第6話
由紀乃を探して他のところを見て回っていたファルコとセルヒオ
2人は今ピンチに陥っていた
「やぁやぁ、こんなとこで会えるなんて幸福やわ〜!裏切り者の人間兵器さん!」
2人は冷や汗をかきながらその人物を睨みつける
「こんな所で何をしている…、レオニード…!」
「ははは、それ本気で聞いとるんか、ファルコ?」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、レオニードと呼ばれた男は周りに黒い炎を出現させる
「お前らを始末する様に言われてるんやで、俺。その為に居るに決まってるやろ?」
「僕らアンタの相手してる暇ないんだよね〜…。また今度にしてよ」
セルヒオはそう言い、何も無かった空間から矢を放った
ファルコは掌から剣を出現させ大きく振りかぶる
ファルコの剣から放たれる衝撃波とセルヒオの矢がレオニードに降りかかるが、彼の手から現れた黒い炎によって防がれた
「ほんま、アンタらよりキースとフィリップを相手にしたいんだわ俺〜。でも、居ないからアンタらで我慢してんやで?優しいやろ?」
「ほんっと、そういうとこムカつくんだよねぇ〜!」
セルヒオはいつもよりも口調を荒くしながら次の攻撃を仕掛ける
ファルコも剣を構え直した
レオニードはそんな2人を嘲笑いながら炎を放とうとする
しかし、突如光に包まれ姿を消した
「はぁ、はぁ…、遅いぞ、フィリップ…」
「すまないね、ちょっとユキノがクソ野郎に絡まれていたから」
そう言いフィリップは右手に持っていた古びた本-魔法書-を消した
どうやらフィリップの魔法でレオニードを他の場所に移動させた様だ
「ファルコさん!セルヒオさん!大丈夫ですか!?」
膝を付いて大きく息をする2人に由紀乃は駆け寄る
2人は安心した様に由紀乃に笑いかけた
「ユキノの方こそ無事でよかった…」
「本当だよ〜、ユキノが無事で安心した〜」
自分達の事より由紀乃の方が優先され、彼女は少しムッとした
「私の事より自分の事を大事にしてください!!!!」
その言葉にファルコとセルヒオはポカンとした表情を浮かべる
「…そんな風に心配された事無かったな。ありがとう、ユキノ」
「へへ、なんか照れくさいなぁ〜」
…また好感度が上がった様な気がすると由紀乃は思った
「それにしてもレオニードがこの街に来ているなんてね。早く他の街に行かなきゃヤバいよ」
フィリップはいつになく真剣な表情でそう言う
他の3人も表情を引き締めた
「あの、さっきの人ってなんなんですか?」
「…さっきのは俺達以外の人間兵器だ」
キースが静かにそう答える
その言葉に由紀乃は驚く
「他にも兵器にされた人がいたなんて…」
震える声で由紀乃がそう言うとファルコは小さく俯きこう言った
「他の人間兵器は自らそうなった者も多い…。私達の様に勝手に器にされていない。奴らは戦争をゲームの様に楽しんでいるんだ」
ファルコの言葉に他の3人はギュッと拳を握り締め、苦しげに表情を歪める
由紀乃は人間兵器は彼等だけで他にはもういないものだと思い込んでいた
そして、いたとしても彼等の様に人を殺める事を嫌がっているものだと
戦争を楽しんでいるなんてとても信じ難い事だった
「人を殺める事を楽しんでるなんて…、許せない…!」
怒りに顔を歪める由紀乃
自分には何も出来ないことが歯痒かった
「…そうだ、ユキノ。言っていないことがあったんだ。渡人は魔力を持たない為オレ達の様な人間兵器を作る器に選ばれやすいんだ…。だから、無茶な事をしないでほしい」
フィリップは由紀乃の手を取り、真摯にそう伝えた
「人間兵器の…器…?じゃあ、フィリップさん達も元々は私と同じ渡人なの…?」
「いや、それはちげぇ。俺らは魔力が強いかったせいで目を付けられて器にされたんだ」
キースが静かにそう答えた
「さっきのレオニードは渡人だったと聞いている。彼は元の人格を破壊されているらしい…」
ファルコが哀しげにそう言った
彼等の言いたい事が由紀乃には痛いほど分かった
もしも、由紀乃が渡人である事が国にバレ捕まった場合、人格を破壊され新たな人間兵器に造り替えられてしまうのだ
その残酷な事実に由紀乃は震えた
とても怖い、だが由紀乃には彼等がいる
「私は捕まりませんよ…。だって貴方達が側に居てくれるんだから…!」
その言葉にハッとした4人
それぞれが表情を緩め、笑みを浮かべた
「当たり前だろ!俺らが守ってやるからな!」
「ユキノを守るのはオレの役目さ!キースは引っ込んでろ」
フィリップの口調が悪いのは気にしない事にしようと由紀乃は思う
「私達も全身全霊で守らせてもらうよ、ユキノ!」
「守るよ〜!」
4人にそう言われ由紀乃は今日1番の笑顔を彼等に向けた
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「…へぇ、アイツら渡人見つけたんか〜!しかもかわええなぁ〜…、奪ってやりたいわ」
近くの屋根から覗き見をしていたレオニードはそう呟き、姿を消した
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