から、リーダーはどうやら、私が最後に昏倒させられた相手のようで、何者かに雇われた傭兵であることが判った。どうやら、皇女殿下も、このキャンプ内のどこか近くに居るらしい。
拘束された手足では、何も出来ず、状況はなにも変わらなかった、時間だけがすぎて行く。
「あぁ、そろそろ始めるかぁ。お楽しみの時間だ」
そして、ついにリーダーの男が号令を下した。
僅かな希望さえも踏みにじられる。絶望の時間の始まりだった。
その日の私の結果だけ見れば、まだ身体は無事だった。
明日に取っておかれることになったらしいからだ。
その時すでに、ノイエは目を覚ましていた。
男らが、天幕に入ってくると、ノイエの腕を掴み、連れて行こうとする。ノイエは必死に抵抗するが、それも空しく、引きずられる。
「フィレイア様!フィレイア様!助けて!フィレイア様!嫌!やめて!」
必死に私の名前を呼ぶが、奴等は、それを無視し、外へ連れ出していった。私は、どうすることもできずただそれを見ていることしか出来ない。
「嫌!やめて!やぁ、あ、放して!いや――――
ノイエの悲痛な声。
その後、ノイエが弄ばれる声をずっと聴かされ続けた。
強制的に聴かされるその声に精神を削られていく。恐怖を感じ、体を震わせて必死に耐えた。
明日には、次は私の番である。汚い言葉を浴びせられ弄ばれ犯される。天幕の布超しに聞こえる罵声と悲鳴。嫌だ、怖い。尊厳を全て踏みにじられ、散々、玩具にされた挙句、最後には殺されて山に捨てられるのだ。
身体を縮こませ、顔を伏せ耳を塞ぐ。
天幕の向こう、ノイエに重なって漏れ聴こえる声は、皇女様の声である。その悲痛な声は、ノイエと同じ目に会わされていることは想像がついた。
それから、恐怖に現実を逃避し、いつのまにか意識を失ったのか、ノイエと肌を合わせ折り重なるようにして眠っていた私は、ある声によって起こされる。
「おい、起きろ」
「ん…?…ひっ、い、あ。あぁ」
顔を上げるとそこにいたのは、あの凶悪顔の男だった。
ついに私の番が来た。嫌だ、やめて、助けて、怖い、みるみるうちに顔が青ざめていく。あまりの恐怖で腰が抜け、下の筋肉が緩み、生暖かい感覚とともに太ももの間で水たまりを作りながら地面を濡らす。
「ひっ」
短い悲鳴を上げて、ビクつく私に、男は意外なことを告げた。
「拘束具は壊した。あとは、勝手にしろ、それと、そっちの娘にこの布を使え」
言葉の意味が理解出来ず、呆然とする私に、布を投げて渡され、そのままどこかにいってしまった。
暫く、状況が理解できず、男の出ていった方を見ていたが、目を落とした視線の先に壊された拘束具の残骸を見つけた。
寝ている間に腕と足の拘束は解かされていたのだろう、両腕と両足が自由になっていた。
「拘束がなくなって、自由に…。あの男に助けられ、た?」
全裸で寝かされるていたノイエに布を掛けて、ノイエを起こす。
「…」
ノイエは何も言わず、身体を起こすと、私を見て、目線が下の方で固定された。足元、そこにあったのは、水溜まり。
「お願い…。それは、見ないで」
天幕からでると、わずかに空が白み始め、光が見え始めていた。
天幕の外は、静寂し、とても静かになっていた。
動いている人間は一人もおらず、風に煽られる森の木の葉が揺れる騒めきだけが聞こえてくる。
「とても静か…」
「…ん。だれ、も居ない。です」
天幕から踏み出すと、びちゃりという音が足元で鳴る。
そこにあったのは赤い血。
その血だまりを踏む音は、そこに死が大量に転がっていることを告げていた。
「あいつが…、やったの?」
キャンプには、いくつかの天幕があって、生臭い血の匂いが立ち込める中、自分の持ち物がないか、使えるものが無いかを探してそれぞれの天幕を覗いていく。
リーダー格の男は、頭部を無くした状態で転がっており、他の死体もそのようになっていた。
「皆、一撃…。寝てるところをやられたのかしら…。皇女殿下はどこにも居ないようね。ノイエ、ついてきて?」
「…うん」
一通り見て回るが、やはり誰も生きてはおらず。あの男と、エリューティア皇女殿下の姿も見えない。
「じゃあ、ここから出るわ」
キャンプ、そして森からの脱出の準備のため、男たちが持っていた装備品を拝借していく、鞘の着いたベルトをまわして、それを装備するといよいよ出発である。
ここがどこであるかわからないが、どこか、村を見つけるか、街道に出ることが出来れば、助かる道はある。
ここに残って救助を待つという選択肢もあったが、血の匂いに誘われて、魔物が集まってくる危険性もあったので、ここには居たくない。
襲撃者から生還しキャンプから出ることができた、だが、私の運命は、全く私の味方をしてくれるわけではなかった。
この時ほど、神を呪い殺そうと思った事はなかっただろう。
森を歩く私たちの前に、ゴブリンが現れたのだ。
衰弱したノイエをかばいながらの、慣れない剣での戦闘は、とてもきつかった。さらには、ゴブリンが普通のもではない強さであったのだ。
ゴブリンの放つ矢を弾きながら、近接での攻撃を防ぐ、ノイエから離れられないため、こちらから踏み込むことは出来ない。
幾度かの攻防の末に、何とか、一匹を斬り殺し、二匹目に斬りかかる。
ゴブリンは、後ろに飛びのきそれを回避すると、フィレイアの剣撃の硬直を狙って矢が飛んでくる。
「ゴブリンの癖に、連携がとれてるっ!?」
だけど、こんな所で負けていられない、弓ゴブリンを魔法で狙撃し、殺傷するまでには、至っていないものの行動不能にさせる。
「射手も、攻撃直後は一瞬、動けないでしょ!」
目前に迫る近接のゴブリンの追撃を躱し、カウンターの一撃で首を跳ねる。
二匹倒しても、まだ、安心はできない、まだまだ居る。
ゴブリンを屠るその瞬間、続けて、タイミングを計ったように矢の雨が降り注いだ。遠距離からの複数のゴブリンによる同時に放たれる矢であった。誰かが号令を掛けなくてはこんなことはできない、すべての矢を捌くことは出来ず、次々に脚や腕に矢が突き刺さる。
「やっぱり、連携して攻撃を?」
痛い、すごく痛い。二度も狩られる側の経験をするなどと思いもしなかった。
そして、ゴブリンの数も増えている。絶体絶命である。
追い打ちをかけてくるゴブリンのそれを避けて、カウンターでそれを斬り伏せ、さらに続けて来たゴブリンを斬る。
その瞬間、背中に感じた強い衝撃とともに、フィレイアは倒れ伏した。
気が付いたときには何処かの牢に入れられていたが、その後、牢から出されると、何故かメイド服を着せられて今に至る。
捕虜を殺すなという魔王の命令と、待遇の改善命令により、ゴブリンなりに考えた結果こうなったらしい。
そしてその後は、この領城の中でメイドとして生活し、そして、ちゃんと食事が与えられる。生きるのに不自由はない。
同時に、ゴブリンが人間のように文化をもって暮らし、ゴブリンの長がこんなにも人間のような存在であったことに驚かされた。
そして今日になり、魔王閣下が来るというので、領城の掃除をして、急いでゴブリン王の支度の準備をした。
すぐに、魔王閣下がここに来た。そして、ここに来て一番驚かされることになった。それは、魔王が、こんなにも、とても美しく綺麗でかわいい少女だったことである。燈黄色の輝きを放つ暁を思わせる髪と、陶磁器のように白い艶のある肌は印象に残る。
――それにしても、見覚えがあるのですが何処だったのかしら?
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