第7話 魔法のない世界へ
「もちろん。本くらいいつでも貸してあげるよ。さてみんなこれから行くところの説明を事前にするからよくお聞き!」
「質問!引っ越しの荷物はどうしたらいいの?」
「質問は最後!コウモリ便が届けてやるよ。今から行くのはアパートだ、ここほど広くはないけどもあたしの魔法で広く快適に感じるようにしてやるさ。ちょっとばかし魔法の力がパワーアップしてね。師匠の置き手紙さね。ま、それでだ食糧も心配いらない。一番心配なのはうじゃうじゃしている人間との付き合い」
「わかってるよ!」
小鬼たちが時々ちゃちゃやらうるさくする。テキトーにあしらいながら魔女は話を続ける。
「たいていのやつらはいくら騒いでも見えないし聞こえない。呪ったり襲ったりなんてしたらそりゃ影響はある。中には見えたり話したり触れたりする」
「遊んでくれる?」
「無理だな、やつらは忙しい。それにお前ら、遊んだ相手を変なところへ連れ込むだろうが」
「触れたりできる…そういう人間がいたときはどうするんです?」
吸血鬼も質問する。魔女は両手を高くかかげて高らかに言った。
「人間のフリをしろ」
「「「ふざけんな!」」」
吸血鬼以外のモンスターからも苦情やヤジが飛ぶ。あんまりうるさいやつは魔法で黙らせる魔女。
「はいはい、話は終わってないよ。それが一番楽だってだけだ。向こうも鋭いやつもいれば鈍感なやつもいる。化け物を殺して楽しむやつらもいるんだ」
「んなもんぶっ殺してやるよ」
仮面で顔の全部は見えない、口の大きなモンスターが吠えた。服はボロボロで何かの汚れで黒ずんでいる。
「できるだろうさ、できたからなんだっていうんだい?人間の人口がどれだけ減ろうが構わないが。ちょっと人間のフリするだけで以外とやつら、気づかないんだ」
「むやみに殺すなってことだろう」
「いや。殺してもいいようなところにあんたは飛ばしてやるよ。さすがに存在意義がなくなるだろう」
「いいや、うん、待ってくれ。しばらくして発作が起きないなら、おとなしくしてみるよ」
「おや?そうかい?」
魔女はそれぞれの引越し先を伝えていく。だいたいアパートの一室でアパート丸々モンスターになるところもあった。寒いのが好きなモンスターは寒い地方へ。雨を好むものは雨季の長いところへ。それはそれは考えられていた。
「吸血鬼はあんたギリギリに返事出したからね、あたしのアパートの近くだけどいいかい?」
「別にいいですよ」
「このカフェのマスター住み込みでアルバイト探しててね」
「は!?人間と労働なんかしませんよ!?」
「あんたらホント最後まで話を聞かないね。夜には化け物だらけで大変だそうだ。コーヒー出したりなんてあんたにはさせない。試しに行ってみておくれ。ダメなら教えてね、また他のところ考えてみるよ」
「むう」
吸血鬼は返事したことをもう後悔し始めていた。
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