第4話 魔法だらけの世界
信じなくてもいい
魔女はそういって、知っていて欲しかったと。僕は魔女がこの話をする理由を探していた。
「あなたはその本を見たんですか」
「本は読むものだ」
「また、そういう…実在するんですか?」
「ああ、読むかい?あんたの話の方が長いんだよ」
「魔女が主人公なのでは?」
「そうだよ、だけど私はモブ。魔女の弟子、ちらっとなにかを手伝ってたり、その後は弟子が引き継いだのだったくらいの描写だよ」
「ぼ、僕はどれくらい?」
「全六巻の一巻分はあんたの話さ、冴えないタイトルの異世界ファンタジーだよ」
そういうとハードカバーの本を手のなかから六冊出して、そのうちの1冊が僕の前に。タイトルはもしも魔法が使えたのならと書いてあった。
「これ、読んだら死んじゃいませんか。太陽とか十字架よりよっぽど怖いんですが」
「アッハッハ、そりゃいいねそういうまじないかけてあげようか」
心底楽しそうに笑う魔女、美人なその姿に惚れた男の話を思い出す。
「彼らは死んだんでしょう?この死なない体と世界にいたのに」
「満足したんだと、最期に師は言っていた。私もいて愛する者が増えて、幸せで。でもここに長く彼がいると、人でなくなってしまうそうで。死んだというより、」
そこで魔女は下を指差した。僕らの足と絨毯、黒猫がいつの間にかいた。
「あんたじゃないよ、そこおどき」
にゃあん、鳴きながら端に飛ばされる。魔女の指は戻ってきて床を指す。絨毯は関係ない、下にあるのは人間の世界。
「まさか、人間になったのか?」
「ふふふ、人間に化けて隠して、だよ。そしてこないだ寿命で彼が死んで、師もあとを追った。自殺だね。ここに挨拶も来なかったから、まっすぐ上に」
未練がないととどまれないみたいだね。
少し寂しそうな声色だった。
カラスやロケットや迷い込む人間が後を立たない。だからまあ退屈しない。なんなら死んだ人間も時々未練がましく下の世界を覗き込んでいることも多い。
いつのまにか上にいったり下におりたりして、人魂たちは、少ないときもあれば多いときもある。夢の入り口からさ迷う人が多いのも、しかたない。
ここには不思議な力がある。主の作った魔法がかかってる。主は魔女ではない、女でもなく少女でもない人間の男だ。その男が死んだのに、この世界はまだこのままなのか。
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