第3話 王国歴1926年5月12日
『王国歴1926年5月12日』
親愛なるあなた様
シルターがやたら、この日記を盗み見しようとするので、今日はあまり長々と綴ることができません。
明日1日…どうにか乗り越えれば、念願の《竜使い》になる事ができるのです。
嬉しいです。嬉しいはずなのです。
ですが…
あれ……。
あれれ……。
視界が歪んで…よくみえないよ。
シルターの方に背中を向けて、寝てるフリをしながらペンを進める。生ぬるくて、少しだけしょっぱい水がぽたり、ぽたりと日記帳に落ちる。
喉元に込み上げてくる熱い塊を必死に呑み込んで、すぐそこまで迫ってくる汚い嗚咽を、ぐっと噛み殺す。
せっかく書いた文字が溶けて滲み、濡れた箇所は紙がぶよぶよに波打った。
……シルターとお別れ?
それを考えると、胸にぽっかり穴が空いたみたいに、何も考えられなくなる。
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