第9話
色んな事があったが、無事に由紀乃は新たな街に来ていた
今度はみんなとはぐれない様にしっかりとよそ見をせずに付いていく
詳しく渡人について聞き込みをするも情報は集まらなかった
やはり帰れないのだろうかと由紀乃は不安になる
手に入った情報は1つはあった
しかし、それはこの前ファルコ達が戦っていたレオニードと呼ばれる人間兵器の事
渡人をベースにしたおかげで出来た最強最悪の兵器という事
彼を所有する国が戦争に勝った事
聞きたくない情報だと由紀乃は思った
思い悩んで俯いていたせいか人とぶつかる
「あ、すみません…!」
「ええんやで〜、俺の方もよそ見しとったんやから気にせんでええで!」
軽快な関西弁に元の世界の事が思い浮かぶ
ぶつかった相手を見るとニコニコとした好青年だった
綺麗なブラウンの髪色にこの世界では自分以外見ない黒い瞳
由紀乃は何か嫌な予感を感じ、彼から離れようとする
「へぇ、感がええ子なんやな」
彼がそう呟く
まだ近くにいる4人の元に由紀乃は駆け寄ろうとするも出来なかった
軽く掴まれたはずの腕が動かない
恐怖にガクガクと震え出す
「離して!!!!」
その声に4人が勢いよく振り向き、目を見開いた
「っ、レオニード!?!?」
レオニードは由紀乃を抱き抱えニヤリと笑う
「アンタらのお姫様もろてくな!ほな、また!」
そう言葉を発し、目にも止まらぬ速さでレオニードはその場を去った
「待ちやがれ!!!!!」
「キース、もう追いつけない…!」
ファルコがそう言い、悔しげに壁を殴った
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「嫌、離して!!!!」
「ほんと、じゃじゃ馬なお姫様やな〜!まぁ、そんな所もかわええで!」
どんなに由紀乃が暴れようともびくともしない体に段々と抵抗を止める
見えなくなってしまった4人に由紀乃は涙を流した
捕まらないと言っていたのに
少し油断してしまったせいで捕まってしまった
彼等を傷付けてしまったかもしれない
必死に自分を追って来ているかもしれない
この男は4人を殺す事が目的だろうと由紀乃は考える
それなら自分は人質という所だろう
人を殺したくなくて、兵器としての自分を変えたくて亡命した彼等
由紀乃は自分のせいで彼等を危険に晒してしまうと心が苦しくなった
どうして自分は守られるだけの存在なのかと悔しくもなる
強くなりたい、そう思い由紀乃は悔しさと歯痒さに泣いた
レオニードはそんな彼女を見ながら舌舐めずりをした
(「ほんまかわええ子…。食べてしまいたいなぁ〜」)
口には出さず物騒な事を考えているだなんて、由紀乃は思いもしなかった
屋根を走り抜け、森を抜けレオニードに連れてこられたのは大きなお城
サッと顔を青くさせる由紀乃
自分も人間兵器へと造り替えられてしまうのではと思い、震える
「そんな怯えんでもええで?別にアンタを兵器にしようとか思ってへんし」
「…じゃあ、何で私を拐ったんですか」
レオニードをキッと睨み付る
彼は笑いこう言った
「俺がアンタに興味があるからやで!」
「はぁ!?」
予想外の答えに由紀乃は素っ頓狂な声が出てしまった
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