第11話
よしよしと子供をあやす様に由紀乃はレオニードの背を撫で続けていた
猫のように擦り寄り、嬉しそうに頬を緩ませるレオニード
すると突然ドアが勢いよく開かれた
「ちょっと帰って来たんなら声かけなさいよね!!!!って何女連れ込んでんのよ!!!!」
入って来たのはピンク色の髪をツインテールにした女の子だった
ツカツカと2人に近寄り、女の子は勢いよく彼から由紀乃を引き剥がす
そして、ジロジロと由紀乃を見ていたかと思うと次の瞬間目を輝かせ彼女に抱きつく
「可愛い!!!!え、あたし好みなんだけど!アンタには勿体無いからあたしがこの子貰ってあげる!」
むぎゅっと抱きついたまま女の子はレオニードにそう言った
その言葉に彼は嫌そうな表情を浮かべる
「ゆきから離れろ、このレズ女」
「なによ!!!可愛い女の子は全員あたしのものなの!これだから汚らしい男は嫌なのよ…!」
苦々しくレオニードを睨み付け、女の子は由紀乃に向き直す
にっこりと可愛らしい顔で微笑まれ、由紀乃はぎこちなく笑みを返す
「あら、この髪色…。貴女渡人ね!こんな可愛い子があたし達の仲間になるなんて夢みたい…!あたし、アンジェ!よろしくね!!!」
「え、仲間…?」
由紀乃が訳もわからずそう言うとアンジェはこう続ける
「そうよ、この国では渡人は必ず兵器に変えるもの!」
その言葉に由紀乃はサッと顔を青くした
「…何言うとんねん。ゆきは兵器にさせへんで」
レオニードはアンジェから由紀乃を引き剥がし冷たくそう言い放つ
「は?あんた…裏切る気?あの馬鹿どもみたいに?」
アンジェは汚物を見る様な瞳でレオニードを見た
レオニードも冷え切った瞳で睨み返す
「ええか、ゆき。アイツの目をじっと見つめたらあかんで」
由紀乃にそう囁き、レオニードはアンジェから距離を取る
「ねぇ、かわい子ちゃん。貴女は絶対にあたしのものになるべきよ。貴女もそう思うでしょう?」
「私はものではないです!それに元の世界に帰るの。兵器になんてなりたくない!!」
「そう、なら無理矢理にでもあたしのものになってもらうから!!!」
アンジェはそう叫ぶと瞳を閉じた
その瞳が開くとさっきとは瞳の色が変わり、紋様が浮かぶ
「あたしを見よ、そして従え…」
「ゆき、声に耳を傾けるんやないで!!!!術にかけられてしまう!」
レオニードは由紀乃を抱き抱え、部屋から抜け出そうとした
しかし、その前にドアが開かれ新たに人物が現れた
「何騒いでんのよ、アンタ達」
さらりとした長い蒼髪を緩く三つ編みにした男性だ
言葉遣いは女性の様だった
「シルフィ…!」
2人に挟まれレオニードはギリっと歯軋りをする
「あら、その子渡人じゃないの。レオニードその子を連れて何処に行こうというのかしら」
何かを察した様にシルフィはドアを塞ぐ
「退け。俺はもうお前らみたいに国に従う気はないねん」
「あらあら〜、アンタもあの方達のようになるなんて…。そんなにその子は魅力的の様ね」
クスクスとシルフィは笑う
「シルフィ、アンタも加勢してよ!!!!その子あたしの専用にしたいの!」
アンジェは苛立ったようにそう言った
「あら、アンジェもその子にお熱なの?ますます興味深いわ」
シルフィは興味深そうに由紀乃を見つめ、手を掲げる
そこに現れたのは長い槍だった
「さて、レオニード。悪いけどアンタにはここで消えてもらうわ」
長い槍の切先がレオニードの目に迫る
寸のところでそれを避けたレオニード
しかし、背後にはアンジェが迫っていた
レオニードは由紀乃を抱えながら2人の攻撃を受け流す
由紀乃を庇いながら戦うのは不利だった
由紀乃は自分が足手纏いになってしまっている事に罪悪感を感じていた
自分の為に国を裏切ってくれたレオニードをなんとか助けたいと思った
槍がレオニードの頬を擦り、傷口から血が流れる
このままだとやばいとレオニードが思った時、ドアが大きな音を立てて破壊された
「やぁ、見つけたよ。ユキノをオレから奪った事後悔するんだね!」
そこに現れた人物達を見て由紀乃は安堵と共に涙が溢れた
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