第3話 食堂のおばちゃん

 拝啓、お父様へ。


 いかがお過ごしでしょうか。

 私は元気です。(たぶん)

 ここに攫われてから、一週間が立ち、食堂のおばちゃんに転職しました。

 食堂では、私は、注文を受けて、調理場にそれを伝え、または、出来たものを配膳する係に就いています。

 皆さん食べ盛りなのかよく食べるので、注文をとるのがとても大変です。

 沢山のメニューを頼む方がいて、それをメモるのも一苦労、正確に取れているのか不安になることもあります。

 私の事を食べたいくらいに可愛いと褒めてくれますが

 そして、今日も、あっちに呼ばれこっちに呼ばれとても、とても、忙しく動き回ります。食堂はとても広いので、いつものような長くて重いスカートでは、動きにくいので、短いのをレリアーナさんから頂きました。レリアーナさんは、とても、親切な魔女の可愛い女の子です。

 見た目とは違って、私の二十五周り以上年上です。

 司書見習いという肩書のもと、普段は蔵書室で住まわせて貰っているのですが、これがもう大変な量の本があります。その一つの部屋で喋る本を見つけました。

 受け答えができるんです。例えるなら、人が本になったみたいなものですね。


(中略)


 元気にやっているので、あまり心配しすぎて、胃腸を傷めないでください。

 ところで、妹のルーナは、大丈夫でしょうか、私の事で思い悩んでいませんか?あ、でも、大丈夫ですね。腹黒いので私が居なくてせいせいしているかもしれません。

 冗談です。ハート。お母様にもよろしくお伝えください。


 貴方に神の祝福の有らんことを。

 アウロラ・プリズム・ラ・エーデルライト2世より。


「だーれが、おばちゃんじゃーい!!」

 ベシッィ!


 手紙が机に叩きつけられた。

「貴方が書いたのでしょー?それと、二十五周り以上年上は余計ですよー?」

 見た目魔女っ子レリアーナは、年齢のバレる手紙の記述にご不満なようだ。


「もうこれで、いいですわいいですわ。手紙って出せますのよね?」

「ええ、魔王城の入り口にぃ、ポストがあるわー」

「そこまで、行けないのですが…」


 魔王城の中になぜか、ダンジョンが存在しているのだ。魔王が、”それっぽいから”と言う理由で、様々なダンジョンを作ったらしいのだ、溶岩だったり、氷だったり、毒だったり、他にも複数存在する。当然、様々なトラップが仕掛けられている。それを抜けないと外までは出れないのだ。

 生きて出られる気がしない。


「でもー。目がいいのなら。罠ぐらいは見分けれると思うのですがー」

「目がいいの意味が解りませんが。見つけても回避できないですわ」

「あの部屋は、普通は見つけられないのですよー?目がいいということですー」

 いや、普通に扉があそこにあるじゃないですか。

「しかたないですねーじゃぁ、代わりに行ってきて、さしあげましょうかー?魔王城の二階から、空を飛んで出れば、すぐですー」

「じゃ、お願いするわ」

「はい、まかされましたー」


「それじゃ、私は、食堂のパートに行ってきますわ」

 何故、姫たる私がこのようなパートタイマーになっているかというと、レリアーナちゃんが、食堂に行くようにと言われて、行ってみたら人手が足りないからと手伝わされ、明日も明日もと、ずるずると。

 この国を出て、お家に帰るお金を稼がないといけない。そもそも、魔王城から出られへんやん!という突っ込みは無しである。

 ああ、姫なのになぜこんな目に。




 食堂の裏手から入ると、すぐそこが調理場になっており、そこで元気よくあいさつする。

「おはようございます!」

「おはよう。アウロラちゃん」

 先に来ていた、トカゲのおばさんが、にこやかに挨拶を返してくれる。

 するとこちらに気づいた他の面々が、続けて挨拶を返してくれる。

「おはよう」「おはようございます」「お、おはよう」「おはようさん」「おはようです」

 アウロラの挨拶に、皆、てんでばらばらの挨拶と種族であったが一点において同じことを考えていた。それを代表するかのような熊さんの開口一番はこうだ。


「おはよう、おお。やっと来たか、早く行ってくれ、今日も、やばいことになってる」


 アウロラは、せかされて、すぐに割烹着を着て、トカゲのおばさんと二人でカウンターまで行って前のシフトの方と交代する。

「お待たせしましたー!」


「「「「「「「うおおおおおおおおお!!」」」」」」」


 カウンターの前でむさ苦しいような、うるさいような、どう猛じみたような、歓声が上がる。

 アウロラの背中から冷や汗が落ちる。

 なんですかこの歓声は…。顔が引ひきつりそうになるのを堪え、接客を始める。

 カウンターがものすごい行列になっていたのだ。

 アウロラが、このパートを始めたのは一週間前、その頃は、ここまで並んでいなかったはずである。日に日に数が増えて、今は、人だかりとなっているのだ。

 なぜこんなことに…。


「アウロラちゃんが来るのを待ってたみたいなのよ~」


 そう言うのは、トカゲのおばさん、名をシナラ。

 いや待って、意味が分からない。

 並ぶところが、私とシナラおばさんの二か所あるのに私の方ばかり行列である。本当に意味が分からない。

 仕方ないので、注文をとり、調理場に伝えていく。まだ慣れていないので上手く捌けるる自信がない。これだけの仕事、なのに、とてつもなく忙しい。

 この忙しさ本当に新人の仕事なのでしょうか。

 ベテランであるはずの彼女が、横でサポートしてくれるので、大きな問題は起きないが、なんか申し訳ない。

 だが、カウンター内で問題は起きなくとも、順番待ちをするお客の方で問題は発生した。


「おいお前、割り込んでじゃねえぞ」

「言いがかりはやめろこら!」

 なんか始まってしまいました。

「あーん、てめえぶっころすぞ!」

「やってみろよ、こらぁ」


 これだから血気盛んな人達は…。

 横を通り掛かったウサギさんが怯え切っているじゃないですか。

(ん?あのウサギさん、もんすごいモフモフしてるじゃないですか!魔王城にあんな!あんな!モフモフが居るなんて!モフりたい可愛い、是非とも持って帰りたい)

 二本の脚でてくてくと歩くモフモフウサギに、目を奪われる。アウロラの目は見開かれ、一点を凝視して完全に石化したように固まっていたことだろう。その様子にシナラおばさんは心配になった。

「アウロラちゃん。ごめんなさいね~。怖いでしょ~。私ちょっといってくるね~」

 シナラおばさんがそう言うとカウンターを出て、あの二人の仲裁にいってくれるようだ。

 その間も、私は注文を取りながらも、そのウサギの様子を…違います、喧嘩の様子を伺う。

(こういうことってよくあるのでしょうか?どうでもいいけど、ウサギモフりたい)

 シナラが二人のもとに近づき、そして、


「アウロラちゃんが怖がるから止めなさい」


(え!?なにそれ、なにその注意のし方!!おかしくない?)

 すると、どうだろうか、二人がおとなしくなったのだ。解せぬ。


 大人しくなり、大きな声を上げないものの、その後も、肘で小突きあっている。大人げなくて、引く。

 そして、その二人の順番が近くなり、私の引く様子をみるなり、再び爆発した。


「てめえの顔みて怖がってんじゃねえか!!」

「怖いのは、お前の顔だろ、その狼頭隠せよ!」

「はぁ?牛のほうが怖いだろ」


 えぇぇぇ?なんですかそれぇ!!!


「ふざけんなよ、牛なんて可愛いだろ、牛だぞ、草食動物だぞ、どこに怖い要素あんだよ、お前なんて狼じゃん、狼やヴぁいじゃん。肉食じゃん、赤頭巾なんて食われたんだぜ」


 いや、食べられてないと思いますよ?


「お・お・か・み。いやいや、犬だから。狼は犬だから、犬のほうが可愛いっしょ。う・しって。いや、ないわー。牛ないわー。デカいしモーモー言牛、耳元でモーモー言われてみ?怖いぜ?」


 モーモー言牛ってなによ!?狼は犬なの?確かに、犬の仲間だけど。


 私としても、引きすぎて、どうしていいかわからない。

 すると、シナラおばさんが、口元に手を当てながら、耳うちして何かを伝えてる来る。そして、伝えられたことの通りに言った。


「お二人とも、ので、おとなしく並んでくださいねー」


「「はーい」」


 なにこの茶番、もうやだ…。


 ミノタウロスとワーウルフの小競り合いがあったものの、本日のカンウンターのパートは滞りなく終了した。そして、その日のお給金を受け取り、蔵書室に帰るのだ。




 次の日も、その次の日も、同じく仕事をこなし、お給金を貰って帰る。

 完全に蔵書室が私のお家みたいになっていた。

「このままでは不味いです。これでは完全に蔵書室の住人です。姫がこんなことでいいのでしょうか」

「あれぇ?なにが不味いのですかー?私は大体、ここで寝泊まりしていますよー?」

「すみませんでしたー」

 平謝りである。ずっと蔵書室の住人のレリアーナに失礼でした。失敗失敗。



「それじゃ、私は部屋に戻りますね」

 自室となっている部屋に行こうとする私をレリアーナは引き留めた。

「それでー、そのウサギはなんですかー?」

 その指は、アウロラの腕の中にあるウサギを指している。そして迷わず私はこう答える。


「拾いました」


「ほんとーですかー?怯えていませんかー?」

 この私に対して?怯える?いやいやまさかー。

 人参を手渡そうとしても、欲しそうにしていながらも、全く寄り付いてこないから、人参を取ると籠が上からかぶさる仕掛けに引っかけただけすわ?それを拾ったのです。人聞きが悪いですわ。

 それに、この私がこんなにたっぷりモフモフしているのに怯えるはずなんて。無いですわ!


「そんな訳ないですわ。こんなにも懐いていますわ!」

「いやいや、恐怖で従っているだけ、じゃぁないですかー?」


 

「モフモフさせてくれないなら、定食のおかずにしようと思っただけですわ」


 これはもう悪いことと思ってもいない確信犯である。

「それが原因じゃないですかー。開放してあげてくださいねー」


 ぐぬぬ。

 レリアーナに怒られたため、仕方なく別れを惜しみつつ手放すと、モフウサギに別れを告げる私にレリアーナは謎の予言を残した。

「そーそー、あしたは、変わったことが、あるかもしれませんよー」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 翌日、この世の理不尽に打ちのめされていた。

 理由は、熊さんから言い渡された仕事である。


「今日は、出前を頼まれてくれ」


「出前ってなんですか?」

「飯の配達だ」

「は?」

「飯の配達だ」

 二度言われました!


「ご指名の仕事だ、で、――――――――


 配達ですって!?しかも、ご指名ってなんですかー!!この城すごく広くて、道がわからないし、ダンジョンとかあるし、生きて帰れる気がしませんの。どうすればいいのでしょうか。一大事、一大事ですわー!これは、大変困りましたわ!


 ―――といわけだ、聞いているのか?」


 熊さんは、他に何か言っていたが、考え事していたため、全く耳に入ってきていなかった。そこに運命を左右する重要なワードが含まれていたこととは、知らず合図地をうつ。

「は、はい」

「給金もいつもより多くの渡す、チップも弾んでもらえ、何せご指名だからな」

 なんということだ。給金が多めに貰える上に、チップも多めに貰えるという話である。これはきっと、ダンジョンを抜けていかなくてはいけない故の手当てだ。絶対に生きては帰れない。

 よし、こうなったら、言うことは一つだ。


「だが断る」


「ナニッ、指名だと言っとるだろ。断れないんだよ。俺を助けると思って頑張ってくれ」

 いやいやいやいやいや無理ですからー

 こうなったら、せめて、せめて、「モフモフを持たせてください」


「いや、モフモフはダメだ」


「……」

 神はなんと残酷なのでしょうか。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「私は、もう迷はない!!」


 そう、高々に宣言する。


 何にだ。道にだ。


 道が全然わからないので、熊さんに地図を描いてもらったうえ。無理やり連れ―もとい、良く慣れたモフモフに道案内させていてるのだ。

 このモフモフは、なんとか熊さんを説得して、モフモフの同伴を許可して貰ったのだ。



「なぜ私がこのようなことを…」

 その呟きは、今のこの状況を嘆く。

 一国の姫が、ラーメンの岡持ちを持って、魔王城を歩くなど、なんとシュールなことだろうか。

 祖国のお母様がこの姿を見れば、泡を吹いて卒倒することだろう。

 ですが、いまはそうも言っていられない、仕事である。そのようなことは頭の片隅に追いやり、モフモフの後ろを付いていかなくてはいけない。



 目的地に付けば、そこは、城だった。

 魔王城の中にまた城があったのだ。

「いや、ここどんだけ広いんですか」

 そして、当然のように門があって、門番がいる。

 あれは、多分、あれです、あの門番に止められて、一悶着あるのがテンプレのやつです。

 あー胃が痛くなってきました。



 作戦を考える。

 問題は、あの門番をどうやって突破するかである。


 モフモフを右手の茂みに送り、私は左の茂みに隠れる。

 失敗は許されない。

 そして、モフモフにハンドサインで指示を出す。

 指でカウントを始め、最後のゴーサインを出した。

 と、同時、モフモフが飛び出した。

 迷いのない一直線の直球。

 その白い残像を残して飛ぶモフモフは、必殺ともいえる魔球である。

 モフモフは真っ直ぐに門番に直進していく、そして、接触するかというときに飛び蹴りのフェイント。門番は、身構える。

 だが直前に、モフモフは、直角に飛ぶ。

 草食動物ゆえの特殊な移動能力である。

 ウサギは、まっすぐに突っ走っているかと思えば、減速せずに、急に直角に曲がって走ることが出来るのだ。

 相手は強そうな門番である、正面から素直に行っても直ぐに捕まってアウトだ。ならば門番の気を引くことに専念し、門番を門から離す。そして、その隙に門を突破しようとゆうものだ。

 門番はフェイントの一瞬に迎撃態勢をとるが、直前の方向転換。最初のフェイントで強直し反応に遅れながらもウサギを追いはじめた。


 そして、アウロラは、その隙に、必死の思いで門に向かった。

 足が重い。

 鉛のウェイトが付けられたかのようだ。

 今までどれほど、歩いてきたのか。そして、幾度という苦難を乗り越え、ここまでやってきたのだ。

 門が遠く感じる。

 だが、そこには、絶対に負けられない試合があった。

 

 私は絶対に勝つ。この試合に勝って、私は全国大会にいくんだ!

 そして、門にタッチする瞬間、だった、「おい、勝手に触るな」腕を掴まれた。


 アウトオオオオオオオオオオ


 終わった。 


 私の夢は、終わった。





「あの、出前をもってまいりました」

「それならそうと早く言え。ほら少し待ってろ、迎えを呼ぶ」


 モフモフをけしかけたことで、めっちゃ怒られました。

 普通に、門番に「出前です」と言えば通してくれたのです。



 数分もせず、城の中から、真っ黒の鎧が出てくる。

 全身から黒い靄が溢れた如何にもな感じの暗黒騎士である。

 その姿を一目見ひとめみるなりモフモフは震え上がると、気絶してしまった。

 あまり関わっちゃいけない真っ黒なオーラがバンバン出ていますよ、あの騎士様!!

 暗黒騎士は私をみると

「ほぉ?」と感心したような声をだす。そして「こっちだ、着いてこい」と着いてくるようにいった。中に入れということだ。

 あれ?なにこのイケボ。見た目に似合わず、すっごいいい声だった。

 気絶したモフモフを抱き上げて中にはいると、一つの部屋に案内される。


 そこに居たのは青白い髭を蓄え、髑髏の錫杖を持ち、黒い毒々しい王冠を乗せた男だった。

 威圧感も今まで見てきた魔物やモンスターとくらべものにならぬ位、物凄く、ただものではないことは一見してわかる。



「まあ、そこに掛けてくれ」

「ですが」

「よい、そこに座るんだ。そして、こっちは君の分だ」

 意味が解らない。何故私の分があるの?

「熊に言っておいたんだがな、娘を少し借りるぞと」

 だから、私に行けと言ってたんですか。いま理解しました。

「何故、私なんですか」

「食堂にうら若い娘が入ってきたと噂になっておったぞ。だからな、一目見ようと呼んだんだ。ああ。申しぶんない」

「なるほど…」

 私を見て申し分ないとは、こんな見た目で、まさかただのエロリジジイだったのですか!

「遠慮するな。喰え。それと、誰がエロリジジイだ」

 その瞬間、暗黒騎士が殺気を私にぶつけて来た。やめてください、殺気だけで死んじゃう。本当に怖いです。それと。

「思考が読まれた!?」

「顔に書いてあるぞ」

「嘘だ」

 顔をこねくり回し。なんとか文字が顔から消えるよう正常に戻そうとがんばる。



 遠慮せず食えというなら、頂きます。ここまでほんと歩きつかれて、お腹が背中とくっつきそうなんです。

 ですが、ちゃんと、王女らしく、上品に頂くことは忘れない。

 黙って黙々と食事というわけにもいきませんし、それに、この方も何か話したくて呼んだはずなのですが…。なにを話せばよいのかわかりませんね。

 とりあえず、いまは、優雅に口に運びます。

 んーおいしいですわ。生き返りますわ。


「歳はいくつである?」

「16ですわ。成人前ですわ」

「なるほど若い。まぁ余からみれば、赤子も同然であるがな」

 何歳なのでしょうかこの方は。

「はて、四千は越えたか?」

 先ほどと言い。これはもう、思考を読んで答えているに違いない。絶対に嘘つけないじゃないのよ

「その通りだ。―まぁ、そう身構えるな」

 四千を超えるなんて、どんな種族なのか想像もつかない、長命という、エルフでも千が限界だ。それ以上となると、ドラゴンや聖獣のような神精種ぐらいなものだ。でも、この方。魔力が…。

「ほぅ。気付くか。やはり、目がいいようだ」

 魔力の塊、壺というべきか、その根源なるものが少しずつ崩れているのだ。

 そして、続けてその理由を語る。


「二千年前の天と魔の大戦争でこうなった。それ以来少しずつ崩れている。そのうち完全に砕け、余は消滅する。その日も近いその時は、後継者が必要というわけだ」


 なるほど、死ぬ前に若いエキスを吸いたいとか言わないでくださいよ。

「言わんわ。そこまで見境がないわけではないわ」

 私も体を求められても困りますが。

「ヌシが良いというならば別じゃがな」

「いいんかい!やっぱり、ただのエロリジジイじゃないですかー!!死ね滅びろ!」

 そしてまた、暗黒騎士が殺気を乗せて私をねめつけた。

 だから、殺気怖い。それだけで、たぶん、死んじゃうから。

 ”エロリジジイ、死ね滅びろ!”が駄目だったんですねわかります。主君を愚弄されるのは騎士としては許せませんね。ハイ。


 ですがエロリジジイに変更はないです。


「クハハハハハハ」

 なにがおかしいんですかエロリジジイ。

「思考を読まれるとわかっておきながら、余に向かってエロリジジイ。これは愉快だ。叡智の書め、なにを考えているのかと思うたが」

 叡智の書って、あの蔵書室にあった本ですわ。

「私、その叡智の書に石を」

「渡されたのだろう?それは、天啓であり、証のようなものだ」

 懐にしまっておいたそれを出すと、暗黒騎士の表情がギョッとなる。

「知っておるか?叡智の書とは、別の名がある。運命の書。すべてを知る。それゆえに、その運命を知り、それを告げるもの。運命とは、天命。クハハハハ。なるほど、ここに来たのも運命。すべては、やつらの戯れのためか。良いぞ、その戯れに乗ってやろう。パーティーを楽しみにしておれ、無論、ヌシの特等席付きじゃ。クハハハハ」


 この方は、一人で何かに納得して何かを決めました。誰なんでしょうかこの方は、そこのやばい暗黒騎士を従えていたり、とんでもないオーラだったり、大物であることは間違いなさそうです。

 やばいです。なんだか嫌な予感がします。

 私が、なにか大変なことになってる気がします。


 そんな思考もまた読まれている。

「そうか、熊から何も聞いておらんのか」

 実際には、考え事していて、話を聞いていなかっただけであるのだが。

 そして、その名を名乗のる。

 アウロラは、その名を聞くべきでなかったと後悔する。



「余が、魔王バールである」


 魔王の宝玉(返品希望)なんていりません!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る