豪雨
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今日は部活の奴らと帰ろう、と約束していた。全部で五人。
同じクラスに2人、後の二人を待つために教室で待っていると「外」から爆音が聞こえた。思わず振り返ると、「途切れる」ことも知らないような豪雨が辺り一帯を濡らしていた。
一瞬呆然とする。小学生の時にも遭遇したことのなかった天候にちょっと身体が竦んだ。手には、適当に買ったビニール製の傘。
・・・ありえない事に、こんな日に限ってお気に入りのコンバースを履いてきてしまって俺は、これまで感じたことのない後悔に襲われた。
その時、聞き慣れた声がやっと聴こえてきて、その能天気さに俺は色んな意味でなんだか腹が立ってきていた。
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中学生男子特有のノリで、俺は破天荒な雨の中を一歩も歩いていきたくはなかったのだが、それを一から主張する前に、馬鹿な輩どもは、稀に見る状況に目を輝かせていた。「・・・。」
けど、この雨は降り止みそうもなかった。玄関先には徒歩で帰宅組が何組もたむろしていた。彼らはもう少し待ってからいくだろう。でも、コイツらにはそんな常識は通じなかった。傘を持っていない奴もいるのにも関わらず、空が光った途端唐突に柳瀬が走りだした。目で促され、全く心の準備すらしないまま俺達は暴風雨の中に繰り出すことになった。
校門を抜けて、右へ。容赦ない雨が俺達の足元を滅茶苦茶にする。皆何が楽しいのか笑っていて、無我夢中でただ走った。
自然と辿り着いた次なる軒下――ピロティーに俺達は向かった。
♢
そう、そこで俺は不自然な彼女を見かけた。いつも俺が見る姿とはまるで違っていた。
彼女は、隣の人と饒舌に喋っていた。
それで、雨の中走ってきた俺達には気づいてないみたいだった。
——— こんな楽しそうに喋る子だったのかと驚きが先に来た。
どうしてだかそこには悔しい気持ちもあった。
──それから俺は彼女のことを気になっているのだと気づいた。笑顔があまりにも意外すぎて。
♢
でも、それからどれだけ年月が経ったんだろう。大事なところで決めきれない俺は、結局佐倉さんに何も言うことが出来なかった。その燻った想いが、作品を作る原動力になって、それで数年経って個展を開くきっかけとなった。
だけど、俺的には複雑でしかなかった。
何年も腐りきっていた俺に、巡ってきたまたとない契機だとは思うけど、自分の作品は初めて自分から好きになった人に何も伝えることが出来なかったという後悔を甦らせるから。
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