第22話 王都武道会 その1


 カイはその後はキアナ周辺にて魔獣を討伐を日々行い刀と魔術のスキルを上げていった。


 そうして王都での武道会の開催まで2ヶ月を切ったある日、カイはギルドに顔をだし、ギルマスのシンプソンに王都に向かうと告げた。


「そうか。ここから王都まで1ヶ月ちょっと、現地に慣れる時間も見るとちょうどいいタイミングだな」


「武道会の準備はもちろんだが、王都で刀に関する情報収集もするつもりだ」


「ああ。それがいいだろう。カイが王都に向かうなら向こうのギルマスに手紙を渡してくれるか?」


 そう言うと執務机にすわって手紙を書き、封筒に入れて封印すると、


「これを渡してくれ、王都のギルマスはキンバリーだ」


「わかった」


 受け取った手紙をアイテムボックスに入れると、


「では行ってくる」


 とギルドを出て一路北の王都を目指す。


 肩にのっているカーバンクルのクズハに


「さてと、王都はどんなところか。王家宝物の中に刀があるといいな」


 

 そうして整備された街道を歩き、夜は村で泊まったりや野営をしたりして、キアナの街を出て4週間と数日が過ぎた日の昼前、王都がカイの視界に入ってきた。


 城壁は高く、そして長く端が見えないほどに伸びていて王都の巨大さがわかる。


 城門で並んで待つこと数時間、ようやくカイの番が来た。衛兵にギルドカードを見せるとランクAにびっくりした表情をしてそれからカイを見、


「シノビか、王都では珍しいな、武道会に参加するのかい?」


「そうだ」


「頑張れよ」


 そう言ってカードを返してもらい、クズハとともに城内に入っていく。


 キアナの街も大きいと感じていたカイだが、王都はキアナとは比較にならないほどの大きさで、街には大きな通りが縦横無尽に走っていて、行き交う人の数も多い。


 左右の店を見ながら肩にカーバンクルを乗せて通りを歩くカイを街の人や冒険者が見ていく。


「珍しいな。シノビだ」


「ジョブの名前は聞いてたけど、実物のシノビを見るのは初めてだ」


 などと囁きあっているのを横目に、カイは目指すギルドの建物を見つけて扉を開けて中にはいっていく。


 王都のギルドだけあって建物も大きくそして中も広い。長めのカウンターには4名の受付嬢が座り、その右の壁にはランク毎の掲示板がありクエスト表が貼り付けてある。


 カウンターに向かって左手はそのまま打ち合わせ兼酒場になっていて、昼過ぎとはいえそれなりの冒険者達がそこに座って飲み物を飲んだり、打ち合わせをしている。


 その彼らも扉を開けて中に入ってきたシノビの姿を見ると会話を止めて、カイをじっと見る。


「シノビか…確か辺境領にあるアマミの街だったよな」


「あれが刀という武器か。それにティムしてるのはカーバンクルだな。珍しい」


「人に懐かないと言われてるカーバンクルをティムしてる時点でそれなりの実力者ってわかるな」


 カイを品定めする様に冒険者の鋭い視線がカイに注がれるが、全く気にせずにカウンターにいくと、手の空いていた受付嬢の前に立ち、ギルドカードを見せ、


「辺境領のキアナから来たカイという。キアナの冒険者ギルドのギルドマスターからこちらのギルドマスターに手紙を預かっているので持ってきた」


 そう言ってアイテムボックスから手紙を出すとそのまま受付嬢に渡す。


「お待ちください」


 そう言って奥に引っ込んでいった受付嬢はすぐに戻ってくると、


「こちらにどうぞ」


 とカイをカウンターの奥の部屋に案内した。


 カイが部屋に入るとすぐにその部屋に男性が入ってきて、


「ここのギルマスをやっているキンバリーだ」


 カイと握手を交わしてソファに座ると、カイが渡した手紙をテーブルにおいて 


「間違いなく手紙は受け取った。面倒かけたな」


「いや。手紙を運ぶだけだから何ら問題なかった」


 カーバンクルのクズハはカイがソファにすわるとその腹の上で腹這いになってリラックスしている。


「そうか、ところで手紙にはカイはランクAと書いてあったが悪いがギルドカードを見せてくれるか?」


 言われるままにギルドカードをテーブルに置くとそれを手に取るギルマスのキンバリー。


「確かにランクAだ。シノビでランクAか。シノビ自体も少ない上にランクAも少ない。相当の実力者だな」


 返してもらったカードをアイテムボックスにもどし、


「その辺りの評価ってのは周りがしているから、自分ではよくわからない」


 カイは思ったままを口にする。


「ギルドがランクAと認めたならそれはかなりの実力があるってことだ。

 知っていると思うが、ランクAってのはそう簡単には成れないからな。カイが活動しているキアナは辺境領で周囲の魔物のレベルが高く、ダンジョンも多い。そう言う場所で鍛えられた冒険者が集まっている場所でランクAになっている。当人の感覚はともかく周囲から見たら相当の実力者ってことになる。この街でもランクAの冒険者は3名しかいない。」


「なるほど」


「それで王都に来た目的は、1ヶ月後の武道会かい?」


 話題を変えてきたギルマス。


「そう。それに参加するためにやってきた」


 そう言うとギルマスはカイを見て


「参加資格はランクB以上だ。カイはランクAだから問題ない。このギルドからも何名か参加するからカイの分も一緒に参加申請しておいてやろう」


「それは助かる」


 ギルマスに頭を下げると、


「申請くらいたやすいものさ。それと王都での宿もないんだろう?ギルドの職員に言って宿を予約しておいてやる。後で職員に聞いてくれ」


「何から何までかたじけない」


 ギルマスのキンバリーはドアを開けて職員に宿の予約を依頼すると席に戻り


「聞いていると思うが武道会はここ3年王国の騎士が優勝している」


 カイは頷き、


「何でも女性で桁違いに強いという話しは聞いている」


「その通りだ。王都の王国守備隊の隊長をしているイレーヌという女剣士だが、小さい頃から天才と言われた大剣の使い手だ」


 カイは武道会について疑問に思っていたことをギルマスに尋ねてみる。


「1つ聞きたかったんだがこの武道会ってのは武器だけで戦うのか? 魔術は禁止なのか?」


 カイの質問に


「いや、武器、魔法の何を使ってもよい。今お前のお腹の上にいるティムしている動物を使ってもよい。何でもありだよ」


「じゃあどうして魔術使いは優勝できないんだ?」


「魔法の詠唱時間だ。詠唱を唱えている間に相手はすぐ目の前まで来てしまう。そして詠唱中断されてそのまま倒されてしまうのさ」


(魔術は無詠唱じゃないのか。そりゃ詠唱してたら勝てないはずだ)


 ギルマスの説明で納得したカイ。


「過去の例から見るとランクAの冒険者は予選が免除されている。おそらくカイもそうなるだろう」


 そして


「武道会までまだ1ヶ月あるが、その間はここ王都で活動するってことでいいのか?」


「王都の雰囲気に慣れてそれから王都近郊で魔獣を倒して身体を動かすつもりだ」


 ギルマスに礼をいって部屋を出て、カウンターに戻ると、受付嬢が宿屋を手配してくれていてその場所を聞く。

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