第13話 本当の気持ち
結局リカは、タクミに全てを話すことにした。
『大丈夫、タクミは私の味方なんだから』
小学生にとっては、父親と血の繋がりがないこと、母親のウソ、本当の父親の存在、どれを取っても簡単には飲み込めないだろう。
タクミの手をしっかりと握りしめながら、リカはゆっくり話した。
ウタはタクミが誰の子であっても、自分の子として愛していたこと。
ミナミもまた、愛する人の赤ちゃんである、タクミをどうしても欲しかったこと。
そして今、本当の父親がタクミを愛そうとしていること。
「……タクミはどうしたい?」
リカが聞く。
タクミは黙っていた。
「……リカちゃんはどう思う?」
タクミが聞く。
「私はタクミに決めて欲しい」
リカは優しく答えた。
タクミは顔をあげる。
「なんで?」
その言葉にリカは驚く。
「なんでって、タクミの人生だもん」
「……違うでしょ」
タクミは少し怒ったように言った。
「全部親の都合だろ!」
リカはタクミを見つめていた。
「リカちゃんだってそうだよ。俺に決めさせるとか言って、本当は思ってるんだろ、どうやって俺を出て行かせようかって!」
リカは黙っている。
「よかったじゃん、リカちゃんはもう親でいる必要ないし。大体、俺は好きだったパパの子でもない訳だし?」
タクミがこんな感情を出すのは珍しい。
大人の気持ちばかり気にしてきた子なんだな、リカはそう思った。
「本当の事言ってよ、リカちゃん」
「うん?」
「……俺にどうして欲しいの?」
思わずリカはタクミを抱き締めた。
タクミは私に言わせて納得しようとしているんだ、リカはそう思った。
「本当に、本当のこと、言ってもいいの?」
「うん、言ってほしい」
タクミは覚悟を決めたように、リカの胸の中から離れた。
「リカちゃんがママのところに行け、って言うならそうする」
「……」
リカは、ずっと考えていた自分の気持ちを、タクミに話すことにした。
正直、これが正解なのかは解らない。
だが、タクミにウソは通用しないし、リカ自身も、もうウソを重ねたくなかった。
「……両親がそろった家庭がいいと思う」
タクミはリカを見つめている。
「……わかった」
「でも、行かないでほしい」
「え?」
驚いて顔を上げたタクミ。
リカはそっと頭をなでる。
「ミナミじゃなくて、私を選んで欲しい」
そう言うと、リカは思わず泣いてしまった。
「……どうして?」
タクミは困ったように言う。
「ウタも、ミナミを選んだ」
「え?」
「みんな、ミナミを選ぶんだよ、私の好きな人はみんな」
そこまで言うと、リカは少し冷静になった。
バカみたいな事、言ってる。……でも。
「お父さんもお母さんも、友達も。それからウタも」
リカは涙を拭いて言った。
「子どもみたいかもしれない。単なるミナミへの嫉妬なのかもしれない。それに……こんな事言ったら、タクミが困るのも解ってる。でも私の本当の気持ちだよ」
「私はタクミを自分の子にしたいと思ってる。だから、だからミナミじゃなくて、私を選んで下さい……」
リカはそう言うと、また声をあげて泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます