第13話 クエスト 盗賊退治 その2


 馬車の御者でもあり、ギルド職員でもある男性から縄を受け取ると捕まえた盗賊を次々と縛り上げていく。結局戦闘で1名死亡させたが、残り14名は殺さずに捕まえる事ができた。


「カイの予想通りだ。この東に奴らのアジトがあるらしい。人質はいないと言っているが、とりあえずアジトを探索しよう。探索は俺とカイとシルビアで行こうか。他のメンバは盗賊を馬車に放り込んだらここで待機してくれるか」


「わかった。気をつけてな」


 カイはイーグルとシルビアの3人で森の中を山裾に向かって進んでいく。


「前方に魔獣の気配。強くはなさそうだ」


「了解」


 シノビの能力である気配探知。狩人程ではないがそれでも周囲500メートル内であれば気配を嗅ぎ取る事ができる能力だ。


 ランクCのオーク2体をさっくりと倒しさらに森を奥に進んで行き、小1時間程経った頃

山裾に明らかに人工で作られた石を積んだ門が見えてきた。


「気配はなさそうだ」


「じゃあ行くか」


 3人で門をくぐって洞窟に入っていく。広い洞窟は奥に進むにつれて饐えた汗臭い匂いが充満してきて


「ひどい匂いね、これ」


 シルビアが思わず口にする。

 

 そして通路の奥には寝床らしき場所とその奥に2つの部屋があった。1つはボスの部屋らしくそしてもう1つの部屋には


「がっつり貯め込んでやがるな」


 そこには盗んだ金貨が麻袋から溢れる程に入っている。


「カイ、悪いが片っ端からアイテムボックスに放り込んでくれるか?」


 言われた通りカイはそこらにある戦利品と思われる品物を全てアイテムボックスに放り込みながら


(刀は無いな)


 その後洞窟の中をくまなく探したが、隠し部屋もなく人質はいないと言うことを確認してアジトを出て馬車の待っている街道に戻っていった。


「人質はいなかったが、ガッツリ貯め込んでだよ」


「取り敢えずキアナに戻ろうぜ」


「そうしよう」


 その後縛り上げた盗賊を馬車に乗せ、冒険者は馬車の周囲を歩いて、4日後の昼前にキアナの街に戻ってきた。


 門番をしている衛兵に盗賊を引き渡しているとギルマスのシンプソンがやってきて、


「捕まえたのか」


「1名は死亡。14名を捕まえた。あとアジトも見てきたが人質はいなかった」


 リーダーのイーグル。


「よくやってくれた。盗賊の引き渡しが終わったらギルドに来てくれ」


 その後今回の盗賊退治に参加した全員がギルドの2階の会議室に入ると、


「よくやってくれた。各自のギルドカードを預かろう。それから報酬を渡す。生きたまま捕まえた盗賊が14名だから金貨14枚も追加される」


「割りのいいクエストだったな」


ハンスが言うと他のメンバーも頷く。


「まぁ、お前らにとってはそうだろうな。これで商人や旅人が安心して通れる様になる。

領主も喜ぶだろう」


 イーグルがギルマスに、


「ところで、アジトにあった戦利品、金貨がメインだけどこれらは全て俺たちで分配していいんだな?」


「ああ。そういう約束だ。この会議室を使っていいぞ。それから余ったのはギルドで引き取るぞ」


 ギルド職員が各自のカードを持ってきて、それと一緒に報酬を持ってきた。


 金貨10枚ずつを手渡すと、


「あとはお前らで配分してくれ。まぁこのメンツだから揉め事にはならないと思うがな」


 そう言ってギルマスと職員は会議室を出ていった。


「じゃあまずいくらあるか確認しよう。カイ、ここに出してくれるか?」


「わかった」


 会議室のテーブルの上に盗賊のアジトから持ち帰った金貨や雑貨、装飾品を並べていく。積み上げられていく戦利品を見ながら周囲から声が上がる。


「結構持ってたんだな」


「それだけ商人達を襲ってたってことでしょ」


 テーブルに置かれた金貨を数えると全部で50枚あった


「金貨が50枚、それと盗賊の生け捕りで金貨14枚と銀貨100枚」


「8人だから金貨は1人中8枚ね」


「そうなるな」


「銀貨はどうする?」


「リーダーでいいんじゃない?」


「俺もリーダーでいいと思う」


 ランクAの冒険者のやりとりと黙って聞いているカイ。


「カイはそれでいいか?」


「構わない」


 聞いてきたイーグルに答えるカイ。


「じゃあ金貨は1人8枚で」


 と各自に金貨を渡す。クエスト代と合わせて金貨18枚の収入になった。


「こっちの戦利品はどうする?」


「あまり興味が湧く品物がないわね」


 ランクAから見れば魅力的でない武器や防具が並んでいる。カイにとってもそれは同じでシノビが使えそうな物はなかったので黙っていた。


「じゃあ、ギルドに渡しておくか」

 

 他の冒険者も同意して、戦利品の分配が終わった。


「これで終わりだ。皆お疲れ様。またの時はよろしく」


「「おつかれー」」


 カイはカーバンクルと共に会議室を出て下に降りて宿に戻っていく。部屋で刀を手入れしながら、


「あちこちの盗賊退治もしてみるか。ひょっとしたらってこともあるしな」


 刀の手入れを見ていたカーバンクルのクズハもそれがいいと言わんばかりに尻尾を振っている。


「クズハもそう思うか。ダンジョンや盗賊退治、まだまだいっぱいやる事があるな」


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