ギラギラ
眠りの浅かったトットは、外の異変に気付き目覚める。身体を起こし、カカとミーの無事を確認する。ジーっと耳を済ませると、車の止まる音やら人の話し声やらが聞こえて来る。そっと窓まで移動し、カーテンの隙間から外の様子を探る。狭い路地には所狭しと車が止まっていた。中には白と黒に彩られたパトカーも確認出来る。
( 警察だっ! 何でどうして警察が……)
品行方正な生活をしていたトット一家には、警察に捕まるような覚えが無かった。
「あっ」
(そうだ、木村さんのことだ……、やっぱり木村さんは……)
「トトさん、どうしたの??」
目を擦りながら起き上がる、トットの表情に事態の深刻さを感じとる。
「何があったのか話して」
トットは今置かれている現状を話す。外には大勢の警察官が来ていること。警察はトットを捕まえに来ていること。言い淀んでいたが、
「——それと、多分罪状は殺人罪だと思います」
はっと息をのむカカ、少し考え質問する。
「それは……、昨日来た男?」
うんっと
「……ジジを殺せって言葉が聞こえた瞬間に、頭が真っ白になって。その後感じたことが無いような怒りが、ドンドンドンドンと頭の中に雪崩れ込んできて……、気付いた時には、倉庫がグチャグチャになってた」
話を聞きカカは考える、少し間を置き質問する。
「それで木村さんは、死んでいたの?」
ブンブンと頭を左右に振る。
「分からない、その時はカカさん達のことで頭がいっぱいになってたから……、でも建物はペチャンコになってた、あれじゃきっと……」
最後の方は聞き取れないほど声が小さかった。
「ハッキリ死んだ所を見たわけじゃないのね! じゃ大丈夫、あなたは殺してない」
肩を強く掴み、真っ直ぐとトトの眼を見つめ断言する。
「えっ? そんな、いやでもあの状況で……」
「大丈夫っ!! 私が保証する、絶対に死んで無い! あなたの優しさは私がいちばーーん知っています。意識があろうと無かろうと、あなたはやっていません」
自信たっぷりに断言するカカ。トットの心に、暖かく心地良い風が吹き込む。その風は段々と強くなり、昨日から住み付いていた死神もろとも吹き飛ばしていく。
「でも、もしかしたら怪我してるかもしれない。それを確認しなかったのは悪い事よ」
カカの目にも涙が浮かんでいた。慈愛に満ちた笑顔から、ポロポロと涙が零れ落ちる。
「もしそのことでトトさんが警察に捕まろうとも、私達はいつまでも待ちます。ミーのこともジジさんのことも、ドーンと私に任せてよ!」
そう言ってニカっと笑うカカ、トトの中の小さな小さな勇気が大きくなる。カカの笑顔に引っ張られるように口角が上がり、笑顔になる。
「はい! カカさん、ご迷惑おかけしますが
頭を畳に擦り付け、土下座する。布団で眠るミーのおでこにキスをする。
すっくと立ち上がり、男は玄関へと向かった。
ガチャっと音を立て外へ出る。階段を登って来ていた警察官が一瞬ギョッとするが、直ぐに質問する。
「小沢
『はい、
確認が終わり、ポケットから逮捕令状を取り出し見せる。
「小沢
手錠を取り出す警察官、両手を前に出し答えるトット。
「謹んでお受けいたします! ……えっ?」
今世紀最大の間抜け顔に、手錠をかける警察官。
ドアの隙間から、鬼の視線を感じる。
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