DAY20 地球産

 民間の宇宙船が打ち上げられて、搭乗している日本人が国際宇宙ステーションに半年ほど滞在して実験をするというニュースが流れた。


 父が興味深そうにニュースに見入っている。

 あぁ、また宇宙のロマンモードになっているな、と愛衣あいは笑みを浮かべてテレビ画面と父の後ろ姿を見つめた。




「ほーんと、うちのお父さん宇宙好きなんだよね」

 翌日の帰り道で愛衣が話題を切り出した。


「でも一度でいいから宇宙から地球見てみたいとか思うよなー」

 しんが話に乗ってきた。


「どうも宇宙船とかは窮屈で不便そうだとは思うけど、地球を見てみたいのはあるな」

 武瑠たけるも同意している。


 愛衣も真衣まいも、宇宙に行った人が映してくれた地球を見るだけでわりと満足なので男子のロマンは共感できない。理解はするが。


「でも、宇宙人とかいるなら会ってみたいかも」


 真衣が父とは違うロマンを発揮している。


「宇宙人ったって、友好的ならいいけど攻めてきたら太刀打ちできないよな」

「こういう時に挙げられる宇宙人は友好的なのに決まってるじゃない」


 武瑠が言うのに愛衣はきっちりと訂正してやった。


 そこから話は「友好的な宇宙人に地球のお土産を渡すなら何がいいか」に変わっていった。


「俺はゲームかな。全世界で遊ばれてるようなヤツ」


 一番手は真だ。


「電源は?」

「ポータブルにしたらいいじゃん。バッテリーなくなったらあとは自分達でどうにかしてねー」


 後のことは宇宙人に丸投げなノリに愛衣は笑った。


「そんな笑うけど、じゃあ武瑠は?」

「地球らしいお土産だったら、やっぱ食べ物じゃないか? 世界の代表的な食べ物を上げたら喜ばれるかな」

「それだと、食べたらなくなっちゃうじゃないか」

「ゲーム機だって遊べなくなったら意味ないだろ」


 いー、とわざと歯をむき出す真に武瑠はつんと斜め上を向いて応える。


「真衣は?」


 いがみあう男子は放っておいて、愛衣は双子の片割れに尋ねた。


「わたしは……、本、かな。面白くて素敵な小説を読んでもらいたい。絵でもいいかな」


 予想通りの答えに愛衣はうんうんとうなずいた。


「やっぱり予想されちゃってた? それじゃわたしも愛衣ちゃんの答えを当てちゃおうかな」

「お、いいねー。なんだと思う?」

「お花じゃない?」

「わぁすごい、あたりー。なんで判ったの?」

「愛衣ちゃんわりとお花好きでしょ。何気に花言葉とかよく知ってたりするし」


 花好きを公に話したことはないが、普段の何気ない会話などで真衣には筒抜けだったようだ。

 自分の「好き」が理解されていることって結構嬉しいものだなと愛衣は思った。


「結局、こういうのって自分の好きなもの答えるよね」


 愛衣が綺麗に締めくくったが「それだと俺はまるで食いしん坊みたいじゃないか」と武瑠一人が異を唱えていた。

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