第2話 子供の存在
「可愛い~♪」
他人の子供を見ると微笑ましく思える。
すれ違う親子と私。
「…だけど……私は……子供を…愛せない…」
親子の背中を見つめ私は呟く。
「…子供……か…」
それはある日の18歳の冬。
私が高校卒業前にあった話に遡る。
「妊娠5ヶ月ですね」
そう病院の医師から告げられた。
「…5ヶ月…」
突然の事で驚きを隠せなかった。
病院を後にトボトボ歩いていた。
「…私に…子供…育てられないよ…ていうか…自信なんてない…」
夜の街
私は夜の街並みをぼんやりと見つめる
「……みんな…幸せなのに…私は……」
私はとあるビルの屋上にあがる。
「………………」
冷たい冬の風が私の頬や体を当てる。
周囲の人が私を見つめる。
ざわつく街。
「………………」
そんな街の中
一人の男の子が私を見かけた。
「おいっ!車を止めろ!」
「はい?お坊っちゃまどうされたんですか?」
「悪い。すぐ戻る」
車が止まると足早に向かう。
そして―――
「おいっ!」
ビクッ
振り返る私。
「こ、来ないで!」
「死ぬのはあんたの勝手だけど、変な真似しない方が良くねーか?」
「あなたに何が分かるの?私は死にたいの!」
「だったら死ねば?」
「えっ?」
「死に方、すっげー悲惨だぜ?」
「べ、別に良いですっ!私の体なんだからっ!」
「………………」
私は男の子に背を向け飛び降りる準備をする。
そして―――
「きゃあああっ!」
騒然とする街の人達。
ドサッ
「……して……どうして助けるのよ!」
「知らねー、体が勝手に動いた」
「何、それ……」
「何があったかは知らねーけどさ、命絶って何になんの?」
私は涙がこぼれ落ちる。
スッ
涙を拭う男の子。
「その涙に…真実があるんじゃねーの?」
「真実なんて…何も…」
スッ
抱きしめられる私。
「俺には……何も出来ねーけど……死のうなんて考えない方が良い……あんたはまだまだこれからじゃん。学生だろ?」
「……それは……」
パサッ
自分の洋服を脱ぎ私に羽織らせ、キスをした。
「じゃあ」
「……待って……洋服……」
「あんたにやる。両親がくれたプレゼントなんて俺にはいらねーし」
「えっ?」
「あんたもいらねーなら捨てても構わない」
そう言うと去って行った。
「………………」
名前も知らない
見ず知らずの男の子
彼は…………
今…………
何処で…………
何をしているのだろう…?
こうして
ここにいられる事は
彼のお陰だって事…
あの時
彼が助けてくれなければ
私は今……
ここには
存在していなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます