第4話
「お父さん!」
お迎えに行くとクラスの中で絵本を読んでいたらしい叶音が走ってきた。
「叶音!」
走ってきた叶音を抱きとめるとギューっと思いっきり抱きついてくる。
「あ、鈴鹿さん」
「りの先生、今日もありがとうございました。何か変わったことはありませんでしたか?」
「いえ、これといって変わったことは、なかったですよ!お弁当もとっても美味しそうで叶音ちゃんも喜んでましたー!」
幸い料理はそれなりに好きでやっていたので困ることはあまりなかった。インスタとかお弁当の画像を見まくって研究した。女の子だから可愛くないと可哀想だろうと頑張ってよかった。
「それじゃ、叶音ちゃんまた明日!」
「りの先生バイバイ!」
「ありがとうございました」
叶音は上機嫌で色々話してくれた。僕はそのおかげで意外と早く叶音の交友関係は掴めそうだ。
「なあ、叶音。今日何食べたい?」
そういえば叶音に、食事関して聞いたことがなかったと思い聞いてみる。叶音はえーっとねー、と言いながらこんなことを言い出した。
「オムライスのご飯でー、ハンバーグがあってー、じゃがいもさんがあってー、旗が立ってるやつ!」
何だそりゃ?という感じだった。とりあえず、それらの材料を帰りに買い、家に帰った。
「ただいまー!」
叶音は、家に入ると元気な挨拶をした。
「おかえりなさい」
僕が叶音の頭を撫でると叶音が今度は
「お父さんただいまは?」
と、聞いてきた。
「ただいま」
「おとーさん、おかえりー!」
本当に本当に可愛い。
「よし、じゃあ叶音、てー洗いに行こう」
「うんっ!」
叶音のお母さんつまり兄のお嫁さんは綺麗好きで整理整頓の得意な人だった。叶音もしっかりその精神というか遺伝子を受け継いでおり、外から帰ると必ず手洗いと着替えをしたがる。女の子で清潔好きなのは悪いことではないので、僕もそれに倣う様にしている。
「お父さん、みずだしてー!」
「はい、、、」
背がちっちゃくて最初はこんなこともできないのかと思ったことも最近では僕以上に頑張っててすごいと思うようになった。今も、踏み台の上で精一杯背伸びをして手を洗っている。
「てーふいたら、これに着替えてなー」
「はーい!」
叶音は着替えは自分でできるので頑張ってやってもらっている。流石に、というかなんというか、まだ抵抗のあることの一つである。
「お父さん、叶音が言ってた奴作るから着替え終わったら絵本読んでまっててねー」
「うんっ、」
叶音は年中さんとは思えないほどお利口と言うか聞き分けがいいというか素直だ。
「はあ、、、」
叶音に絶対聞こえないところまで移動してからため息をついた。叶音はぱぱとままの死んだ時のこと、ぱぱとままが死んだことを忘れている。叶音にはショックが大きすぎるから、と自然に思い出すまでは何事もなかった様に接することに決めている。叶音は今のところ思い出しそうな様子はないがいつその時が来るかわからない。
「なんで叶音置いて死んでんだよ兄ちゃん」
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