DAY24 額縁

 なんかあったのかな。


 愛衣あい真衣まいが無理やり笑顔でいることに気づいてしまった。


 しんのノートを渡しに行って、帰ってきてから真衣の様子が少しだけいつもと違う。

 いつも以上に笑顔を見せ、勉強に身を入れようとしている。

 だが少しから回っている。


 多分、そう感じるのは、自分がから元気をでいようとしているときと似ているからだ。


 真と何か話して、何かが変わってしまったのか。


 しかしそれを指摘して尋ねたとしても、真衣はきっと「何もないよ。大丈夫」なんて答えるに決まっている。


 だったら、愛衣にできることは、空元気を本当の元気に少しだけでも近づけてあげることだろう。


「ねー、真衣ってオカルトも読むっけ?」

「えっ? なんで急に?」


 ノートに向かいながらもぼんやりとしていた真衣が、はっとして愛衣を見る。


「ちょっと前にテレビ番組で事故物件とか、泊まりたくない旅館やホテルの部屋とかやってたんだよね」


 愛衣は尋ねたいことの前置きを説明した。

 よく、旅館やホテルの部屋の壁に掛けられている絵の、額縁の裏にヤバいものが貼ってあったという話がある。お札や、もっと怖いのは呪いのアイテムのようなものだ。


「そういうのって本当なのかなぁって、ふとあれを見て思い出したの」


 愛衣は自分達の部屋に飾っている小さな絵を見やった。夏の海岸の絵でとても綺麗だ。

 真衣も同じように絵を見て、笑った。


「あれって、子供部屋が殺風景にならないようにってお母さんが昔気に入って買った絵を飾ったんだっけ」

「そう言ってたねー。どこの海岸だろうね」


 少しの間、絵に見入った後、「で、さっきの話だけど」と愛衣は話を戻した。


「ネットでちらっと見た話でよければなんだけど」


 真衣は愛衣の疑問に答えてくれた。

 結論から言うと、旅館やホテルの部屋の絵の裏に何か貼ってあることは、あるそうだ。

 大体は以前に泊まった客がいたずらで仕掛けていくんだそうだが、中には本当にいわくつきの部屋なので、魔除けのために護符を貼っていることもあるそうだ。


「ふーん。……まさかあの絵の裏にも何かあったりして」


 愛衣は笑いながら立ち上がって絵に近づいた。

 左手にこっそりメモ用紙を握って。


「まさかぁ」

 真衣も笑って愛衣を見ている。


 額縁を壁から外した時に気づかれないようにメモ用紙を額縁の隙間にそっと挟む。


「あっ」

「えっ?」

「見てっ」


 愛衣は大げさに驚いてみせて、額縁を裏返して真衣に見せた。

 愛衣が挟んだメモ用紙を見て真衣はぎょっとなったが、そこに書かれてあるいたずら書きを見て、大笑いした。


“テスト退散!”


「ちょっと、愛衣ちゃん!」

「びっくりした?」

「びっくりしたよ、もー」


 二人で笑いながら、ここで本当に笑えるなら、まだ真衣は大丈夫なのかな、と愛衣はほっとした。

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