第4話
拝啓 お母さん
私、由紀乃は何故か美形に迫られております
助けてください
敬具
ps.お父さんも呼んできて
由紀乃は4人の男達に丁重に扱われ居心地の悪さを感じていた
自分がきた世界というのはもしかして乙女ゲームか夢小説の世界だったのではないかと思うほどだ
「ユキノ、オレ達は普通の人間として生きていたくて国を裏切り亡命しているんだ」
フィリップがそっと頬を撫でながらそう語る
普通に語ってくれたらいいのにと由紀乃は思った
「俺ら気ままに旅してんだ。テメェも楽しめると思うぜ」
もう一緒に旅するき満々なんですね、キースさん…と由紀乃は心で呟く
フゥと軽くため息を吐きながら、由紀乃は4人にこう尋ねた
「元の世界に帰る方法とかあるんですかね…?」
その言葉に4人は動きを止めた
「…無いんじゃないかな?あったとしても返す訳ないでしょ?」
フィリップがそう言う
由紀乃は顔を引きつらせながら苦笑いを何とか浮かべた
「そうだよな…。ユキノは元の世界に家族がいるだろうし帰りたいだろう。フィリップ、わがままで彼女を困らせるな」
少し寂しそうにファルコがそう言う
由紀乃はまともな人がいて良かったと心の底から思った
すると黙っていたセルヒオがこう言う
「なら僕らと旅しながら帰る方法を探そうよユキノ!」
満面の笑みでそう言うセルヒオに不服そうにキースも同意した
相変わらずフィリップは不服そうだが3人に説得され、渋々納得した
だが由紀乃は知らない
セルヒオがフィリップに耳打ちで旅をしている間に由紀乃から自分達から離れたくないと言わせる様にしてしまえばいいと言っていた事を
結局はキースとファルコしか由紀乃の帰る方法を探そうとはしていないのだ
「今日はもう遅いから明日から探す事にしようぜー。んで、今日の飯は誰が担当だよ?」
キースがそう言うとファルコが小さく手をあげた
「んげっ、ファルコかよ…。今日くらいまともなもん作れよ…」
どうやらファルコは料理が苦手な様だった
「あの、私で良ければ作りましょうか?私の世界の食べ物しか作れませんが…」
由紀乃がそう立候補すると4人は目を輝かせる
話を聞くと4人共料理は苦手で今まで美味しい物を食べていないらしい
少しプレッシャーを感じながらも由紀乃は冷蔵庫の機能を果たしているらしい箱から材料を選び作り始めた
箱には野菜と魚や海老の様な物があった
幸い米などもあり由紀乃の世界の物と大差ない
足りない物などはフィリップに説明し、魔法で出してもらった
簡単なサラダと焼き魚、海老の様なものはエビフライにした
出来上がった料理を見て4人は目を少年の様にキラキラと輝かせ、料理をほうばる
「うめぇ!!!!今までの飯が嘘みてぇだ!!!!」
「ユキノは美しいだけじゃなく料理も上手なんだね!流石オレの女神…!」
「美味しい〜!毎日でも食べたいよぉ〜!」
「本当に美味しいよ、ありがとうユキノ」
大袈裟に褒めてくれる4人に由紀乃は少し照れながらも嬉しい気持ちで胸がいっぱいになった
「口に合ったみたいで良かったです!あの、これからお世話になるので料理は私が担当しますよ?」
「本当かい?キツい時は無理しなくていいからな」
ファルコはそう言うと由紀乃の頭を撫でる
由紀乃は元の世界にいる兄をふと思い出した
なんだかんだでこの人達といるのは楽しいと由紀乃は思い、これからの旅は大丈夫だろうと思い直した
その時までは
「ところでユキノ。今日は何処で寝るんだい?良かったらオレの部屋に来ないかい?」
今日1番のいい笑顔を浮かべたフィリップに何度目になるか分からない顔の引きつる感覚に襲われた
「あ?テメェの部屋なんか危ねぇよ!俺かファルコの部屋にしとけ!」
再び始まるキースとフィリップの言い争いに、由紀乃は無言でファルコの側に行った
「すみませんファルコさん、部屋ご一緒しても良いですか?」
「む、男女で同じ部屋というのは恥ずかしいがあいつらの部屋よりはマシだろう。変な事は絶対にしないと誓う」
真剣にそう言ってくれるファルコなら信用できるだろうと由紀乃は思い、しかし警戒は忘れない様にしようと誓った
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