第2話 旅立ち その2


 このアマミに古くから伝わる言い伝え。


 この大陸のどこかに地上最強の刀と言われる妖刀正宗と小太刀の鬼哭がある。

 ダンジョンの奥の宝箱なのか、あるいは最強の魔物が持っているのか、とにかくその正宗と小太刀の鬼哭を見つけ出し、アマミの裏にそびえる山の中腹にある祠に奉納するとアマミの街は未来永劫に渡って栄続けると代々言われ続けてきた。


 今までも何人ものこの村出身の刀の達人と言われた人が村から指名され、村を出て幻の刀を求めて大陸中を歩き回ったが、あるものは魔物にやられ、またあるものは目的のものを見つけることができず志半ばにしてこの村に引き返してきていた。


 養父と一緒に家にあがるとクルスの妻のユズが夕食を作って二人を待っていた。


「父さんがそう言ったのなら貴方は村のために刀を探し求める旅に出なさい。貴方はアマミの人にはない魔力を体内に持っている。刀と魔術の力で魔獣を倒し、正宗と鬼哭を探してきておくれ」


「わかった。父さん、母さん。村のみんなの為に必ず見つけ出して、そしてここに戻ってくるよ」


 カイは本当の親を知らない。

 この街の入り口に捨て子として置かれていたのをクルス夫妻が自分の養子として育てるとアマミの人に言ったのだと。


 カイにとってはクルスとユズは今では実の父親、母親と思っている。


 クルス夫妻に育てられたカイは5歳の時に村の巫女であるキクから、


「この子はこの村の者にはない膨大な魔力を持っている。刀と魔術を徹底的に教え込むのがよかろう」


 キクからそう言われたのをきっかけに村一番の武人でもあり、父でもあったクルスが刀と魔術、そしてシノビとしての心得をカイに教え込んでいった。そして母親のユズはカイにはこの世界で生きていく知識、常識ついて教えていった。二人以外にも村人から大陸に住んでいる魔獣の種類やその攻撃、弱点などを詳しく聞き、時間があると村にある図書館で魔獣について徹底的に覚え、頭に叩き込んでいった。


 カイはクルスの厳しい訓練を通じ刀はもちろん、魔術についても無詠唱で術を発せられる訓練をひたすら続けていった。


 魔術については、このアマミの街の人々は皆術符と呼ばれる札を利用して魔術を唱えているが、カイは体内の魔力を利用し、厳しい訓練を通じて術符がなくても術符を使っている者以上に強力な術を発することができる様になっていた。


 カイが15歳になった頃には既に次の刀の探索者は村一番のシノビであるカイになるのであろうということはアマミの人々の中で既成事実化していたのだ。そして半年程前、村の長老たちから次の使命を担う者はカイになったと正式にお達しがあった。父親のクルスはそのお達しを受け、それから半年間更にカイを鍛えてきた。その父親から旅立ちの許可が出たのだ。


「旅立ちの前に明日はまず巫女のキクさんのところに報告に行きなさい、それから山の祠にお参りすると良いだろう」


「わかりました」

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