DAY9 一つ星
今日もいつものように四人で下校する。
「愛衣ちゃん、さっきから俺をチラチラ見てるけど、何かなー。もしかして俺にホレた? なーんてね」
ありがたいことに真の方からきっかけをくれた。
それにしてもそんなにチラチラ見てたかなと疑問に思いつつ、切り出した。
「あんたに惚れるとかないから。今日さ、放送してたよね」
「えっ、聞いててくれたんだ? 愛衣ちゃんも武瑠も外だし、真衣ちゃんの方は美術室の放送は切ってるって話だったし、誰も放送聞いてないと思ってたよ」
「真の放送、どんなだったんだ?」
武瑠が興味深そうな顔をしている。中二病真っただ中でもやはり一番の友達のことは気になるのか。
「うまかったと思うよ。つっかえてなかったし声も聞き取りやすかった」
第一声の誉め言葉に、まるで地獄の審判を受けるような顔だった真が、ぱぁっと笑顔になった。
「内容はどうだった?」
「面白かったよ。投稿箱にゴミ入れる人とかいるんだ?」
「そうなんだよー。困っちゃうんだよな。中にはご丁寧に紙屑につまんねーボケとか書いてるのがあるんだぞ。そんなの見つけた日には部員お通夜状態」
それはひどいと愛衣達は憤慨した。
「生徒の投稿読むのって、読むのどれにするか事前に選んでるの?」
「うん。大体四つか五つまでで、多かったら部員でどれがいいか選んでる。少なかったらその日の担当はアドリブ多くなるから困るんだよねー」
ちなみに「幸運だったこと」は八つ来てたので、今日と来週で四つずつだそうだ。来週の担当者はあらかじめ決まっているのでちょっと楽そうだ。
「じゃあ、今日読んだのは
「そ。同じような内容のはみんなと相談して来週分と分けたけど、その他は俺が選んだ」
どれが部員と相談した投稿で、どれが真の選んだものだろうか。
こうなってくると断然興味が高まる。
「好きな人が自分を好きだったってのは? その幸運を俺にくださいーなんて言ってたけど」
「あー、あれはかぶってたヤツ」
あっさりと覆されて、愛衣はちょっとがっかりだ。
「なーんだ。鎧塚の本音ならからかってやれると思ったのに」
言うと、真はにやっと笑った。
「恋愛運をくださいっていうのは本音だぞ。楽しそうだろ? カノジョとかいると」
「好きな相手とかは?」
「ふふーん、それは、ナ・イ・ショ」
「ウザっ」
「ひどっ」
愛衣と真のやり取りに真衣と武瑠も笑っている。
「いつか俺にも、あの綺羅星がごとく輝ける相手が待っているのだ!」
芝居がかって真が指さした先には、……星はなかった。
「星ないしっ」
「あっれれー? おっかしいなー?」
四人の笑い声が重なった。
夜、ふと愛衣は窓に目を向ける。
住宅や外灯の光が明るくなって見えにくくなったが、きっと空にはたくさんの星が輝いている。
真もあの場面で指さすなら真上を指さしておけば北極星ぐらい見えたかもしれないのに。
彼の綺羅星探しは難航しそうだ。と愛衣は笑みを漏らした。
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