DAY19 カクテル
夜、夕食の後で母は食卓にチーズやクラッカーを並べだした。
何かのパーティ? と双子が顔をかしげる中、母が出してきたのは今日解禁になったワインだ。
父はご満悦な顔をしている。
「あー、そういえば夕方のニュースで言ってたっけ」
別にほしいとは思わない。だが両親が、特に父がこういったイベント的なものに飛びついて喜んでいる姿はめったに見られないからだ。
「あれ? 毎年解禁日に買ってたっけ?」
「ううん。今年はなんとなくね。ほら、ちょっと世間が大変で暗い感じじゃない? せめて家の中でちょっと盛り上がっちゃおうかなーって」
「俺はうまい酒が飲めるならこれから毎年やってもいいぞ」
両親の応えに真衣も納得顔だ。
「あなた達には、これね」
母が出してきたのは三種類のジュースだ。ぶどう、オレンジ、パイナップルのジュースをグラスに混ぜ合わせて輪切りのオレンジをふちに添えた。
「母特製、ノンアルカクテル完成」
「かわいいー」
「すごーい。ほんとにお酒みたい」
愛衣も真衣も喜んで、再び自分達の席に戻った。
家族全員での飲み会なんて面白い。
普段はあまりしっかりと話さない父とも話が進んだ。
父は天文に興味があるのは知っていたが、子供の頃は宇宙に携わる仕事に就きたいと本気で思っていたとは知らなかった。
「おまえ達も勉強はしっかりしておいた方がいいぞ。今はなくても、就きたい職が見つかった時に、成績足りないからいけませんでしたーでは悔しいぞ」
父の言葉に双子はうんうんとうなずいた。
「そういえばもうすぐテストじゃないのか? どうだ? 大丈夫か?」
「よしてくれ、酒がまずくならぁ」
愛衣のおどけた返しに笑いが広がった。
「冗談はさておき、まずい点数とるわけにもいかないしそろそろ勉強しますかぁ」
「
愛衣と真衣はグラスを持って、そろって部屋に引き上げた。
キッチンでは父が饒舌になっている気配がする。
さすが十四年も娘をやっていると、引き際は心得ている双子であった。
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