無題

@gokoutouki

第1話


僕は歩く

僕は歩く

足が疲れても

僕は歩く

足がくたびれても

僕は歩く

足を怪我しても

まだ歩く

靴がボロボロになっても

僕は歩く

靴の底がなくなっても

僕は歩く

周りがいなくなっても

僕は歩く

目標が見えなくても

僕は歩く

目が見えなくても

まだ歩く

体がないように思えても

僕は歩く

後悔が体を蝕んでも

僕は歩く

次第に体が錆びてきて、僕の体は軋み、歪み、壊れ、崩れる

僕はまだ歩く

そこにもう自分の意思はなく、歩き、考えさせ、何かを成し遂げさせようとする周りからのエゴであり、自分の中の周りの意思である。

歩くことが幸せなのか、歩かせることが幸せなのか、そんなことはどうでもいい。

ただただ辛く、痛く、悲しく、寒く、暗くその道のりを歩むからこそ真実に辿り着けると信じて歩くのだ。

正しさなどない、これはただのエゴだ。

人は人を真似ることなどできないのだ。

これは、ある少年の物語。

ただ人より良い人生を歩むべく、人と比べ、努力し、ダメなところに目を向け、そして良いところを吸収して生きてきた少年の物語


正しいと言うものはなく正しさと言うものがある。



道を歩いていると家を見つけた、古びた廃屋のような家だ。

周りには荒野とはかけ離れたような草花が生い茂りそこの場所だけ、まるでどこかの場所と入れ替わってそこにいる。ようなたたずまいであった。

僕はドアを開けて家の中に入る。

家は床が腐っていて、中にあるのはくすんだ色をした暗いテーブルとボサボサの座布団が上に置かれている木製の椅子があった。

ちょうどいい、ここで休憩をしよう。

僕は椅子に座り少し呼吸を整える

外の日差しが天井から、雲の間から光が漏れるように差していて、キラキラしている。

僕は黙ってそのキラキラを眺めていた。

静かな時だった、何者にも邪魔をされない静かな時。


「なぁ、今日の点数幾つだった?」


不意に以前いた学校の様子が頭に浮かんでくる。

忘れようとは思わない。ただ今は思い出してもいいかもしれない。そう自分は思った。


「あ、あぁ僕は平均より少し上だよ。」

「そうかー、やっぱり。頭いいもんなーお前。」

「う、うん…」

頭なんて良くないよ、どうせお世辞だ、なにも生まない。

何気ないテスト返しの後の休み時間だった。

ただいつも通りに、点数を聞きに来る元気な子たちの受け答えをするだけの休み時間。

ただただ虚しいだけだ。理由はわからないけども。

隣の席の女子も同じように点数を親しい友達と聞き合っている。聞いた感じテスト前から競い合っていたのだろう。悔しそうな声とかすかな喜びの声が聞こえる。

だけど僕が耳に入ったのはそこではない、いや厳密に言うとそこもなのだが、そこではない。僕は点数が頭に1番入った、最高得点とその次の得点、僕は頭が震えて疲れそうだった。頑張りが届かないと言う感情と頑張ればなんでもできると言う有名人の言葉その差が僕の頭を放心状態にさせた。

僕は…負けたのだ…競い合ってもいない、もしかしたらこっちが吹っかけてこっちが全体的に悪いのだが、負けたのだ。……


そんなことを考えているとさっきまで見ていたキラキラはどこにもなくなり、僕はもう周りが夜になっていることに気づいた。

「…もう、夜になったのか…。」

休もう、今日はこの家を使わせてもらおう。

幸い屋根もある雨が降ったとしてもなんとか休めるだろう。

その前に空でも見ておこう。荒野の空というのはとても綺麗で心が洗われるものだ。嫌なものも思い出してしまったし。

僕はドアを開け、少し寒さがある荒野に出て空を見上げた。

「やっぱり綺麗だなぁ…夜空は…」

心が洗われる。

ずっと見ていたくなる景色。

ずっと前から見ていたかった景色。

それがそこにあった。

紺色と黒色を混ぜ込んで作ったかのような空とそれを彩る宝石のような星々

それと

空に浮かぶ大きな機械の塊。

綺麗だ。

すごく綺麗だ。


2021年3月1日

地球は終わりを迎えた、人は空から訪れた機械によって死に絶え文明は死んでしまった。

ある一人を除いて。僕は旅をしている。生き残ったのは僕だけで、旅をしている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無題 @gokoutouki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る