DAY14 うつろい
家に帰って課題に取り組んでも、夕食を食べている時も、
「これはまずい」
思わず独り言が漏れる。
「何が?」
真衣に尋ねられて愛衣は「あー、明日の理科の実験結果発表」とごまかした。
理科の実験結果発表は実際明日なのでそれは嘘ではない。
「うまくいかなかった?」
「そうなんだよ。班の子が一人ふざけててさー」
「今、
「うん。ふざけてたのは別の子」
ごまかしながら、そうだ、と愛衣は閃いた。
「ちょっとタケちゃんと相談してこようかな」
「あー、そのほうがいいかもね」
真衣がうなずいてくれたので渡りに船とばかりに愛衣はノートを持ってお向かいの
「こんばんはー。夜分にすみません」
「あら愛衣ちゃん。うちくるの久しぶりねー」
武瑠の母は嬉しそうに挨拶をした後、武瑠を呼んでくれた。
「……来ると思ってた」
玄関に出てきた武瑠は、やれやれといった顔だ。
「話、長くなるなら上がってもらいなさい」
武瑠の母の言葉に甘えて、愛衣は武瑠の部屋に通してもらった。
「わぁ、ほんと久しぶり。けどそんなに変わってないね」
「一年も経ってないのにそんなにがらっと変わるわけないだろ」
「あ、これ、六年生の時に作ったオルゴールだ。まだおいてるんだねー」
勉強机の端に置いてあるオルゴールを懐かしそうに手に取った愛衣に、武瑠は「で?」と話の本題を促した。
「で、って、来るのが判ってたなら用件も判ってるんじゃない?」
「真の好きな相手の話なら、前にも言ったとおり――」
「わたしの予想が正しいなら、このままじゃ
武瑠は言葉を失った。
「真衣、好きな人がいるみたい」
「そうなのか」
「誰かは知らないけど。でも鎧塚じゃないのは態度見てれば判るよね」
「そうだな」
それ以上何を言えばいいのか判らない。
武瑠も何も言わない。
部屋はしんと静まった。
その静けさがなんとなく嫌で、愛衣は笑った。
「なんだろうね、好きとかどうとか全然考えないで、みんなでワイワイやってたのってすごい昔みたい」
「そうだな。けど、みんな変わってくものだからさ」
「タケちゃんは中二病だしねー」
「それはおまえ――」
武瑠が勢いよく何かを言いかけたが、そこで言葉を切った。
「それは?」
「それは、うん、まぁ、そういう年ごろなんだよ」
「自分で言っちゃうか」
どことなく緊迫した雰囲気がふわりと緩まった。
「真と真衣ちゃんのことは、とりあえず見守るでいいんじゃないか」
「そうね。わたしもそれがいいと思う」
二人は見つめあってうなずいた。
「ところで、真衣のことは今でも真衣ちゃんなんだねぇ。わたしのこともわたしがいないところでは愛衣ちゃん呼び?」
「ちょ、なんで今そこつっこむか」
「なーにそんなに慌ててんのさ」
「いいからおまえもう帰れ。長く留守にしてたら真衣ちゃんが怪しむだろ」
「はいはーい。それじゃまた明日ー」
武瑠の部屋を辞しながら、変わらないものもあるよねと愛衣は微笑んだ。
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