第2話 わからない我が子
わからない。まったくもってわからない。今日はどうしたのだろうか。
「いやだー!」
何もかもが気にくわないらしい。朝、起きるところからこの有様だ。
「叶音、起きて」
「嫌だ」
「叶音、ご飯食べて」
「嫌だ」
何をしても一言目に「嫌だ!」という。グズグスとされると僕が会社に遅れてしまう。結局その日は、力技で叶音を幼稚園へ行かせた。
「すいません。今日は、機嫌が悪いみたいで。ちょっと様子見てていただけますか?」
幼稚園の先生は、叶音の親のことも知っているのでもちろん、と言ってくれた。
「おはよー」
会社には、結局ギリギリの出勤になってしまった。同僚たちは、どうしたんだ?寝坊か??と楽しそうに聞いてくる。
「まあ、そんなとこ。間に合っただろ?そこは掘らないでくれよー」
同僚には子供がいることは話していないので軽く流しておく。子供がいるから先に帰っていいよーとか、ほんとはしてほしいけど、生活のためにも叶音のこれからの学費とかのためにも稼がないといけない。兄の遺産は、僕に何があった時のために手をつけないことにしているため、正直苦しいところがある。
「鈴鹿、ちょっといいか?」
「はい。」
上司に呼ばれ、隅に連れて行かれる。上司の神崎さんは、叶音のことも知っていて自身も6歳になる女の子の親だ。
「鈴鹿、ポケットから色々出てるぞ。」
こそっと言われ、慌ててみると何故か右ポケットは、見事に裏返され左ポケットからは、人形の靴が片方だけ出てくる。
「昨日から正式に親子なんだよな。」
「はい。」
「人にアドバイスできるほど育児を手伝ってきていないからあれだけど、育児って大変だぞ。本当にこのまま仕事していく気か?」
上司は、奥さんと離婚になりそうなほど育児のことで揉めた話をしてくれた。今までは、様子見みたいなところもあったので叶音も大人しくしていた部分があるのかもしれない。
「ちゃんとお前の子なんだから、可愛い時ばっかりで、育てるなんて事できると思うなよ。」
絶対子育ては、辛い時があるから。上司は、そう言って僕をじっとみた。
「……同僚に叶音のことは、話します。でも、これからも出来るだけ今まで通りに仕事はしていくつもりです。叶音には、お金で不自由させたくないので。」
上司は、僕の言葉を聞いてほっとした様に全力でサポートする。と言ってくれた。
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