第12話 クエスト 盗賊退治


 そうして2日後の朝早くにカイがいつもの通りに肩にカーバンクルのクズハを乗せて城門に行くとすでに馬車は用意されていて、ギルマスとイーグルが来ていた。


「早速で悪いがこれを入れてくれるか」


 イーグルに頼まれたものをアイテムボックスに入れる。すぐに他の冒険者達も集まってきて各自の品物をアイテムボックスに入れたカイ。


「便利なものだ」


「手ぶらで行けるってのはいいわね」


「じゃあ、行くか」


「気をつけてな。よろしく頼む」


 そうして城門を出た一行は北にあるアイオナへと続く街道を進み出した。


 馬車に乗り込んでのんびり進む一行。街を出てしばらくは平原地帯で魔獣もほとんど出没しないので皆馬車の中でのんびりと過ごしている。馬車に乗ってしばらくして戦士のサイモンが、


「カイはアマミの出身だろう?」

 

頷くと、


「アマミのシノビは武術には卓越したものを持ってる者が多いが、魔法については術符と呼ばれる札を使ってやるって聞いてるんだが、カイはそうじゃないのか?」


「俺は厳密にはアマミ出身じゃないんだ。どうやら街の入り口に捨てられていたらしくてそれをアマミの人が自分の子供の様に育ててくれたんだ。髪と瞳が黒いからアマミの村の前で捨てられたのかと今は思ってる」


 アマミの人はほとんどが大陸でも珍しい黒髪と黒い瞳だ。

 皆黙ってカイとサイモンのやりとりを聞いている


「なるほど」とサイモン。


 カイは続けて、


「それで街にいる巫女さんが俺はアマミの人にはない魔力を持っているのを見つけてくれて、それ以来武術と魔術の両方を教えて貰ってその結果術符がなくても術を発動することができる様になったんだ」


「それで街を出て冒険者になったってことか。じゃあ冒険者になった目的は本当の親でも探すことかい?」


「いや、親はもう今のアマミの両親だと思ってる。俺が村を出たのは村に伝わる名刀を探すという目的からだよ」


「「名刀?」」


 黙って聞いていた他のメンバーが声を揃えて言う。


「ああ。昔からの言い伝えでこの大陸のどこかに最強の名刀が2本あると言われている。過去アマミ出身のシノビが何名かその使命を背負って冒険者になって挑んだんだけど残念ながら未だ見つかっていない。そのミッションを授かっている」


「名刀か…」


 話を聞いていたイーグルが、


「刀自体滅多に見ないレアな武器だからな。俺は今まで刀を宝箱からは見たことがないな」


「俺もだ」


「私も見たことないわね」


 口々に言うのを聞いて、


「今まで何人ものシノビが挑戦して見つかってないからそう簡単に見つけられるとは思ってないさ」


 なるほどと皆頷き、そして、


「見つかるといいな。何か情報を掴んだら教えてやるよ」


「俺も」「私も」


「よろしく頼む」


 カイが礼をすると肩に乗っていたカーバンクルのクズハも同じ様に頭を下げて、場の雰囲気が和んだ。


 初日の夜は街道脇にアイテムボックスからテントを2つ取り出し、交代で見張りしながら疲れを取り。2日目も同じ様に平原の中に伸びている街道を順調に進んで野営した。


「いよいよ森に入るな」


 3日目、出発してすぐにイーグルが声をかける


「盗賊の場所がわからないからマリー、森に入ったら探索を頼む」


「任せて」


「森には盗賊以外に魔獣もいるから、それは俺たちで倒していこう」


 馬車が森に入る前に全員馬車から降りて馬車を取り囲む様にして進んでいく。


 マリーだけは御者台に座り”鷹の目”のスキルで周囲を警戒していて、


「左前方にランクBのオークが3体。他には敵は見えないわ」


「分かった。ランクBなら俺とサイモンでいいだろう。他のメンバはそのまま前進で」


 イーグルの指示に基づいてサイモンとイーグル以外のメンバーは馬車を囲んだまま街道を進む。しばらくして2人が戻って来て、何もなかったかの様に馬車を囲む様にして歩きだす。そうしてしばらく進むと、


「止めて」


マリーの声で御者が馬車を止める。


「いるわ。この先の街道の両側で待ち伏せしている。数は15名。距離は約1km先」


 マリーの報告でイーグルが


「じゃあ作戦通りにカイ、斥候を頼む。攻撃せずに相手の状況を見てきてくれ」


「分かった」


 そう言うとカイは馬車から離れ、街道脇の森の中に入って消えていった。

その後ろ姿を見ながら、


「素早いな」


「あれがシノビか。あっという間に消えちまった」


 森の木々の間を音も立てずに進むカイ。アマミの修行で気配を消し音を立てずに森の中を走り回る訓練をさせられていたカイに取っては今の状況も厳しい状況ではなく、まるで草原を走る様にして進んで盗賊が待ち伏せしている場所に近づくと、


(あれか、左右に分かれていて、弓持ちは…左右に2名づつか。右は弓持ちの2人だけで残りのメンツは左側に配置してるな。あいつがボスだな。魔法使いはいなさそうだ。皆剣か短剣を持ってるな)


 気配を殺して盗賊の状況をチェックすると再び森の中を馬車のいる場所に戻ってきた。


「どうだった?」


 イーグルの問いに見てきた通りの状況を説明する。


「魔法使い系がいないのは助かるな。弓持ちの4名さえ倒せればあとは問題ないだろう」


「そうだな」


「サイモン、ダン、ジェンは森の左から進んで弓持ちから倒してくれ。2人はダンのサポートを頼む。カイは右側から弓持ちを頼む。サポートはいるか?」


「いや2人なら魔術でいける」


「じゃあ右はカイ1人で。残りは時間差でこのまま街道を進んで正面からぶつかるぞ」


 サイモン達が左の森に消えると、カイも右の森に入って待ち伏せしている盗賊の背後に忍び寄っていく。カーバンクルのクズハも色で目立たない様に草に隠れながらカイの足元を走ってついていく。


 そうして待ち伏せしている盗賊の背後に位置を取ってしばらくすると馬車の音が聞こえてきた。


 弓を構える盗賊、その時に向かい側で魔法が炸裂する音がし、すぐにカイもかなり威力を抑えた『風の舞』を唱えると弓を構えていた盗賊2人の首にかまいたちが起きて首筋に風を受けた2人が気絶してその場で倒れ込んだ。


「こっちは終わった」


 カイがそう叫ぶとイーグル他のメンバーが盗賊を退治すべく左の森の中に突っ込んでいくとカイも街道を渡って同じ様に左の森に突っ込んでいく。


 ランクAのメンバーからみれば盗賊は敵にもならない弱さであっという間に制圧に成功した。

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