第8話 罠 ~ わな ~

香崎君は出席するようになったものの、彼の企みななのか、考えかは分からないけど、妙にベッタリで……



ある日の事、香崎君は私のマンションの建物の前に現れた。




「優佳ちゃん」


「うわっ!な、何?ていうか気になっていたんだけど…香崎君って私の事、名前で呼ぶよね?あえて言わなかったんだけど…」


「良いじゃん!なあ、それよりご飯食べに行かね?」


「えっ!?生徒が先生誘うかな?」

「良いじゃん!貸切だし美味しいもの食べさせてやるよ。一人暮らしだし。先生コンビニ弁当とかで大したもの食べてないんでしょう?」




ギクッ

図星だ。



「料理作るの下手そうだし」

「こう見えても私料理はします!」

「じゃあさ、1回食べさせてよ!優佳ちゃんの手料理」

「特別な人になったらね」

「えっ!?」


「初めての手料理とかって、初めての夜を明かす時位でしょう?後は、本当に恋人として付き合っていないと無理な話でしょう?簡単に食べさせられません!」



「………………」



「ともかく、人の家まで来てもらっても困ります!帰って!」



香崎君は、私の返事も聞かず車に強制に乗せた。



「ちょっと!香崎君、何を考えているの?」

「別に」

「こんな所、誰かに見られたら困るんだけど」

「それは、お互い様じゃね?」




そして、私はご馳走になり帰りは送って貰うのだった。


それから何度もこういう事があり、ある日、彼の家に連れて来られた時



「俺、先生の事、マジになっちゃおうかな?」



ドキッ

突然言われ驚き胸が大きく跳ねた。



「えっ?」

「この際マジで付き合わない?」

「断ります!気持ちは嬉しいけど、それに応える事、出来……」



キスをする香崎君。



ドキッ ドサッ

ベッドに倒され私の両手を押えつけ股がった。


「ちょっと香崎君……何考えて……」

「初めてじゃねーんだし、逆に久しぶりだから盛り上がるんじゃね?」

「何言って……」



再びキスをし、首スジに唇が這う。



≪流されたら駄目だ!≫



「……っ!」


「禁断の恋も悪くないな?そんな顔されたんじゃもっと先生の違う顔見て見たくなる」



再びキスをされ深いキスをされた。



「ちょ、ちょっと……お願い……辞めて……香崎君っ!」





その時だ ――――



ガチャ

突然、部屋のドアが開く。



「最近、裕矢の様子がおかしいと思ったら、そういう事でしたのね?」


「チッ!突然の帰国かよ…」




小さく舌打ちをし私にしか聞こえない位の声で言うと私から離れる香崎君。


私は慌てて起き乱れた洋服を整える。




「何?俺の許可なく人の部屋に勝手に入って来んなよ!」


「お黙りなさい!そちらの方は?どちら様です?」



ちょっときつい口調で私に尋ねる。



「すみません。挨拶が遅れました。私、香崎 裕矢さんのクラスの担任の教師をしている…」


「あー、あなたが、管崎 優佳さん?」

「は、はい……」

「あなた……結婚して子供もいらっしゃるんでしょう?」


「は、はい……」

「あなたの事、徹底的に、お調べさせて頂きましたわ」



「………………」



「現在は既に離婚をされて、子供の親権はあなたではなく父親。これはどういう事かしら?もしかして……異性に対してだらしない。そういう事かしら?」


「違います!」


「じゃあ、何故、ここに一般の方がいるのかしら?」


「それは……」




私が事情説明した所で信じてもらえないだろう?




「もし、お付き合いされているとなれば、こちらにも考えがあります」

「お付き合いしていません!先生と生徒であり私はそんなつもりは一切ありません!」


「そうですか…まあ調べれば分かる事。この女をつまみ出しなさい!」


「結構です!あなた達につまみ出される前に、すぐ帰りますから!失礼します!」




私は足早に部屋を出て行った。



「香崎 裕矢…あんたの望みは何なの?」



私は香崎家の屋敷を見つめ、そう呟くと帰って行った。




「裕矢っ!あなたはどういうおつもりですか?香崎家の長男でありながら……前にも言ったはずです!むやみに一般の方を部屋にいれるなと」


「今回は俺からではありませんよ。彼女から

誘惑してきたんです」


「まあ! つまり…異性にだらしないという事なのかしら?」

「ともかく休ませて下さい」




彼の企み?


一体何を考えているの?



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