報告②

僕は、今少し後悔している。

「…というわけで鈴鹿からみんなに報告がある」

神崎さんは、お昼休みのあと、なんと全員がいるタイミングで、僕に報告をしろと時間をとってくれたのだ。ありがたいが、迷惑というか。

「じゃ、鈴鹿」

「あー、はい」

促されてどこから始めようか、と斜め上をみる。まあ、プレゼンとおなじで結論から言うのがセオリーか??

「実は、昨日から子供ができました」

口にした途端、すんっと変な空気になる。ヤッベ、話す順番間違えたなと一瞬口を閉じる。

「え、鈴鹿さんご結婚されてましたっけ?」

「お子さんって、ねぇ」

いや、確かにそうなんですけどもうちょっと喜んでくれても…。と、少し傷つきながら慌てて説明を始める。

「叶音って言うんですけど、実は兄夫婦の子です。

兄夫婦は、半年程前事故で亡くなっていてウチは、母子家庭な上母も他界しているので僕が養子にひきとりました。それで…昨日から正式に俺の子になりました。これから皆さんにご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、よろしくお願いします。」

そう口に出して、初めて説明して、あぁ俺人の子の親になったんだなって初めて実感した。叶音が家に来るまで色々手続きがあったからもうとっくに親になれたと思ってたけど、全然。まだまだ自覚が足りなかったな、と反省した。そして、神崎さんの言う通り叶音の親は、僕しかいない。僕がちゃんと叶音を育てなきゃいけない。

「叶音ちゃんっていくつ?」

最初に声を掛けてくれたのは里坂さんだった。確か小学4年生くらいの子がいると聞いた事がある気がする。

「あ、4歳です。年中さんです」

「何か困ったこととかわからない事があればなんでも相談してね。今更ママ友とか、パパ友作るの大変だと思うし」

「鈴鹿さん、裁縫とかできるんですか??」

「え?あー中学校以来触って記憶がないですけど」

「保育園とか幼稚園、結構色々作ってきてーとかあるよ。もしよかったらうちの子の譲れるものは譲ってあげる!」

「すいません。ありがとうございます」

「鈴鹿くん大変になると思うけど、頑張り過ぎない様に頑張ってね」

「はい」

同僚たちも

「お前すげーな。あーあ、鈴鹿酔うと面白いから飲みに連れ回したかったのに。もうできねーよな」

「人の子の親ってすごいよなー。まあ、頑張れよ。」

と言いながらバシバシと肩を叩いて祝福してくれた。

神崎さんは、ここまでわかって僕にみんなに報告するように言ってくれたのかもしれない。

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