第5話 冒険者ギルド
カイが向かうのはここアマミの街から北西の方向に徒歩で10日程あるいたキアナという街。この街はアマミを含む辺境領の領主が住んでいる辺境領最大の中心都市である。
カイはキアナで冒険者登録をし、それから探索を始める事にしていた。
アマミを出てキアナに続く道を歩くカイ。リンドウからもらい受けた装備を身につけている。頭巾はなく首から上は隠れてはいない。黒い髪、黒い瞳の凛々しい顔が見えている。そして左右の腰に村雨、金糸雀を刺し普通の人が軽く駆ける様なスピードで歩いていく。
そうして日が暮れたころ、道端にある林の中に入ると大きな木の根元辺りに腰を落とした。
アイテムボックスから食料、水を取り出して腹を満たすと木に凭れて眠ろうとしたその時に凭れているカイの前の地面に突然魔法陣が現れた。
直ちに刀を抜いて戦闘準備に入ったカイの前、魔法陣が消えるとそこには全身が澄んだ青色で額には紫の宝石、全体的にリスの様な身体をした生き物が佇んでいた。
「カーバンクル」
カイが声を出すと、カーバンクルはそれに応える様に尻尾を軽く振る。
「…白狼様の使い…なのか?」
何故だか本人にもわからないが、カイはカーバンクルを見た瞬間にこれはアマミの守り神である白狼様、フェンリルに関係がある神獣だと理解した。
再びそうだと言わんばかりに先ほどより大きく尻尾を振るカーバンクル。その動きを見ていると、カーバンクルはその場からジャンプしてカイの左の肩の上に飛び乗ってきた。
「俺の探索に付き合ってくれるってことか」
頬をカイに摺り寄せてくるカーバンクルの頭から背中を撫でながら、
「これは心強い味方が出来たな。宜しく頼むよ」
カイがそう言うとカーバンクルが肩の上でくるっと一回転すると、カイの周囲5メートルに渡って強力な結界が張り巡らされた。
「凄いな。これなら安心して眠れそうだ。ありがとな」
ぐっすりと眠った翌朝、目が覚めるとカイのお腹の上で横になっていたカーバンクルが俺の指定席とばかりにカイの左の肩の上に乗ってきた。
そうして荷物をアイテムボックスに収納して立ち上がり、進もうとした時に
「これから長い旅になる。いつもカーバンクルって呼ぶのもおかしいよな。名前をつけてもいいか?」
肯定の意味で激しく尻尾を振るのを見て、
「それで、どういう名前にするかな」
カイはしばらく考えてから
「父さんの名前からク、母さんの名前からズを取って、クズハ。クズハってのはどうだい?」
ぶんぶんと尻尾を振るので気に入ってくれているみたいだ。
「じゃあ、これからはクズハと呼ぶぞ、じゃあ行こう」
そうしてクズハを肩に乗せて再び街道をキアナに向かって進んで行く。
街を出て6日目、森の中を歩いていると魔物の気配がしてきた。クズハも肩から降りてカイの横を歩いている。
「クズハ、大丈夫か?」
カイが言うとクズハがその場で一回転したするとクズハとカイの全身に強化魔法が付与されたのを感じる。
「凄いな、クズハ」
褒めながら鞘から刀を抜いて二刀流で戦闘体勢になる。カイは村雨を順手で持ち、金糸雀は逆手に持っている。これがアマミ流二刀流の正式な刀の持ち方だ。
森の先からオークが2体こちらに向かって突っ込んできた。
強化魔法で身体能力が上がり、今まで以上に素早く動かす事ができるカイはあっさりとオークの突撃を交わしながら、すれ違いに刀を2閃するとオーク2体がそれぞれ綺麗に上半身と下半身を切られ、その場で倒れた。
魔石を取りだすと再び歩き出すカイ。戦闘が終わるとクズハはまたカイの肩の上にちょこんと乗ってくる。
そうしてアマミの村を出て10日後、最初の目的地のキアナの街が見えてきた。
街の入り口で手続きを済ませて街の中に入ると、城内は大勢の人でにぎやかで、道路の端にある沢山の屋台にはアマミで見た事がない様な料理が売られている。
(流石に辺境領最大の街だ。でかいな。アマミよりもずっと賑やかだ)
屋台を見ながら城門の衛兵に場所を聞いた冒険者ギルドを見つけるとその扉を開いて中に入っていった。
ギルドの中に入るとそこにいた冒険者達の視線が一斉にカイに向けられてくる。
「ほう。シノビか」
「アマミの出身者だな」
「肩に乗っかってるの、カーバンクルじゃない?」
アマミと近いこともあってこの街では忍の装束はそう珍しいものではないが、それでもギルドの中にある打ち合わせ兼酒場に座っていた冒険者達がカイを見て口々に話しをする。
シノビ自体は大陸でもその名前は皆が知ってる程に有名だが、実際にシノビをジョブとする冒険者は非常に少ない…というかアマミ出身者以外でシノビになる者、いやなれる者はいないので、ジョブの名前は有名だがシノビの冒険者についてはあまり目にする機会がない。
受付カウンターに近づくと、
「すまない。冒険者登録をお願いしたい」
「わかりました。ではここに名前をお願いします。ジョブはシノビでいいですね?」
登録用紙に名前を書きながら受付嬢の質問に頷くカイ。
書き終えた用紙を見ると、
「アマミのシノビの方は総じて能力の高い方が多いのですが、規則ですので一応これから冒険者適正試験を行います。時間は大丈夫ですか?」
大丈夫だと答えると、ギルドの受付嬢の後をついてギルドの裏手にある鍛錬場の一角に案内された。
「シノビだ」
「初めて見るわ」
「どれくらいの実力なのか、見させてもらうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます